A. 発電した電気を電力会社に売って収入を得るのが売電型、自社で使って購入する電気を減らすのが自家消費型です。本稿は工場・倉庫の屋根に載せる完全自家消費型を対象に説明します。沖縄地域・離島等供給エリアを除く2026年度の新規認定では、10kW以上50kW未満のFIT認定に自家消費型の地域活用要件があり、50kW以上はFIP制度のみです。FIPの基準価格は固定の買取単価ではなく、実際の収入は売電契約とプレミアムによって決まります。
判断の要点
- 売電(ばいでん)とは、発電した電気を電力会社などへ販売すること。FIT認定を受けた案件の売電収入は「買い取られる電力量 × 適用される調達価格」、自家消費型(完全自家消費)の効果は「購入時の電気料金単価 × 自家消費量」で計算する
- 2026年度の単価は設置形態で大きく違う。事業用の屋根設置(10kW以上50kW未満・FIT)は初期投資支援スキームで初期5年19円/kWh・6〜20年8.3円/kWh。地上設置は50kW以上(入札制度対象外)がFIPの基準価格9.6円/kWh、10kW以上50kW未満がFITで9.9円/kWh。沖縄地域・離島等供給エリアを除く2026年度の新規認定では、50kW以上は屋根設置でもFIPの対象で、基準価格は固定の買取単価ではなく、実際の収入は売電契約とプレミアムによって決まる
- 本稿は高圧の購入単価を18.92円/kWhと仮定して試算する。屋根設置の制度価格(初期5年19円・6〜20年8.3円)と並べると、初期5年はほぼ拮抗し、6年目以降は購入回避額が制度価格を1kWhあたり10.62円上回る
- 出力制御の見通し、買取期間満了後の単価、2027年度以降の事業用(地上設置)の新規支援終了など、売電側には不確実な要素がある。地上設置の支援終了は屋根設置に直接は適用されない
売電とは|読み方と、FIT制度のなかでの位置づけ
売電は「ばいでん」と読みます。発電した電気を自分で使わずに、電力会社などへ販売することを指します。電気を買う側から見た「買電(ばいでん)」と読みが同じですが、向きが逆の言葉です。混同を避けるため、買う側を「電力購入」と書き分けることもあります。
売り方は2つに分かれます。発電した電気をすべて売るのが全量売電、自社で使ったうえで余った分だけを売るのが余剰売電です。本稿では、工場や倉庫の屋根に載せる産業用を対象に、このどちらでもなく「売らずに全部使う」完全自家消費型を中心に説明します。
以下は、沖縄地域・離島等供給エリアを除く2026年度の新規認定についての説明です(既にFIT認定を受けている設備の条件が変わるという意味ではありません)。売電の方法は1つではなく、FIT(固定価格買取制度)のほか、FIPや電力会社・小売事業者との相対契約もあります。FIT制度を利用して売電する場合に、価格の土台になるのがこの制度です。国が電源・規模の区分ごとに1kWhあたりの調達価格と調達期間を定め、その価格で買い取られます。資源エネルギー庁「買取価格・期間等」によると、2026年度は一定規模以上の新規認定がFIP制度のみとなり、50kW以上(地上設置・入札制度対象外)の9.6円/kWhはFIPの基準価格です。固定価格で買い取られるFITの単価とは性質が違い、そのまま固定の売電収入として計算することはできません。10kW以上50kW未満(地上設置)はFITで9.9円/kWhですが、FITの新規認定には原則として地域活用要件(自家消費等)があります。調達期間・交付期間は20年間(10kW未満は10年間)です。
そして工場や倉庫の屋根に載せる事業用太陽光は、地上設置とはまったく別の区分です。資源エネルギー庁「2026年度版 FIT・FIP制度ガイドブック」によると、2025年度下期の認定分から2027年度までは「初期投資支援スキーム」が適用され、事業用太陽光(屋根設置)は初期の5年間が従来比7割増の19円/kWh、6〜20年目が8.3円/kWhに設定されています。屋根設置は入札制度の対象外です。地上設置の9.6円を屋根置き設備の売電条件として当てはめることはできません。
