【導入事例】株式会社右川ゴム製造所様が自家消費型太陽光発電を導入|日本で3番目に古いゴムメーカーが128年目に踏み出した、次の100年への一手

目次
要約
株式会社右川ゴム製造所について:
株式会社右川ゴム製造所は、明治30年(1897年)に東京・墨田で創業した、日本で3番目に古い歴史を持つゴム製品メーカーです。自動車、鉄道、住宅設備、土木、半導体など幅広い産業分野に向けた工業用ゴム部品を製造しており、押出成形技術を軸にした独自の配合設計力を強みとしています。2020年には福島県南相馬市に福島工場を開設し、東日本大震災からの復興支援と事業拡大の両立を図っています。現在は本社工場(埼玉県八潮市)と福島工場の2拠点体制で、社長以下総勢47名が在籍しています。
自家消費型太陽光発電を導入した理由:
導入のきっかけは、福島県会津地方の製造業企業を訪問した際に、太陽光発電と蓄電池を活用した自家発電の取り組みを目にしたこと。福島工場が東日本大震災の被災地に立地していることから、災害時の電力確保という観点でも自家発電への関心が高まっていました。加えて、シミュレーションの結果、年間消費電力の約10%を賄える見込みが立ち、補助金を活用すれば7〜8年で投資回収が可能という試算が得られたこと、さらにDX・GXへの取り組みとして取引先へのPRポイントにもなるという判断から、導入を決断しました。
今後の展望:
同社は5年以内に売上高を10億円へ引き上げる計画を掲げています。産業分野の多角化をさらに進めるとともに、自社ブランド製品の開発にも注力。人材面では、年間休日120日への拡充や企業型DC(確定拠出年金)制度の導入など、選ばれる企業づくりに取り組んでいます。太陽光発電の導入を含め、環境に配慮したものづくりと、働く仲間が幸せになる会社づくりの両立を目指し、次の100年に向けた基盤整備を着実に進めています。
製造・販売業(ゴム製品)|株式会社右川ゴム製造所様
埼玉県八潮市に本社を構え、明治30年(1897年)の創業から128年の歴史を持つ株式会社右川ゴム製造所様は、自動車、鉄道、住宅設備、土木、半導体など幅広い産業分野に向けた工業用ゴム部品を製造するメーカーです。
「ゴムというのは、いろんな産業の中の“下着”のようなもの。表には出ないけれど、必ず裏側で必要になるんです。」そう語るのは、代表取締役 右川誠治様。
ゴムまりの製造から事業をスタートした同社は、戦前・戦後の混乱を乗り越え、高度成長期には自動車産業とともに発展。リーマン・ショックを機に事業構造の転換を図り、自動車依存度を7割から3割にまで引き下げ、事業ポートフォリオの多角化を実現しました。
2020年には、東日本大震災からの復興支援を一つのテーマとして、福島県南相馬市に福島工場を開設。ゴムの押出成形技術と独自の配合設計力を武器に、常に時代が求める産業分野へと自らを変革させてきた同社が、今回、本社工場の屋根に自家消費型太陽光発電設備を導入しました。
自家消費型太陽光発電設備の導入に至った背景、またEPC業者を選定する上で考えたこと。そして、今後企業としてどのような方針で経営していくのかなど、未来についてのお話もお伺いしました。
明治30年創業。日本のゴム産業とともに歩んだ128年

