本稿の目的:国の「電気・ガス料金支援」がいつまで続くのか、支援期間の終了後に法人の電気代がどう動くのかを、経済産業省などの一次資料に基づいて整理します。
結論:値引きの対象は2026年7月使用分から9月使用分までで、10月使用分以降の実施は2026年9月時点で発表されていません。延長されなければ、高圧契約の企業は1kWhあたり1.8〜2.3円の値引きがなくなります。
見落としがちなリスク:支援期間の終了と近い時期に、東京電力パワーグリッドなどで託送料金の改定(2026年11月1日適用予定・審査中)が控えています。値引きの終了だけを見ていると、電気代の変化を小さく見積もる可能性があります。
電気・ガス料金支援は、国が2026年夏(7〜9月使用分)の電気料金と都市ガス料金の一部を値引きする支援策です。対象となる契約では、電気を使う側の申請は不要で、参加する電力会社の料金に値引きが反映されます。
結論からお伝えすると、現在実施中の値引きは2026年9月使用分までで、10月使用分以降の実施は2026年9月時点で発表されていません。
本稿では、支援の内容と期間、支援期間の終了後に法人の請求額を見るうえで確認したい3つの要素、そして企業が今から取れる備えを、出典を示しながら解説します。
経済産業省は2026年6月12日、電気・都市ガス料金の値引きを行うための特例認可・承認を行いました(出典:経済産業省「2026年7月、8月及び9月使用分の電気・ガス料金支援の実施に伴う特例認可・承認」2026年6月12日)。電気の値引き単価は次のとおりです。
| 適用期間 | 低圧(円/kWh) | 高圧(円/kWh) |
|---|---|---|
| 2026年7月使用分 | 3.5 | 1.8 |
| 2026年8月使用分 | 4.5 | 2.3 |
| 2026年9月使用分 | 3.5 | 1.8 |
※このほか都市ガスは7月・9月使用分14.0円/㎥、8月使用分18.0円/㎥(対象は一般家庭および年間契約量1,000万㎥未満の企業等)。
高圧契約は、主に中小企業などで利用される受電契約です。赤澤経済産業大臣も閣議後の記者会見で、高圧の値引きについて次のように説明しています。
「主に中小企業の方々が利用する高圧の電気料金は、同じく1.8円、2.3円、1.8円の支援を行います。」
—— 赤澤経済産業大臣 閣議後記者会見(2026年5月26日)より
値引きの規模を例で見ると、月間使用量10,000kWhの高圧契約の場合、8月使用分では2.3円×10,000kWh=23,000円、7月・9月使用分では1.8円×10,000kWh=18,000円が値引きされる計算です。現行の支援が延長されなければ、10月使用分以降はこれらの値引きが反映されません。
※公表された値引き単価の表には「低圧」「高圧」「都市ガス」の区分のみが示されています。特別高圧など、それ以外の契約区分の扱いは資源エネルギー庁の特設サイト等でご確認ください。
そもそも自社の電気料金がどのような項目で構成されているのかを整理しておくと、値引きがどこに効いていたのかが分かります。基本料金・燃料費調整・再エネ賦課金・託送料金の仕組みは、以下の記事で解説しています。
法人向け|電気料金の内訳とは?基本料金・再エネ賦課金・託送料金の仕組みをわかりやすく解説
資源エネルギー庁の特設サイトでは、値引きの実施期間を「2026年7月使用分〜9月使用分」と示しています(出典:資源エネルギー庁 電気・ガス料金支援 特設サイト)。
同サイトによると、「7月使用分」とは原則として7月中の検針日から8月中の検針日までの使用に係る分を指します。同じ数え方をすれば、最後の「9月使用分」は原則として9月中の検針日から10月中の検針日までの使用分です。請求書・明細上の月の表示は電力会社によって異なるため、値引きが反映される月の表記は前後する場合があります。
10月以降の扱いについて、赤澤経済産業大臣は2026年5月26日の記者会見で次のように述べています(出典:赤澤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要 2026年5月26日)。
「一般に10月になればご家庭の電気の使用量は減少するものと承知しておりますので、現時点において10月以降も支援が必要であるとは考えていないということでありますが、いずれにせよ、引き続き、中東情勢が国民生活や経済活動に与える影響を注視してまいりたいと考えております。」
—— 赤澤経済産業大臣 閣議後記者会見(2026年5月26日)より
「終了が正式に決定した」という表現ではなく、「現時点で10月以降の支援は必要と考えていない」という立場です。情勢次第で判断が変わる余地は残されていますが、2026年9月時点で延長の発表は確認されていません。
値引きの動向は、電気代を左右する要素の1つにすぎません。同じ時期の制度の動きと、引き続きかかる負担を含めて、3つに整理します。