ただし、この19円を発電量の全部に掛けられるとは限りません。同ガイドブックの注記には「10kW以上50kW未満の事業用太陽光発電のFIT新規認定には、自家消費型の地域活用要件を設定する」とあり(沖縄地域・離島等供給エリアを除く)、屋根設置であっても、FITで新規認定を受ける10kW以上50kW未満の区分は自家消費を行うことが前提です。19円が適用されるのは、その条件のもとで実際に買い取られる電力量です。50kW以上は屋根設置でもFIP制度の対象で、FIPの基準価格は固定の買取単価ではなく、実際の収入は売電契約とプレミアムによって決まります。本稿はこれらを踏まえ、工場・倉庫の屋根に載せる完全自家消費型を対象に、以下を整理します。
売電型と自家消費型の違い|収入になるか、買う電気が減るか
売電型(全量売電)は、発電した電気をすべて電力会社へ売る仕組みです。電気の販売代金は「売電量 × 契約上の売電単価」で決まり、FIT認定を受けた案件であれば、この単価が国の定める調達価格になります。FIPの場合、売電契約に基づく収入にプレミアムが加わります。一方、自家消費型(完全自家消費)は、発電した電気をすべて自社(自宅)で使い、「購入時の電気料金単価 × 自家消費量」の計算式で、どのくらい電気を買わなくて済んだのかを金額に換算します。
| 比べる観点 | 売電型(全量売電) | 自家消費型(完全自家消費) |
|---|---|---|
| 電気の行き先 | すべて電力会社へ販売 | すべて自社(自宅)で使用 |
| 計算式 | 電気の販売代金=売電量 × 契約上の売電単価(FIT認定案件なら調達価格) | 購入時の電気料金単価 × 自家消費量 |
| 効果の表れ方 | 売電収入が入る | 電力会社から買う電力量が減る |
同じ発電量でも、「いくらで売れるか」を基準にするか「いくらぶんの電気を買わずに済むか」を基準にするかで、金額の出方が変わることが読み取れます。なお本稿は完全自家消費型を対象に説明します。比較のために置く「売電型」は、制度価格の水準を示すための想定です(自家消費したうえで余った電力だけを売る「余剰売電型」という方式もあります)。
自家消費型の仕組み・メリット・導入前の注意点・3つの導入方法は自家消費型太陽光発電とは?仕組み・メリットと注意点、3つの導入方法の解説で通して確認できます。
単価はどう決まるのか|区分ごとの2026年度の水準
調達価格(FIT)・基準価格(FIP)は、事業が効率的に行われた場合に通常必要となるコストを基礎に、設備費・運転維持費・想定発電量・適正な利潤などを勘案して決まります。中立的な調達価格等算定委員会の意見を尊重し、経済産業大臣が決定する仕組みです。設備価格が下がれば必要な単価も下がるため、地上設置の区分では長期的に単価が引き下げられてきました(ただし50kW以上の地上設置・入札制度対象外は2025年度8.9円から2026年度9.6円へ上昇しており、一本調子の低下ではありません)。
一方で屋根設置は、導入を後押しするために逆の方向へ動いています。資源エネルギー庁「2026年度版 FIT・FIP制度ガイドブック」は、屋根設置太陽光を「比較的地域共生がしやすく、自家消費型で導入されることで系統負荷の小さい」電源と位置づけ、初期の回収を早める価格設定にしたと説明しています。2026年度の水準を区分ごとに並べると次のとおりです。
| 区分 | 制度 | 2026年度の単価 |
|---|---|---|
| 事業用・屋根設置(10kW以上50kW未満) | FIT | 19円(〜5年)/8.3円(6〜20年) |
| 地上設置(10kW以上50kW未満) | FIT | 9.9円 |
| 地上設置(50kW以上・入札対象外) | FIP | 9.6円(基準価格) |
| 住宅用(10kW未満) | FIT | 24円(〜4年)/8.3円(5〜10年) |
