本稿の目的:電力の卸市場であるJEPX(日本卸電力取引所)のスポット価格がどれだけ上がっているかを公表データで確かめ、上昇の要因と、法人の電気料金にどの経路で届くかを整理します。
結論:2026年10月1〜26日の東京エリアの平均価格は26.21円/kWhで、前年同期間(13.05円/kWh)の約2.0倍です。電力・ガス取引監視等委員会の事務局資料は、同資料が分析した2026年4〜6月の上昇について、燃料価格の高騰、大規模事業者間の長期契約の終了、連系線の運用容量の抑制、発電設備の定期点検や故障などによる供給力の制約を要因に挙げています。10月にも同じ要因がどの程度影響したかは確認できていません。
見落としがちなリスク:市場連動型のプランでなくても、市場価格を毎月の料金に反映する項目を含む契約があります。例えば東京電力エナジーパートナーの高圧ベーシックプランでは、2026年10月分(計量期間の始期が毎月1日ではない場合)の市場価格調整単価が、平日の昼時間で6.20円/kWhと公表されています。
JEPXは電気を売買する取引所です。その中心となるスポット市場では、翌日に受け渡す電気を、1日を30分単位に区切った48の商品として取引しています。ここでついた価格は、契約の種類によっては、市場価格をもとに算定された調整単価などを通じて、需要家の電気料金にも反映されます。
「最近JEPXの価格が上がっているのでは」という問いへの答えは、データで見ると「上がっています」です。2026年10月1〜26日の東京エリアの平均価格は26.21円/kWhで、前年の同じ期間の約2.0倍になっています。
本稿では、JEPXが公表している約定結果のデータを弊社で集計した結果と、電力・ガス取引監視等委員会や東京電力エナジーパートナーの公表資料をもとに、「どれだけ上がっているか」「なぜ上がっているか」「電気料金にどう届くか」「何を確認し、どう備えるか」の順に整理します。
JEPXの公表データには、システムプライスと地域ごとのエリアプライスがあります。東京電力エナジーパートナーの市場価格調整では、需要場所がある地域のエリアプライスが参照されます。
JEPXが公表する30分ごとの約定価格を弊社で集計し、2026年10月1〜26日の平均を前年の同じ期間と比べると、次のとおりです。
| 区分 | 2025年10月1〜26日 | 2026年10月1〜26日 |
|---|---|---|
| システムプライス | 11.73円/kWh | 21.92円/kWh |
| 東京エリア | 13.05円/kWh | 26.21円/kWh |
| 中部エリア | 11.73円/kWh | 24.86円/kWh |
| 関西エリア | 11.46円/kWh | 18.69円/kWh |
| 九州エリア | 11.01円/kWh | 14.82円/kWh |
※JEPX「スポット市場 取引結果」(spot_summary_2025・2026、2026年10月26日受渡分まで)の30分値を単純平均した値です。
上がり方は地域によって差があり、東京・中部エリアの上昇が目立ちます。東京エリアの月平均は2026年3月の14.38円/kWhから4月に20.06円/kWhへ上がり、9月は23.78円/kWhでした。東京エリアで30円/kWh以上の値がついた30分コマは、2025年10月1〜26日の12コマに対し、2026年の同じ期間は318コマです。
2026年10月1〜26日の東京エリア平均26.21円/kWhは、集計期間は異なるものの、2022年10月の月平均25.85円/kWhに近い水準です。昼間の時間帯も例外ではなく、東京エリアの9時から15時までの平均は、2025年9月の12.46円/kWhに対し、2026年9月は24.33円/kWhでした。
電力・ガス取引監視等委員会は、2026年6月19日の第21回制度設計・監視専門会合に事務局資料「スポット市場価格高騰について」を提出しました。資料は、4月以降の価格高騰の要因として次の点を挙げています。
少なくとも資料が分析した4〜6月については、東京向け連系線の運用容量が抑制され、東京エリアの供給力も前年より減少していたことが示されています。これらは、東京エリアの価格がシステムプライスを上回った背景の一つと考えられます。10月にも同じ要因がどの程度影響したかは、本稿執筆時点では確認できていません。
同じ資料は、監視等委員会事務局が各社の燃料調達状況を確認するなど監視を強めてきたとしたうえで、「現時点で、市場参加者による市場相場を変動させることを目的とした不適切な取引は確認されていない」と記載しています。