━━━まず、御社の事業内容について教えてください。
一言で言うと「ゴム製品製造業」という事業になります。さまざまな産業分野向けの部品を製造・販売している会社です。
例えば、自動車産業向けの部品をはじめ、鉄道、住宅設備、建機、建材——ビルやマンションに使われる部品ですね。さらには土木関係で、橋やトンネルといった公共工事に関わるような部品も提供しています。幅広い産業分野にゴム製品をお届けしている会社です。
創業は明治30年で、その時代から残っている会社というのは、おそらく今3社ほどしかないのではないかと思います。日本で3番目に古いゴム会社ということになりますね。
━━━お客様としてはどのような企業が多いのでしょうか?
自動車のサプライチェーンの中のサプライヤーさんであったり、鉄道ですと車両を製造されている会社さんとお付き合いをしていたりですね。
あまり表に出る部分で使われることは少ないのですが、見えないところ——裏側で使われているケースがほとんどです。例えば、ビルやマンションのコンクリート目地材であるとか、窓枠のゴムであるとか。なかなか表には出づらい部分ではありますが、そうした“見えないところ”でゴムが活躍しています。
「時代とともに変わる産業に、いかに対応していけるか。」
━━━128年という長い歴史の中で、業界としてはどのような変遷があったのでしょうか?
この100年以上の歴史の中では、お客様となる産業分野は、常に移り変わってきました。
130年前には、まだ自動車産業すら存在していませんでした。では、当時は何があったかというと、例えば長靴や氷嚢、あるいは軍需品としての防振材などです。タイヤのチューブもございましたし、多岐にわたります。
その後、日本のゴム産業が大きく伸びたのは、やはり高度成長期に自動車産業とともに発展した時期でしょう。ただ、現在はだいぶお客様の構成が変わってきています。自動車で使われることは依然として多いのですが、例えば半導体のような先端産業においても、パッキンというのは非常に重要な役割を果たしています。
金属と金属を合わせると、どうしても隙間が生まれます。その間にゴムが入ることでぴたっと密閉できる。気密性、止水性、遮音性——何かを”遮断する”場面において、ゴムの力が求められるケースは非常に多いのです。
わかりやすいところでいえば、電車のドアのパッキンや、自動車の窓枠に使われるウェザーストリップですね。ゴムがなければ風切り音が気になりますし、雨水も入ってきてしまう。
━━━「128年生き残る術は何ですか」と聞かれることもあるのではないでしょうか?
ええ、たまにご質問をいただきますね。そのときにお答えしているのは、「トレンドとなる産業分野の変化に、いかに対応していけるか」。ここに尽きるのではないかと思っています。
少し極端な例を挙げますと、かつて携帯電話のシリコンゴム製の押しボタンを製造していた会社がありました。しかし、スマートフォンのタッチスクリーンが主流になった途端、その製品はもう必要とされなくなる。実際に、かなりの規模の会社が倒産したケースもあります。
私どもで申し上げますと、以前はOA機器のローラー部品を手がけていた時期がありました。コピー機やFAXの内部で紙を搬送するためのゴムローラーですね。しかし、ペーパーレス化の流れとともに、その需要は徐々に縮小していきました。
ただ、私どもはゴムの素材そのものを追求し、機能性の高い製品を生み出すという“軸”を持ちながら、納入先の産業分野が変わっても、次にゴムが求められる場所を常に考え続ける。これがひとつ、長く続けてこられた理由ではないかと思っております。

リーマン・ショックが転換点。自動車依存度を7割から3割へ
━━━産業の変化に適応してこられた要因は、どのあたりにあるのでしょうか?
最も強く危機感を覚えたのは、リーマン・ショックのときですね。あのとき、これではいけないと痛感しまして、産業構造の変革に本気で取り組まなければならないと感じました。
高度成長期から昭和50年代にかけては、自動車の仕事を受けていれば成長できた時代でした。言われた通りにこなしていけば、それで事業が成り立っていたわけです。
しかし、バブルの崩壊を経て、リーマン・ショックが起きた。「いつまでも自動車産業のサプライチェーンにぶら下がっているわけにはいかない」と。もともと7割ほどあった自動車への依存度を、現在は3割程度にまで引き下げました。
OA機器向けの比率を高め、その後は住宅設備のパッキンをはじめ、さまざまな分野に進出し、今では幅広い産業分野にアプローチしつつ、自社製品の開発も模索しているところです。
一方で、自動車の部品のみを手がけてこられた同規模の会社さんの中には、廃業や倒産に至るケースも出てきています。やはり、自分たちの頭で考えて、新しい価値を生み出していく力を育てていかなければ、環境の変化には対応しきれない。そのことを、身をもって感じております。