表はFITの調達価格とFIPの基準価格を並べたものです。沖縄地域・離島等供給エリアを除く2026年度の新規認定では、50kW以上は屋根設置・地上設置とも対象がFIP制度のみとなり、基準価格はそのまま受け取る金額ではなく、収入を算定する際の基準として使われます。実際にいくらになるかは売電契約とプレミアムによって決まります。入札制度の対象は250kW以上ですが、屋根設置区分は入札の対象外です。
屋根設置の初期5年間に限れば、地上設置の区分より単価が倍近く高く設定されています。6年目以降は8.3円に下がるため、期間を通した水準ではこの差は縮みます。最新の買取価格は資源エネルギー庁「買取価格・期間等」でご確認いただけます。
100kWhで比べる|屋根設置の売電単価と高圧の購入単価
ここでは実際の売電収入ではなく、屋根設置の制度価格と購入回避単価を比較します。1kWhの価値がどちらに寄っているかを見るための水準比較としてご覧ください。購入単価は本稿の試算前提として18.92円/kWhと置きます(ご自身の単価は電力会社の請求書の電力量料金でご確認ください)。
| 時期 | 屋根設置の制度価格 | 完全自家消費 |
|---|---|---|
| 初期5年 | 19円 × 100kWh = 1,900円 | 18.92円 × 100kWh = 1,892円 |
| 6〜20年目 | 8.3円 × 100kWh = 830円 | 同 1,892円 |
| 20年の平均 | 10.975円/kWh × 100kWh = 1,097.5円(約1,098円) | 同 1,892円 |
この仮定では、初期5年は8円差でほぼ拮抗し、6年目以降は購入回避額が制度価格を1kWhあたり10.62円、100kWhあたり1,062円上回ります。20年で均すと差は1kWhあたり約7.95円で、年間発電量が10万kWhなら年あたり約80万円に相当します(20年の単純平均であり、各年の差ではありません)。この試算が成り立つのは、毎年の対象電力量が同じで、全量を自家消費でき、回避できる購入単価が20年間18.92円で一定という仮定のもとです。割引現在価値は考慮していません。売電は収入、自家消費は購入電力量の減少という性質の違いがあり、基本料金の扱い、税の有無、設備費・維持費も含めていません。回避できる購入単価は契約種別や時間帯によって平均単価と一致するとは限らず、電気料金単価も変動が続いています。導入判断は個別の条件でご確認ください。
なお制度価格は認定年度ごとに決まるため、過去に認定を受けた設備の単価は上の表とは異なります。自社の設備がどの年度・どの区分で認定されているかは、事業計画認定の通知でご確認ください。
実際に電気代がいくら減るかは、設備の規模と電力の使い方によって変わります。削減額の考え方は自家消費型太陽光発電を導入した場合、実際にどれくらい電気代を削減できるのか?で解説しています。電気料金の高騰を受けて自家消費型太陽光発電の導入に至った企業の例は株式会社トレーダー様の導入事例をご覧ください。
2026年度以降、売電を取り巻く環境はさらに変化している
- 出力制御(出力抑制):再エネの発電量が需要を上回りそうな場合に、電力会社が出力を一時的に抑える仕組みです。九州本土では、2026年度に再エネ全体で6.9%程度の出力制御が見込まれています(九州電力送配電株式会社・2025年12月24日発表)。
- 事業用太陽光(地上設置)の新規支援終了:2027年度以降、事業用太陽光発電(地上設置・10kW以上)は規模を問わずFIT/FIP制度による新規支援の対象外となります(経済産業省2026年3月19日発表。2026年度の入札落札分は除かれ、既存の認定案件の支援が一斉に終わるという意味ではありません)。
出力制御の判断軸は系統への逆潮流と連系の条件で、系統へ逆潮流する設備が連系条件等に応じて対象になります。「逆潮流なし」で連系し系統へ電気を送っていない完全自家消費型の設備は、ここで説明する需給バランス調整のための出力制御の直接の対象にはなりません。売電契約と逆潮流の関係は逆潮流とは?で詳しく解説しています。出力制御の実施状況は資源エネルギー庁「なるほど!グリッド」出力制御についてでご確認いただけます。