この分析は2026年4〜6月の動きを対象にしたものです。10月の価格上昇の要因を個別に分析した公表資料は、本稿の執筆時点では確認できていません。燃料の動きでは、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の週次レポートで、北東アジアのスポットLNG価格であるJKMが10月16日(12月受渡)に29ドル後半まで上がったと報告されています。
JEPXの価格が上がったときに電気料金がどれだけ動くかは、契約の種類で変わります。東京電力エナジーパートナーが公表している特別高圧・高圧向けの料金制度では、燃料費調整と市場価格調整の組み合わせが異なる複数のプランが示されています。
| プラン | 料金に含まれる調整 | JEPX価格の影響 |
|---|---|---|
| ベーシックプラン | 燃料費調整+市場価格調整 | 時間帯別の月平均市場価格が基準より高ければ加算、低ければ減算 |
| 市場価格連動プラン | 市場価格調整 | 市場価格の変動を単価に反映 |
| 市場調整ゼロプラン | 燃料費調整 | 市場価格調整の項目はない |
市場価格調整は、JEPXの1か月間のスポット価格(需要場所の地域のエリアプライス)から朝・昼・晩・夜の4つの時間帯別に平均を出し、2025年4〜6月の価格をもとにした基準市場価格との差に応じて単価を決める仕組みです。調整額は、この単価に使用電力量をかけて計算します。
2026年10月分の電気料金(計量期間の始期が毎月1日ではない場合)には、2026年9月の市場価格が使われています。関東エリアの数値は次のとおりです。
| 時間帯(平日) | 9月の平均市場価格 | 高圧ベーシックプランの市場価格調整単価 |
|---|---|---|
| 朝(8〜13時) | 24.94円/kWh | 5.30円/kWh |
| 昼(13〜16時) | 27.21円/kWh | 6.20円/kWh |
| 晩(16〜22時) | 27.30円/kWh | 6.23円/kWh |
| 夜(上記以外・日曜祝日等) | 21.63円/kWh | 3.98円/kWh |
※東京電力エナジーパートナー「燃料費調整等のお知らせ(2026年10月分)」より(税込)。朝・昼・晩は平日(土曜日を含む)の時間帯です。
例えば、昼時間の使用量が月5万kWhの工場なら、昼時間だけで6.20円×5万kWh=31万円の市場価格調整額がかかる計算です。市場連動型のプランを選んでいなくても、契約によっては、市場価格の変動が月ごとの市場価格調整を通じて請求額に反映されます。10月の市場価格にもとづく単価は、東京電力エナジーパートナーが2026年11月2日に公表する予定です。
東京電力エナジーパートナーの市場調整ゼロプランなど、燃料費調整を含む契約では、市場価格調整がなくても燃料価格の影響を受けます。同社の燃料費調整は、原油・LNG・石炭の1か月間の輸入価格(貿易統計価格)をもとに毎月計算されるため、燃料価格の上昇は燃料費調整額を通じて料金に届きます。電気料金の内訳ごとの決まり方は、次の記事で解説しています。
【法人向け】電気代の内訳とは?基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金の決まり方と抑え方
市場価格の上昇が自社の電気料金にどれだけ響くかは、請求書と契約書を見ると確かめられます。
弊社でも、電気料金の値上げを受けて、値上げ後の単価が載った最新の明細をもとに太陽光の効果を試算し直したいというご相談をいただいています。市場価格や燃料費の調整単価は毎月変わるため、試算は直近の明細をもとに行うことをおすすめします。
電気料金の急な上昇に直面した企業の事例として、関東圏でリサイクルショップを運営する株式会社トレーダー様は、2021年から2022年にかけての状況を次のように振り返っています。
デマンド監視装置で使用量を抑えてきたにもかかわらず、2021年9月頃から電気料金が上がり始めたといいます。
「毎月の電気料金が、一店舗あたり200万円ほどだったのが、ピーク時には260〜270万円ほどに高騰してしまいました。」
—— 株式会社トレーダー様 店舗システム管理 江守様(導入事例記事より)
同社は、2022年5月に開店した店舗で新規の電気契約を結べなかった経験も経て、2023年8月にその店舗の屋根へ自家消費型太陽光発電を導入しました。使用量を減らす取り組みを続けたうえで、電気を自社でつくる段階に進んだ経緯は、事例記事で詳しく紹介しています。
【導入事例】株式会社トレーダー様|ウクライナ情勢を起因に電気料金が大幅に高騰。打撃を受ける中、自家消費型太陽光発電を導入するに至った背景とは?
