A. 発電した電気を電力会社に売って収入を得るのが売電型、自社で使って購入する電気を減らすのが自家消費型です。2026年度のFIT単価と2026年3月時点の高圧平均単価で比べると、高圧で受電して完全自家消費できた電力は1kWhあたり約9円ぶん有利になります。
判断の要点
- 売電型(全量売電)の収入は「発電量 × FIT(固定価格買取制度)の単価」、自家消費型(完全自家消費)の効果は「購入時の電気料金単価 × 自家消費量」で計算する
- 2026年度のFIT単価は、50kW以上(入札対象外)区分が9.6円/kWh、10kW以上50kW未満区分が9.9円/kWh
- 高圧の電気料金平均単価は2026年3月時点で18.92円/kWh。FIT単価との開きは約9円/kWhある
- 出力制御の拡大、FIT期間満了後の買取単価低下、2027年度以降の事業用(地上設置)の新規支援終了と、売電側の不確実性・制約は増す方向にある
売電型と自家消費型の違い|収入になるか、買う電気が減るか
売電型(全量売電)は、発電した電気をすべて電力会社へ売る仕組みで、「発電量 × FIT(固定価格買取制度)の単価」が発電事業者にとっての収入になります。一方、自家消費型(完全自家消費)は、発電した電気をすべて自社(自宅)で使い、「購入時の電気料金単価 × 自家消費量」の計算式で、どのくらい電気を買わなくて済んだのかを金額に換算します。
| 比べる観点 | 売電型(全量売電) | 自家消費型(完全自家消費) |
|---|---|---|
| 電気の行き先 | すべて電力会社へ販売 | すべて自社(自宅)で使用 |
| 計算式 | 発電量 × FITの単価 | 購入時の電気料金単価 × 自家消費量 |
| 効果の表れ方 | 売電収入が入る | 電力会社から買う電力量が減る |
同じ発電量でも、「いくらで売れるか」を基準にするか「いくらぶんの電気を買わずに済むか」を基準にするかで、金額の出方が変わることが読み取れます。なお本稿では比較を分かりやすくするため、全量売電と完全自家消費を主軸に説明します(住宅用に多い「余剰売電型」は、自家消費したうえで余った電力だけを売るハイブリッド方式です)。
自家消費型の仕組み・メリット・導入前の注意点・3つの導入方法は自家消費型太陽光発電とは?仕組み・メリットと注意点、3つの導入方法の解説で通して確認できます。
FIT単価はどう決まり、2026年度はいくらか
FITでの買取単価は「システム導入費用(kW単価)÷ 回収年数」をベースに、毎年、経済産業大臣が設定します。設備価格が下がれば必要な回収単価も下がるため、太陽光設備の導入費用が安くなったぶん、FIT単価は年々引き下げられてきました。
2026年度のFIT単価は、50kW以上(入札対象外)区分が9.6円/kWh、10kW以上50kW未満区分が9.9円/kWhです。最新の買取価格は資源エネルギー庁「買取価格・期間等」でご確認いただけます。
100kWhで比べる|2026年度FIT単価と2026年3月の高圧平均単価
2026年度のFIT単価と、2026年3月時点の高圧の電気料金平均単価を使って、100kWh発電した場合を比較します。高圧で受電し、発電した電気をすべて自家消費できた場合の単純比較です。
- 全量売電型(2026年度・50kW以上区分):9.6円/kWh × 100kWh = 960円
- 自家消費型(高圧・2026年3月時点の平均単価):18.92円/kWh × 100kWh = 1,892円
差額は932円で、年間発電量が10万kWhなら約93万円の違いになります。高圧の電気料金平均単価は変動が続いており(2026年3月時点で前年同月比10.12%減)、単価が動けば差額も動きますが、2026年度のFIT単価との約9円/kWhの開きは残ります。

売電単価は年々引き下げられてきた一方で、電力会社から購入する電気料金単価はその水準を上回っています。
実際に電気代がいくら減るかは、設備の規模と電力の使い方によって変わります。削減額の考え方は自家消費型太陽光発電を導入した場合、実際にどれくらい電気代を削減できるのか?で解説しています。電気料金の高騰を受けて自家消費型太陽光発電の導入に至った企業の例は株式会社トレーダー様の導入事例をご覧ください。
