ソーラーカーポートで発電した電気は停電時に使うことができるのか?
A. 標準構成の産業用ソーラーカーポートだけでは利用できません。自立運転対応パワーコンディショナと、必要に応じた蓄電池・自動切替盤を導入すれば停電時でも電気が使えます。
要約
停電時利用は要件次第:
太陽光発電は停電時に逆潮流や作業員の安全確保のため自動停止します。そのため、産業用ソーラーカーポートで電力を使うには自立運転対応パワーコンディショナと専用制御盤を組み込んだ特別構成が不可欠です。標準機種では使えないと驚くお客様も多く、導入前には丁寧にご説明させていただきます。
自立運転+蓄電池で安心:
自立運転対応パワーコンディショナなら昼間に最大1500W程度を直接利用できるものの、夜間は発電できません。蓄電池を併用すれば日射のない夜間や悪天候でも非常用電源を確保でき、BCP対策や通信機器の稼働継続に有効となります。
自動切替盤で操作ミス防止:
手動切替は手順忘れや感電リスクがあるため、停電時に自動で自立運転へ、復電時に系統接続へ戻る制御盤を推奨しています。大容量発電設備では安全上の理由から手動を選ぶ場合もあり、用途と規模に応じた設計が必要となります。
解説者
インタビュアー
ソーラーカーポートで発電した電気は停電時に使えるのか。
━━━停電時にソーラーカーポートの電気は使えますか?
条件付きで利用可能です。
通常の太陽光発電システム(自家消費型を含む)は、停電時に安全のため自動的に発電を停止する仕組みになっています。これは、電力会社の配電網に逆潮流を起こさないようにするためや、電力復旧作業を行う作業員の安全を守るためです。
停電時でも電力を使用できるようにするには、特別な構成が必要です。
自立運転機能の有無と対象
住宅用の太陽光発電システムでは、「自立運転機能」を備えたパワーコンディショナが一般的で、停電時に自動でこのモードに切り替わるものも多く存在します。この機能を使えば、日中に発電した電気を最大1500W(100V回路)まで利用でき、照明や携帯電話の充電、ノートPC、通信機器などが動かせます。
一方で、法人向けのソーラーカーポートなどに多く使われる産業用のパワーコンディショナには、自立運転機能が付いていない機種が大半です。そのため、停電時に電力を使用するには、あらかじめ自立運転用のパワーコンディショナを選定・導入し、必要に応じて制御盤などの追加設備を設置することが前提となります。
自動切り替えと制御の仕組み
停電時に自動でモードが切り替わり、復電すると通常モードに戻るように設計されています。
また、当社では専用の自動で切り替わる、切替盤・制御装置の設置を行っています。
蓄電池との併用でさらに安心
さらに、蓄電池を併用することで夜間や悪天候時の停電でも電気を使用できるようになります。太陽光発電システム単体では昼間の発電に依存するため、蓄電池を導入することで、夜間の非常用電源としての活用が可能となり、BCP(事業継続計画)対策にも有効です。
ソーラーカーポート単体では、停電時の電力利用は基本的に制限されます。ただし、自立運転対応のパワーコンディショナや蓄電池、制御装置を組み合わせることで、非常用電源として活用することは可能です。
特に法人利用では、産業用機器の仕様に注意し、事前に設備構成を十分に検討することが重要です。停電対策を視野に入れる場合は、導入段階での仕様選定と構成の相談を専門業者と行うことをおすすめします。
━━━「当社では専用の自動で切り替わる、切替盤・制御装置の設置を行っています。」と仰いましたが、必須なのでしょうか?
もちろん設置は任意ですが、太陽光発電設備を引き渡す際に「停電時はここを切り替えて使用してください」とお伝えしても、お客様がその手順を覚えていない可能性があります。
いざという時に使用できなければ、BCP対策としての意味を成しません。そのため、基本的には操作不要で自動制御される仕組みにしておくべきだと考えています。
また、この制御盤の使用方法については、引渡前に「このような回路設計になります」とご説明しています。
ちなみに「武州製氷株式会社様」は手動切り替えです。
同社では発電設備の容量が非常に大きいため、仮に、自動で切り替わる仕組みにしていた場合、停電時に電気が来ていないと勘違いして触れると、感電の危険があります。そのため切り替え機が設置されています。
お客様からの質問
━━━そもそも論になりますが、ソーラーカーポートのご依頼をいただいた際に「停電時にも使えるのか?」というご質問をお客様からいただくことはよくありますか?
あくまで私のこれまで数年間の肌感覚としては、太陽光発電設備を導入すれば停電時にも電気が使えるものと考えているお客様が圧倒的に多い印象です。
住宅用の太陽光発電設備に親しみがある方も多く、「家に付いていれば、停電時にも使えるもの」と思われている傾向があります。
実際、自立運転機能付きのパワーコンディショナーを搭載した住宅用太陽光の普及により、「停電しても使えるもの」という認識が広がっているのだと感じます。
そのため、工場などに設置する際にも「当然、停電時にも使える」と思われているお客様が多く、「実際は使えない」と説明すると驚かれることが少なくありません。
━━━その後の説明として「なぜ使えないのか?」という理由は、どのようにご案内していますか?
技術的な側面でのご説明が求められる場合には、自立運転機能が備わっていないことなど、前段の技術的な背景をご説明することになります。
また、「では使えるようにするにはどうすれば良いか?」という観点であれば、蓄電池の導入など、具体的な対応策をご案内する流れになるかと思います。
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