押出成形——日本に50社もない、ニッチな専門技術
━━━御社の製造技術の特徴についても教えていただけますか?
当社は「押出製品」と呼ばれるカテゴリーでして、ゴムの成形方法としては少しニッチな領域になります。
一般的にイメージされるのは、たい焼きのように金型の上下を合わせて製品を成形する「圧縮成型」という方法かと思います。この方法を採用している会社は、おそらく日本に2万社ほどあるのではないでしょうか。
一方で、当社のように押出して紐状の製品を製造する会社というのは、日本全体でも50社に満たないのではないかと思います。
この技術で何を作っているかというと、長尺のパッキンです。トンネルの止水パッキンであるとか、さまざまなシール材であるとか。その中で材質を工夫し、形状を工夫し、素材の機能性を追求することに注力しています。
例えば、当社が独自に開発した高復元性ゴムスポンジ「スーパーセットフォーム(SSF)」という製品があります。一般的なスポンジゴムは、長期間圧縮されると”ヘタって”しまい、元の形に戻らなくなるのですが、この製品は復元性が極めて高く、長期にわたって気密性や止水性を保つことができます。
現在では、住宅設備——お風呂のパッキンやキッチン周り、水回りのパッキンなどに採用が広がっておりまして、こうした機能性素材をセットメーカーさんに直接ご提案する形でアプローチを進めています。


2020年、福島・南相馬に工場を開設。復興支援と採用への挑戦
━━━2020年に福島工場を開設された経緯についてもお聞かせください。
2005〜2006年頃から第2工場の候補地を探しておりまして、一時は中国や東南アジアなど海外への進出を検討した時期もございました。しかし、最終的にさまざまな検討を重ねた結果、東日本大震災からひと区切りがついた南相馬の地で工場を立ち上げようということになりました。
南相馬市は原発事故の被害を受けた地域で、避難された方が戻ってきても、当時の人口の半分ほどにとどまっていました。そのような状況の中で、“復興支援”も一つのテーマとして、あの場所に工場を構える決断をしたのです。
ただ、人口が少ない分、人材の確保には非常に苦労いたしました。どうすれば人が集まってくれるかを考えたときに、明るいピンクの外観にオレンジの帽子——とにかく明るい雰囲気の中で仕事ができる環境を目指しました。
その結果として、福島工場は女性の比率が非常に高く、若い社員が多いという特徴が生まれました。福島県が制作してくださったYouTube動画もございまして、地元の高校から入社してくれた社員が出演してくれたのですが、それが思いのほか大きな反響をいただきましたね。


自家消費型太陽光発電システムの導入を検討したきっかけ、理由
━━━大変貴重なお話ありがとうございます。そのような中で、今回自家消費型太陽光発電システムを導入された背景について教えてください。
福島県の会津にマツモトプレシジョンさんという会社がありまして、そちらの工場を見学させていただいた際に、さまざまな取り組みに熱心に取り組まれていらして、感銘を受けました。その中の一つが太陽光発電の“見える化”だったのです。
自社の建屋に太陽光パネルを設置し、日産自動車さんとタイアップしてEV(電気自動車)を2台導入し、自家発電の余剰電力を蓄電してそれで走らせている。「これは面白い取り組みだな」と、率直に感じました。
もう一つの背景としては、私どもの福島工場が震災を経験した地域にあるということです。万が一の災害に備えて、自家発電や電力の備蓄ができる体制を持っておきたいという思いがありました。
加えて、コスト面の検討もいたしました。金融機関からのご紹介でシミュレーションを行っていただいた結果、通常ですと11〜12年で投資回収が可能であり、補助金を活用すれば7〜8年に短縮されるということが分かりました。
この屋根にパネルを何枚設置できて、どの程度の発電量が見込めるか——その試算の結果、年間消費電力の約10%を賄えるという数字が出ましたので、それであればぜひやってみようと。DXやGXを意識した経営姿勢を打ち出していくことが、お客様に対するPRポイントにもなっていくだろうということも含めまして、導入を決断いたしました。