2026年度以降、売電を取り巻く環境はさらに変化している
- 出力制御(出力抑制)の拡大:再エネの発電量が需要を上回りそうな場合に電力会社が出力を一時的に抑える「出力制御」の対象・頻度が広がっています。例えば九州本土では、2026年度に再エネ全体で6.9%程度の出力制御が見込まれています(九州電力送配電株式会社・2025年12月24日発表)。
- 事業用太陽光(地上設置)の新規支援終了:2027年度以降、事業用太陽光発電(地上設置・10kW以上)は規模を問わずFIT/FIP制度による新規支援の対象外となります(経済産業省2026年3月19日発表)。
出力制御の対象は電力会社へ売電する契約の設備であり、完全自家消費型(逆潮流ゼロ)の設備は直接の対象になりません。売電契約と逆潮流の関係は逆潮流とは?で詳しく解説しています。出力制御の実施状況は資源エネルギー庁「なるほど!グリッド」出力制御についてでご確認いただけます。
これらはいずれも「売電に伴う不確実性・制約」が増す方向の変化です。発電した電気は売るより自社で使うほうが経済的という関係は、これらの動きを踏まえてもむしろ強まっている状況にあります。ただし個別の投資判断は設備条件や契約内容により異なるため、最新の一次情報や電力会社・EPC事業者への確認をおすすめします。
経済性以外の評価軸|スコープ2のCO₂削減
自家消費型が選ばれる理由は、電気料金が上昇して自家消費による電気料金削減効果のほうが大きくなったことだけではありません。自家消費型太陽光発電によって作られた電気は、CO₂削減効果を自社の「スコープ2」として直接計上でき、ESG評価が取りやすくなります。
スコープ2とは、他者から供給された電気・熱の使用に伴う間接排出を指します。買う電気そのものが減るため、削減の効果が自社の数字にそのまま表れる点が、環境経営や脱炭素の取り組みで評価されています。
現場担当者の視点(事業部長 折原への取材より)
――なぜ、自家消費型が主流になってきたのでしょうか。
作った電気を売るより、自分たちで使った方が経済的だからです。
――経済面以外に、自家消費型が評価される理由はありますか。
自家消費は発電と使用(需要)が同一地点で完結するため送電ロスが少なく、逆潮流もほとんど発生しないので、系統の電圧変動も抑えられます(完全に無くなるわけではありません)。
――脱炭素の取り組みとしては、どう受け止められていますか。
さらに化石燃料発電を置き換える(発電しない)効果が、直接自宅や工場のCO₂削減に反映されるので、環境経営や脱炭素の取り組みとして分かりやすい成果を示せる点が高く評価されています。
恒電社は自家消費型太陽光発電のEPC(設計・調達・施工)事業者として、設備条件や契約内容ごとに異なる前提を確認したうえでご提案しています。
解説者
折原 恭平
インタビュアー
原澤耀
2022年から恒電社のマーケティングも担当し、電気や太陽光発電のことを、各関連分野のエキスパートに直接ヒアリングをしながら、できる限り分かりやすい表現と専門的な視点の両立を重視した情報発信に取り組んでいる。
よくある質問(FAQ)
Q1. FIT期間が満了したあと、買取単価はどうなりますか?
FIT期間(住宅用10年・事業用20年が基本)が満了すると、その後の買取単価は電力会社・新電力各社が個別に設定する水準に切り替わり、FIT期間中よりも大きく下がるのが一般的です。具体的な単価は各社の公式ページでご確認ください。
Q2. 屋根に設置する太陽光や住宅用も、2027年度以降は新規支援の対象外になりますか?
対象外となるのは事業用太陽光発電のうち地上設置・10kW以上の区分で、2026年度の入札落札分は除かれます。屋根設置・住宅用(10kW未満)は、初期投資支援スキームのもとで継続します。
Q3. 売電型と自家消費型で、設備の耐用年数の扱いは変わりますか?
変わります。売電型と自家消費型では設備の法定耐用年数の判定も変わります。国税庁の質疑応答事例にもとづく考え方は太陽光発電の耐用年数と減価償却で整理しています。
自家消費型太陽光発電の投資回収は、屋根の条件と電気の使い方で会社ごとに大きく変わります。恒電社では、御社の条件での概算シミュレーションから、社内で検討を進めるための材料づくりまでお手伝いしています。
この記事を書いた人
岩見啓明

