判断の要点
通常は電力会社から家や会社へ電気が「入って」きます。系統と連系した状態で、発電出力の抑制や蓄電池への充電でも吸収されない余剰電力が生じると、その分が系統側へ流れます。この電気の流れる向きが普段と逆になった状態が逆潮流です。
図の左が、系統側から構内へ電気が入ってくる順潮流。右が、構内から送電線へ電気が出ていく逆潮流です。ガイドラインはこの2つを向きの違いとして定義しています。
扱いは設備の型で分かれます。余剰売電型は逆潮流を前提とし、完全自家消費型は発生させない前提で設計します。
この2つは同じ場面で出てくるため混同されやすいのですが、指しているものが違います。
余剰電力は「量」です。発電した電力のうち、その時点の自社の消費で使い切れずに余った分を指します。逆潮流は「向き」です。資源エネルギー庁「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」(令和6年12月1日)は、逆潮流を「発電等設備設置者の構内から系統側へ向かう有効電力の流れ(潮流)」、その逆を順潮流として「系統側から発電等設備設置者の構内へ向かう有効電力の流れ(潮流)」と定義しています。
余剰分を蓄電池に充電する、または余剰が生じないよう発電出力を抑えるなどして系統側へ流出しなければ、逆潮流は発生しません。余剰があることと逆潮流が起きることは同じではない、というのがこの2語の関係です。完全自家消費型の設備は、この「余剰は出ても系統へは流さない」状態を作るための構成になっています。
太陽光発電を電力系統へ繋ぐとき、逆潮流の扱いは2つに分かれます。ガイドラインも連系の技術要件を「逆潮流有りの条件で連系する場合」と「逆潮流無しの条件で連系する場合」に書き分けています。自社の設備がどちらに当たるかを先に確認してください。
ここで混ざりやすいのが「自立運転」です。停電時に系統から切り離して構内の負荷へ電気を送る使い方を指しますが、これは連系の型ではなく、運転のしかたの話です。ガイドラインは、事故などで系統電源から切り離された状態で発電を続けて線路負荷へ電力供給している状態を「単独運転」と定義しており、低圧・高圧配電線との連系ではこれを防止する保護が求められます(特別高圧電線路との連系では扱いが異なります)。ここで防止の対象になる「単独運転」は、系統から切り離した状態で構内の負荷だけに供給する「自立運転」とは別のものです。自立運転の機能を持たせるかどうかは設備仕様の選択で、平常時に逆潮流を出すかどうかとは別に考えます。
法人の自家消費型太陽光では、逆潮流なし(完全自家消費型)か、逆潮流あり(余剰売電型)のどちらかを選ぶ場面がほとんどです。判断の分かれ目になる費用と、売るか使うかの比較は、このあとの章で整理します。
余剰売電契約では、逆潮流が「このくらいの量で発生する」という計画を事前に申請し、接続検討の費用と、必要な場合の工事費負担金を負担して接続します。接続検討で系統側の影響が確認され、必要に応じて設備の増強が行われるため、電力会社側も想定済みの状態になります。接続検討と保護・電圧対策を経て連系するため、他の利用者への影響は抑えられる仕組みになっています。
自家消費を目的とする設備でも、余剰が技術的にゼロとは言えません。発電量が施設の消費量を上回った瞬間に余剰電力が発生し、それが系統側へ流れるかどうかは、連系の条件・パワーコンディショナ(PCS)の機能・蓄電池や出力制御装置の有無で決まります。「逆潮流なし」の条件で連系する完全自家消費型では、次に述べるRPRや出力制御によって、系統へ流し続けない構成にします。
完全自家消費型では、保護継電器(RPR=逆電力継電器)の設置が「逆潮流なし」契約における系統連系技術要件上の原則として求められています。RPRは逆潮流を検知し、設定した検出値・動作時間に応じてPCSの停止や解列を行う保護装置で、系統へ電気が送られ続けることを防ぎます。あくまで検知後に動作する保護であり、逆潮流そのものを生じさせない出力調整とは役割が異なります。
ただしRPRの設置は原則であって、一律の義務ではありません。発電設備容量が契約電力の一定割合以下である場合や、PCSの単独運転検出機能で確実に検出できる場合など、省略できる規定もあります。個別の要否は電力会社との系統連系協議でご確認ください。
一方、逆潮流を自動的に抑制するために必要な計測・制御の機能をPCS単体が持つかどうかは、機種と構成によって変わります。多くの構成では、需要側の負荷を計測してPCSの出力を指令する「出力制御ユニット」やHEMSコントローラなどを別途組み合わせます。
| 手段 | 役割 | 効果が及ぶ範囲 |
|---|---|---|
| RPR(逆電力継電器) | 逆潮流を検知し、設定に応じてPCSを停止・解列させる | 検知後の遮断 |
| 出力制御ユニット・HEMSコントローラ | 消費電力を監視してPCSの出力を調整する | 受電点の有効電力が逆向きにならないよう保つ |
| 蓄電池 | 昼間の余剰電力を貯蔵し、夕方や夜に放電する | 条件に応じて年間の逆潮流電力量や発電抑制量を減らす |
表のとおり、検知後の遮断はRPR、逆潮流が生じないようにする出力調整は出力制御ユニットの役割です。発電を抑制すれば本来得られる電気が失われ、蓄電池には設備費・劣化費用がかかるため、どちらに寄せるかは費用の比較になります。蓄電池の価格は【蓄電池の価格は高いのか?】業界20年の専門家に聞く蓄電池の価格で解説しています。
余剰売電型で系統に接続する場合の主な費用は、次の2つです。接続検討費用は検討そのものに対する料金で、設備の増強工事費とは別のものです。