前述のとおり、高圧契約では1kWhあたり1.8〜2.3円の値引きの対象が2026年9月使用分までとなっています。延長が発表されず、使用量が変わらなければ、その分だけ請求額は増える方向に働きます。
託送料金は、送配電網の利用料として電気料金に含まれる費用です。2026年7月10日、東京電力パワーグリッドを含む一般送配電事業者8社が、人件費・物価・金利の上昇を理由に収入の見通しの変更承認を国へ申請しました(出典:経済産業省「一般送配電事業者8社から託送供給等に係る収入の見通しの変更承認申請を受理しました」2026年7月10日)。
東京電力パワーグリッドは、承認等を前提に、新たな託送料金の適用を2026年11月1日から予定しています(出典:東京電力パワーグリッド「『託送供給等に係る収入の見通し』の変更承認申請について」2026年7月10日)。申請は2026年9月時点で審査中です。
関東エリアの新単価は2026年9月時点で未公表です。先行して届出を行った中国電力ネットワークの例では、高圧の平均単価が4.62円/kWhから4.96円/kWhへ改定されます(出典:中国電力ネットワーク「託送供給等約款の変更届出について」2026年8月24日)。
※中国電力ネットワークエリアの数値です。エリアごとに申請内容・改定幅・適用時期は異なるため、確定値は各エリアの一般送配電事業者の公表をご確認ください。
託送料金がレベニューキャップという仕組みでどう決まり、なぜ期の途中で見直されるのかは、以下の記事で詳しく解説しています。
レベニューキャップ制度とは?仕組みと電気代への影響をわかりやすく解説【2026年更新】
再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの買取費用の一部を、電気の利用者が使用量に応じて負担する制度です。2026年度の単価は1kWhあたり4.18円で、2026年5月検針分から2027年4月検針分まで適用されます(出典:経済産業省「2026年度の賦課金単価を設定します」2026年3月19日)。
賦課金は支援期間の終了で新たに増える費用ではありませんが、値引きがなくなった後の請求では、使用量に応じたこの負担が相対的に目立ちます。仕組みと単価の決まり方を詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
なお、電気代が今後も必ず上がり続けるとは限りません。燃料費調整は燃料の市況を反映するため、下がる局面もあります。一方で、賦課金や託送料金のような制度に由来する部分は、燃料の市況に関係なく決まります。「市況次第で上下する部分」と「制度で決まる部分」を分けて見ることが、電気代の見通しを立てる出発点になります。
支援期間の終了を「いくら増えるか分からない不安」のままにせず、自社の数字で把握することから始められます。次の4つの順で確認するのがおすすめです。
恒電社は、電気代と脱炭素の対策を「順序」で考えることをご提案しています。外から環境価値を買う前に、まず省エネで使う電気を減らし、次に自家消費型太陽光発電で購入する電気を減らす、という順番です。
値引きのような期間限定の支援と違い、購入する電力量そのものを減らす対策は、制度の変動に左右されにくい備えになります。自家消費型太陽光発電を導入した場合にどの程度電気代を削減できるのかは、試算の考え方を以下のFAQで解説しています。
自家消費型太陽光発電を導入した場合、実際にどれくらい電気代を削減できるのか?
実際に、電気料金の高騰をきっかけに自家消費型太陽光発電の導入へ踏み切った企業の判断は、以下の導入事例で確認できます。
【導入事例】株式会社トレーダー様|電気料金の大幅な高騰を受けて自家消費型太陽光発電を導入
2026年9月時点で、再開・延長の公式な発表は確認されていません。経済産業大臣は「現時点において10月以降も支援が必要であるとは考えていない」としつつ、中東情勢の影響を注視すると述べています。最新の情報は資源エネルギー庁の特設サイトでご確認ください。
検針票や請求明細の契約種別をご確認ください。値引きは需要家の申請が不要で、支援に参加する電力会社の料金に反映される仕組みです。電力会社によっては、明細の燃料費調整に関する欄や備考に値引き単価が記載されます。適用状況や表示方法は、ご契約中の電力会社にご確認ください。
値引きの対象は2026年9月使用分までです。9月使用分は、原則として9月中の検針日から10月中の検針日までの使用に係る分を指します。検針日や電力会社の明細上の月の数え方によって、値引きが最後に反映される請求月の表示は前後する場合があります。正確な適用期間は、ご契約中の電力会社の明細・お知らせでご確認ください。
支援期間の終了後の電気代が自社にとってどの程度の影響になるのか、明細のどこを見ればよいか分からない——そのような段階のご相談で構いません。恒電社は、省エネのご提案から自家消費型太陽光発電の設計・施工まで、購入電力量を減らす対策を一貫してお手伝いしています。