これらは売電側の収入を左右する要素です。ただし出力制御の見通しは地域ごとに異なり、地上設置の新規支援終了は屋根設置に直接は適用されません。自社の設置区分と地域ごとに条件を確認する必要があります。個別の投資判断は設備条件や契約内容により異なるため、最新の一次情報や電力会社・EPC事業者への確認をおすすめします。
経済性以外の評価軸|スコープ2のCO₂削減
自家消費型が選ばれる理由は、経済性だけではありません。自家消費型太陽光発電で自社の電気をまかなうと、その分だけ電力会社から購入する電力量が減るため、通常はスコープ2の排出量が減ります。発電した電気の環境価値を証書などの形で外部へ売却していないことが前提で、実際の算定は設備の所有・契約の形態と採用する算定方法によって扱いが変わります。
スコープ2とは、他者から供給された電気・熱の使用に伴う間接排出を指します。買う電気そのものが減るため、前段の条件(環境価値を外部へ売却していないこと、採用する算定方法)に従って算定すれば、削減が自社の数字に反映されます。買った電気に伴う排出を減らす取り組みとして、結果が数字で示しやすい点が特徴です。
現場担当者の視点(事業部長 折原への取材より)
――なぜ、自家消費型が主流になってきたのでしょうか。
作った電気を売るより、自分たちで使った方が経済的だからです。
――経済面以外に、自家消費型が評価される理由はありますか。
自家消費は発電と使用(需要)が同一地点で完結するため送電ロスが少なく、逆潮流もほとんど発生しないので、系統の電圧変動も抑えられます(完全に無くなるわけではありません)。
――脱炭素の取り組みとしては、どう受け止められていますか。
さらに化石燃料発電を置き換える(発電しない)効果が、直接自宅や工場のCO₂削減に反映されるので、環境経営や脱炭素の取り組みとして分かりやすい成果を示せる点が高く評価されています。
恒電社は自家消費型太陽光発電のEPC(設計・調達・施工)事業者として、設備条件や契約内容ごとに異なる前提を確認したうえでご提案しています。
解説者
折原 恭平
インタビュアー
原澤耀
2022年から恒電社のマーケティングも担当し、電気や太陽光発電のことを、各関連分野のエキスパートに直接ヒアリングをしながら、できる限り分かりやすい表現と専門的な視点の両立を重視した情報発信に取り組んでいる。
よくある質問(FAQ)
Q1. FIT期間が満了したあと、買取単価はどうなりますか?
FIT期間(10kW未満は10年、10kW以上は20年が基本)が満了すると、その後の買取単価は電力会社・新電力各社が個別に設定する水準に切り替わります。過去の高い単価で認定された案件では大きく下がる例がありましたが、満了後の価格はその時点の契約先と契約条件によります。具体的な単価は各社の公式ページでご確認ください。
Q2. 屋根に設置する太陽光や住宅用も、2027年度以降は新規支援の対象外になりますか?
対象外となるのは事業用太陽光発電のうち地上設置・10kW以上の区分で、2026年度の入札落札分は除かれます。屋根設置・住宅用(10kW未満)は、初期投資支援スキームのもとで継続します(本稿で確認できているのは2027年度認定分までで、2028年度以降も同じ価格設定が続くという意味ではありません)。
Q3. 売電型と自家消費型で、設備の耐用年数の扱いは変わりますか?
変わる場合があります。法定耐用年数は設備の用途や事業の区分によって判定されるため、売電型と自家消費型で適用区分・年数が異なることがあります。国税庁の質疑応答事例にもとづく考え方は太陽光発電の耐用年数と減価償却で整理しています。
自家消費型太陽光発電の投資回収は、屋根の条件と電気の使い方で会社ごとに大きく変わります。恒電社では、御社の条件での概算シミュレーションから、社内で検討を進めるための材料づくりまでお手伝いしています。
この記事を書いた人
岩見啓明