個別の負担額・区分は、電力会社への接続検討の回答でご確認ください(例: 四国電力送配電 系統連系の手続き)。申請の流れ全体は太陽光発電設備の導入前に必要な「申請」とは何か?で解説しています。
余剰電力があるということは「自分では使いきれない分」がすでにある状態です。比べるのは、余剰売電型(系統に流して買い取ってもらう)と完全自家消費型(系統に流さず出力制御や蓄電で対応する)のどちらが総コストを下げられるか、です。
| 比べる観点 | 余剰売電型 | 完全自家消費型 |
|---|---|---|
| 初期投資 | 接続検討費用、必要な場合の系統連系工事費負担金、計器構成に応じた計量機器の費用 | 売電に伴うこれらの費用は不要(設備本体・保護制御・受変電設備の改修費は別途) |
| そのあとに効くコスト | 回収可否はFITなどの買取単価と余剰電力量次第 | 出力抑制によるロス、または蓄電池の設備費・劣化費用 |
売電に伴う初期費用がかかるのは余剰売電型、完全自家消費型は抑制ロスか蓄電池のコストを負います。設備本体や受変電設備側の費用はどちらの型でも必要です。2つの型の違いは売電型太陽光発電と自家消費型太陽光発電の違いとは?、余剰の出方を左右する負荷の形は「業界ごとに異なる電力使用パターン」が太陽光発電設備の設計に与える影響をご覧ください。導入企業の例は【導入事例】武州製氷株式会社様が自家消費型太陽光発電を導入で紹介しています。
逆潮流と混同されやすい制度に「出力制御(出力抑制)」があります。再生可能エネルギーの発電量が需要を上回りそうな場合に、電力会社が発電設備の出力を一時的に抑える仕組みです。2022年4月からは、それまで実施対象外と整理されてきた旧ルール500kW未満の太陽光発電設備も実施対象となりました。10kW未満の設備は当面の間は実施対象外とされていますが、複数太陽光発電設備設置事業に該当する場合は10kW未満でもオンライン代理制御の対象になります。2026年3月1日には、東京電力パワーグリッドの発表のとおり、同社サービスエリアで初となる再生可能エネルギーの出力制御が実施されました。
ここで説明する需給バランス調整のための出力制御は、電力会社へ電気を送っている設備を対象とする仕組みです。「逆潮流なし」の条件で連系し、系統へ電気を送っていない完全自家消費型の設備は、需給バランス調整のための出力制御の直接対象にはなりません。適用の有無は逆潮流の有無だけでなく、設備や連系の条件によっても変わるため、個別にご確認ください。出力制御が全国的に拡大する局面では、「売るより使う」の経済的なメリットが今後さらに強まる可能性があります。
最新の実施状況は資源エネルギー庁「なるほど!グリッド」出力制御についてと各電力会社の公式ページでご確認いただけます。
――自家消費が目的でも、余った電気が外へ流れることはあるのですか?
自家消費が目的でも、発電量と使用量が完全に一致するわけではないので、晴天の昼間などに逆潮流が起きやすくなります。
――蓄電池を置けば逆潮流を減らせるのですか?
蓄電池は逆潮流を抑える用途としては使用できません。一方で蓄電容量が十分なら、昼間の余剰電力を貯蔵し、夕方や夜に放電して自家消費を増やすため、年間を通じて逆潮流を減らすことは可能です。
――余った電気を売るのと自分で使うのでは、どちらが得になることが多いのでしょうか?
近年はFIT単価の低下と接続費用の高止まりが同時に進んでおり、中小規模の設備では「売るより使う(完全自家消費)」が経済的に有利となるケースが増えています。ただし、案件規模や負荷パターン、蓄電池の有無で条件は大きく変わるため、初期費用と長期のキャッシュフローを比較した個別試算が不可欠です。
技術的に補足すると、逆潮流を止める役割を担うのはRPRや出力制御で、蓄電池が受け持つのは余剰電力の吸収です。蓄電池単体で逆潮流の防止を保証するものではなく、PCS・計測・制御・保護を含む構成で対応します。容量や充電出力、そのときの空き容量によって吸収できる量は変わり、条件に応じて年間の逆潮流電力量や発電抑制量を減らせます。
恒電社は自家消費型太陽光発電のEPC(設計・調達・施工)を担当しており、RPRの要否や工事費負担金の区分は電力会社との系統連系協議・接続検討の回答で確認します。
「ぎゃくちょうりゅう」と読みます。余剰電力が送電線へ流れ出す現象を指す用語です。
スマートメーター(電力量計)で計測します。現在普及している住宅用(低圧)のスマートメーターは「入ってくる量」と「出ていく量」を1台で別々に計測できる双方向計量型で、電圧と電流から有効電力の向きを判別し、順方向と逆方向の電力量を30分ごとなどの単位で別々に積算します。高圧で受電している工場や大型ビルでは、計量の方式によって買電用と売電用を分けて設置することがあります。必要な計器の構成は、契約する一般送配電事業者の計量方式によって決まるため個別にご確認ください。
逆潮流そのものは、構内から系統側へ向かう有効電力の流れという物理的な状態を指します。系統連系にあたっては、この流れを前提とするかどうかで「逆潮流あり」「逆潮流なし」の条件に分かれ、本記事で扱う余剰売電型は前者、完全自家消費型は後者にあたります。「逆潮流なし」で連系した設備は、系統への送電を前提とした運用ができず、系統連系協議で定めた保護・制御の条件を満たす必要があります。
出力制御や逆潮流の扱いは、契約区分と設備構成によって変わります。完全自家消費型にするかどうかを含め、御社の受電設備を踏まえた設計の考え方からご説明できます。導入方法や現地調査から運用開始までの流れは、法人向け自家消費型太陽光発電のサービス案内をご覧ください。