━━━お取引先から、環境対応を求められるケースは増えてきているのでしょうか?
正直なところ、私自身もそこが気になっておりまして、社内の営業担当にも「工場監査の際にそういう話題は出るのか」と確認しているのですが、現時点ではまだそこまで強く求められているという状況にはありません。
当社は今、付加価値の高いパッキンをさまざまな大手メーカーさんにご提案しておりまして、新規取引に向けた工場監査もかなりの件数お受けしております。その中では、パッキンの性能に関する評価に重点が置かれていて、環境対応についてはまだ直接的な要件にはなっていないというのが実情です。
ただ、今後さまざまなお客様から求められるようになるだろうという予感はあります。ですから、先進的な取り組みとして、今のうちから準備を進めておこうという考えです。

恒電社を選んでいただいた理由
━━━今回、弊社にご用命いただいた経緯についてもお聞かせいただけますでしょうか。
以前にも太陽光発電の導入を検討したことはあったのですが、当時はまだ知識も十分ではなく、具体的な話には至りませんでした。
今回は、金融機関の方からのご紹介がきっかけです。恒電社さんの営業担当の板橋さんが、非常に熱心に、そして分かりやすく丁寧にご説明くださいましたので、内容を理解しやすかったですね。
工事に関しましても、現場責任者の大金さんがきちんと対応してくださいまして、安心してお任せすることができました。
━━━導入後のご実感はいかがでしょうか?
発電が始まってまだ1ヶ月余りですので、まだこれからかなという段階です。
シミュレーションでは年間消費電力の約10%を賄えるということでしたので、この夏の日差しが強い時期に、実際どの程度の発電量になるのか——そこは楽しみにしております。
もう一つ期待しているのが、遮熱効果です。ゴム製造業の工場には、加硫工程で使用する熱源が内部にございますので、夏場は相当な高温になります。太陽光パネルが屋根に載ることで、建物の天井に伝わる熱がある程度抑えられるのではないかと。明確に数値で測定できるかどうかは分かりませんが、体感として効果が出てくれればありがたいですね。

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今後の展望——5年以内に売上10億円へ。次の100年を見据えて
━━━最後に、今後の展望についてもお聞かせください。
まずは、5年以内に売上高10億円の規模に持っていきたいという計画で進めております。
そのための柱は大きく二つです。一つは、先ほど申し上げたような産業分野の広がりです。新しい部品や新しい分野を開拓していくこと。もう一つは、自社ブランド製品を立ち上げていくことです。当社の配合技術や押出成形のノウハウを活かして、自分たちで企画・開発した製品を世に出していきたいと考えています。
一方で、売上を伸ばしていく過程ではどうしても人員の確保が課題になります。特にゴムの設備を扱える技術者は、業界全体として減少傾向にありますし、日本のゴム用機械メーカーさん自体が少なくなってきている。技術の継承という観点でも、危機感を持っております。
ですから、採用面での工夫は積極的に行っています。福島工場の明るい工場づくりや女性活躍推進もそうですし、年間休日を120日に拡充いたしました。企業型DC(確定拠出年金)制度の導入なども含めて、企業としての魅力を高め、選んでいただける会社にならなければならないと考えています。
当社の経営理念は、「お客様の満足を追求し、社会に役立つ価値づくりを通じて働く仲間が幸せになる会社をつくる。」というものです。
今回の太陽光発電の導入も、環境に配慮したものづくりの一環であり、次の100年に向けた一歩だと捉えております。ゴムという素材を通じて社会に必要とされる価値を創り出しながら、働く仲間が幸せになれる会社を、着実に築いてまいりたいと思います。
━━━本日は大変貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
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