本稿の目的:夏に電気代が上がるとき、使った量とは別に動いている「基本料金」の仕組みを整理します。
結論:契約電力500kW未満の施設では、夏に過去12か月の最大値を更新する最大需要電力(デマンド)を記録すると、記録した月を含む12か月間、基本料金の計算に使う契約電力がその水準より下がりません。
最大のリスク:一度上がった契約電力は、その後どれだけ節電しても、記録した月を含む12か月間は下がりません。夏の数十分が、翌年まで効き続けます。
高圧で受電している施設の電気料金は、大きく「基本料金」「電力量料金(燃料費調整額を含みます)」「再生可能エネルギー発電促進賦課金」で構成されています。このうち電力量料金は使った分だけ増えるので直感的に分かりますが、基本料金は「契約電力 × 基本料金単価」で決まり、その契約電力が何をもとに決まっているかは、あまり知られていません。
結論から言えば、契約電力500kW未満の施設では、30分ごとの平均使用電力から求めた各月の最大値のうち、当月を含む過去12か月間で最も大きい値が契約電力になります。7月や8月に空調と生産設備が重なって過去12か月の最大値を更新すると、その値が翌年まで契約電力として効き続ける、ということです。
この記事では、その仕組みを電力会社の公式な説明にもとづいて整理したうえで、契約電力500kW未満と500kW以上で何が変わるのか、そして手元の資料だけで何を確認できるのかまでをまとめます。料金の内訳そのものについては法人向けの電気料金の内訳を解説した記事もあわせてご覧ください。
「夏は電気代が高い」と感じるとき、請求書の中では性質の違う2つの変化が同時に起きています。
厄介なのは2つ目です。使用量は季節とともに下がるのに、基本料金の計算に使う契約電力は上がったままです。秋以降「特に何も変えていないのに電気代が下がりきらない」という感覚があるとき、その正体はここにあることが少なくありません。
最大需要電力は、しばしば「デマンド」「デマンド値」と呼ばれます。定義は明快で、電力会社は次のように説明しています。
ポイントは「瞬間の値ではない」ことです。一瞬だけ機械が立ち上がっても、30分の平均に均されます。逆に言えば、30分にわたって高い状態が続くと、その月の最大値を更新しやすくなります。夏の午後、空調がフル稼働している時間帯に生産設備の稼働が重なると、まさにその条件が揃います。
そして契約電力500kW未満の場合、各月の契約電力は「当月と前11か月の最大需要電力のうち、最も大きい値」と定められています(北陸電力「電気料金のしくみ(特別高圧・高圧)」)。この決め方は実量制と呼ばれます。
具体的には、8月に記録した値は、それを上回る値が出ない限り、翌年7月請求分まで契約電力であり続けます。その間にどれだけ丁寧に節電しても、契約電力は下がりません。
ここが実務でいちばん混乱しやすいところです。大手電力会社の標準的な高圧契約では、同じ「高圧」でも契約電力500kWを境に決め方が変わります。
| 契約電力 | 決め方 | 夏のピークがもたらすもの |
|---|---|---|
| 500kW未満 | 実量制 (過去12か月の最大需要電力) | 1回のピークが、記録した月を含む12か月の契約電力を押し上げる |
| 500kW以上 | 協議制 (1年間の予想最大需要電力を電力会社と協議して決定) | 契約電力を超えると契約超過金が発生する。契約電力の見直し協議につながることもある |
※この区分は特定の電力会社に限った話ではありません。たとえば東京電力エナジーパートナーの現行の標準メニューでも、契約電力の決定方式は「特別高圧=協議により決定」「高圧500kW未満=実量値(実際の最大需要電力)にもとづき決定」「高圧500kW以上=協議により決定」と定められています(同社「特別高圧・高圧のお客さま向けの電気料金プランについて」)。