市場価格調整額も燃料費調整額も、単価に使用電力量をかけて計算します。毎月の市場価格調整単価や燃料費調整単価を需要家が直接コントロールすることはできませんが、電力会社から買う電力量は、省エネや自家消費によって減らせます。
恒電社では、外から環境価値を買う前に、まず使う電気と購入する電気を減らす、という順序で脱炭素とエネルギーコストの対策を考えています。
自家消費型太陽光発電は、昼間に工場や倉庫の屋根で発電した電気をその場で使い、その分だけ電力会社から買う電力量を減らす仕組みです。2026年は東京エリアの昼間の市場価格も前年より高く、9時から15時までの平均は9月に前年の約2倍でした。市場価格調整を含む契約で調整単価がプラスの月は、実際に昼間の購入電力量を減らせた分について、市場価格調整額の抑制にもつながります。
ただし、削減できる金額は、発電量と昼間の使用量の重なり方、契約の種類、毎月の調整単価によって変わります。休日に使用量が少ない施設では、発電した電気を使いきれない時間も出ます。自家消費型の仕組みと導入方法の違いは、次の記事で整理しています。
自家消費型太陽光発電とは?仕組み・メリットと注意点、3つの導入方法を埼玉の工場事例で解説
導入した場合に電気代がどれくらい減るかの考え方は、FAQにまとめています。
自家消費型太陽光発電を導入した場合、実際にどれくらい電気代を削減できるのか?
電気代が上がり続ける背景を、エネルギー自給率や燃料価格、電力需要の増加から整理したセミナーの見逃し配信もご用意しています。市場価格の動きを中長期の流れの中で捉えたい方は、こちらもご覧ください。
電気代はなぜ上がり続けるのか|自給率16.4%・燃料高・需要増の三重苦(セミナー見逃し配信)
A. 電力・ガス取引監視等委員会の2026年6月19日の事務局資料は、事務局が各社の燃料調達状況を確認するなど監視を強めてきたとしたうえで、現時点で市場相場を変動させることを目的とした不適切な取引は確認されていないと記載しています。同委員会は「スポット価格高騰への対応」として、旧一般電気事業者とJERAの入札に関するデータシートを受渡日ごとにウェブサイトで公表しています。
A. 契約によります。東京電力エナジーパートナーの高圧ベーシックプランのように、市場価格調整の項目を含む料金があります。東京電力エナジーパートナーの市場調整ゼロプランのように、燃料費調整を含む契約では、市場価格調整がなくても、燃料価格の変動が料金に反映されます。請求明細の項目と契約約款で確認してください。
A. JEPXのウェブサイトで、スポット市場の約定結果を受渡日ごと・30分ごとに確認でき、データもダウンロードできます。料金への反映方法や調整単価は、契約している電力会社の公表資料、請求明細、契約書・約款で確認します。東京電力エナジーパートナーでは、同社が毎月公表する調整単価で確認できます。
恒電社は、自家消費型太陽光発電の設計・調達・施工を手がけています。お客様が設備を所有する購入型のEPCに加え、PPA事業者から受託するオンサイトPPA案件のEPCにも対応しています。
「市場価格が上がった今の単価で、屋根の太陽光がどれだけ買電を減らせるか」を確かめたい場合は、直近の電気料金明細と月ごとの使用量をお手元にご相談ください。昼間の使用量と屋根の面積から、自家消費でまかなえる電力量を整理してお伝えします。