「協議で決めるなら、夏のピークは関係ないのでは」と考えたくなりますが、実際は逆です。契約電力を超えて使った場合、超過分に対して契約超過金が請求されます。その金額は、超過した電力に基本料金率を乗じ、力率で調整した額の1.5倍です。加えて、北陸電力では超過した場合に契約電力の見直し協議を実施するとしています(扱いは契約先によって異なるため、約款でご確認ください)。
つまり500kW以上の施設では、夏のピークは「契約電力が固定される」という形ではなく、割増された超過金という形で返ってきます。契約電力そのものの見直しにつながることもあります。このように、区分によって夏のピークが料金に効く仕組みは異なります。
判定は難しくありません。毎月届く電気料金の検針票(電気ご使用量のお知らせ)には、多くの場合「契約電力」または「契約キロワット」の記載があります。まずその数値が500kW未満か以上かを確認してください。あわせて「最大需要電力」「デマンド」という項目が印字されていることも多く、その月にどこまで上がったかもその場で確認できます。
ただし、契約されているプランによって契約電力の決め方が異なる場合があります。正確な扱いは、ご契約中の電力会社の約款・料金表もあわせてご確認ください。
もうひとつ押さえておきたいのが、ピークを警戒すべき期間が長くなっていることです。
資源エネルギー庁が2025年10月31日に公表した資料では、2025年度夏季の電力需給について次のように整理されています。
7月や9月において、猛暑H1想定需要を超過していることから、夏季において高需要を記録する期間が、従前は7月後半〜8月だったものが、7月〜9月と長期化している傾向。
資源エネルギー庁「今夏の電力需給及び今冬以降の需給見通し・運用について」(2025年10月31日・資料3)
これは電力系統全体の需要の傾向であり、個々の施設のピークが必ず同じ時期に出るという意味ではありません。ただ、「8月さえ乗り切れば」という前提で運用を組んでいると、9月に記録を更新してしまう可能性がある——警戒すべき期間を考えるうえでの参考にはなります。業種によって電力の使い方のパターンは大きく異なるため、自社の負荷がいつ立ち上がるかは、実際のデータで見るほかありません。
デマンドを起点に考えると、打ち手は性質ごとに4つに分かれます。
| 打ち手 | 内容 | 効き方 |
|---|---|---|
| ①ピークを作らない運用 | 大きな負荷を同時に立ち上げない。空調の設定と生産設備の稼働開始をずらす | 費用をかけずに始められるが、現場の運用に依存する |
| ②力率を改善する | 進相コンデンサ等の設備で力率を上げる | 基本料金の割引・割増の調整に反映される(後述) |
| ③購入する電力量を減らす | 照明・空調の更新、運用改善、自家消費型太陽光発電 | 電力量料金に効く。デマンドへの効果は条件による |
| ④まず測る | 30分値データを取得し、いつ・何が原因でピークが立つかを特定する | ①〜③のどれが有効かを判断するための前提 |
②の力率について補足します。たとえば北陸電力では、力率が85%を上回る場合はその上回る1%につき基本料金を1%割引し、85%を下回る場合はその下回る1%につき1%割増すると定めています(判定に使うのは、1か月のうち8時から22時までの平均力率)。力率による調整の有無や条件は電力会社・契約プランによって異なるため、ご契約中の電力会社の料金表で確認してください。
なお、力率改善に使われる進相コンデンサは、弊社でも更新のご相談を多くいただく設備です。設置から年数が経っている場合は、いま自社の力率がどの水準にあるかを一度確認しておくとよいでしょう。省エネと節電の違いについては企業が省エネに取り組むうえで最初にすべきことを整理した記事で扱っています。
ここは正直にお伝えしたい部分です。
自家消費型太陽光発電は、日中に発電した電気を施設内で使うことで、系統から購入する電力量を減らす設備です。したがって効くのは、電力量料金のもとになる購入電力量(kWh)のほうです。
一方、基本料金の計算に使う契約電力については、「必ず下がる」とは申し上げられません。理由は単純で、デマンドが記録されるその30分に、太陽光が十分に発電しているとは限らないからです。曇天や降雨の日にピークが立てば、太陽光の出力は落ちています。天候不良時や夜間の発電量がどう変化するかを踏まえると、太陽光だけでピークを狙って抑え込むのは構造的に難しい、ということになります。
なお、料金体系そのものが電力量料金側に比重を移した例もあります。東京電力エナジーパートナーは2026年4月1日からの標準メニュー見直しで、ベーシックプラン等について「従来と比較して基本料金単価を低く、電力量料金単価を高く設定」したと公表しています(同社「2026年4月1日からの特別高圧・高圧の標準メニューの見直し内容について」)。使用量の比重が上がる方向であり、購入電力量を減らす取り組みの意味はむしろ増しています。
整理すると、次のようになります。
弊社がご相談をいただいた案件でも、ピーク対策を目的に蓄電池を検討する場合は、太陽光とは別の設備として容量と出力を検討しています。自家消費型太陽光発電の基本的な仕組みとあわせて、目的ごとに手段を分けて考えることをおすすめします。
ここまで読んで「では自社はどうなのか」と思われた場合、最初にすべきことは推測ではなく実データの確認です。
弊社が自家消費型太陽光発電のご提案をする際も、必ず次の資料をお願いしています。
3つ目の30分値データは、設備の規模を決めるうえで最も重要な入力です。年間8,760時間分の使い方が30分刻みで分かるため、どの季節・どの時間帯に負荷が立ち上がるのかを、印象ではなく数字で把握できます。実際の検討でも、空調の負荷を含めるかどうかで想定する設備の規模が大きく変わることがあり、この判断はデータなしにはできません。
そして、この30分値データは契約中の小売電気事業者に依頼すれば、CSV形式で取り寄せられます。「過去1年分の30分値データがほしい」とお伝えいただければ、対応してもらえる場合が多くあります。
※電力会社を切り替えた経験がある場合でも、電気メーターを管理している地域の一般送配電事業者が大元のデータを保管しているため、切り替え前の期間のデータも取り寄せられる場合があります。切り替えを挟んでいるからと諦める必要はありません。
契約電力500kW未満の実量制では、契約電力は過去の最大需要電力にもとづいて自動的に算定されるため、節電しただけで途中から下がることはありません。ピークを記録した月から12か月が経過してその値が対象から外れ、残る期間の最大値がそれより低ければ下がります。ただし、設備を撤去したなど電気の使い方そのものが大きく変わった場合の扱いは、ご契約中の電力会社にご相談ください。500kW以上の協議制の場合は、契約電力そのものが電力会社との協議事項ですので、見直しをご相談いただけます。
デマンド監視装置は、設定した値に近づくと警報を出すタイプが一般的です(製品によっては、機器の制御まで行うものもあります)。警報型の場合、装置そのものが電力を減らすわけではなく、警報を受けて現場が負荷を落とす運用とセットで初めて効果が出ます。導入を検討される場合は、警報が出たときに「何を止めるのか」を先に決めておくことをおすすめします。
屋根面がパネルで覆われることによる遮熱効果を期待して導入されたお客様もいらっしゃいます。暑い工場で働く仲間のために導入を決めた圧造メーカー様の事例や、遮熱効果による製造現場の環境改善を期待された和菓子メーカー様の事例もご参照ください。ただし効果は屋根の構造や断熱の仕様によって異なるため、一律の数値をお約束できるものではありません。
恒電社は、屋根上・カーポートの自家消費型太陽光発電の設計・調達・施工と、高圧受変電設備の設計・施工/改修工事を手がけています。「まず自社の使い方を数字で把握したい」という段階からのご相談も歓迎です。30分値データの取り寄せ方や、どこから手を付けるべきかの整理からお手伝いします。