A. 家庭や工場などの設備から電力会社の送電線へ電気が流れ出す現象です。余剰売電型は申請と費用負担のうえで受け入れ、完全自家消費型は原則として発生させない構成にします。
判断の要点
- 逆潮流は「電気が普段と逆向きに出ていく」状態。発電量が施設の使用量を上回ると余剰電力が生じ、設備構成や制御によっては逆潮流となる
- 余剰売電型は、発生量の計画を電力会社に申請し、接続検討費用(22万円は高圧・特別高圧の検討料の実務水準)と工事費負担金を負担して接続する
- 完全自家消費型は、保護継電器(RPR=逆電力継電器)の設置が系統連系技術要件上の原則で、一律の義務ではない
- 発生した瞬間にPCSを止めるのがRPR、逆潮流が生じないようPCS出力を調整するのが出力制御ユニット、年間の余剰量を減らすのが蓄電池と役割が分かれる
逆潮流とは、電気が普段と逆向きに「出ていく」状態
通常は電力会社から家や会社へ電気が「入って」きますが、太陽光発電で余剰電力が生じると、その電気は逆方向に「出て」いきます。この電気の流れる向きが普段と逆になった状態が逆潮流です。

図は、電気が入ってくる向きと送電線へ出ていく逆潮流を並べたものです。
扱いは設備の型で分かれます。余剰売電型は逆潮流を前提とし、完全自家消費型は発生させない前提で設計します。
逆潮流は送電網に影響するのか——余剰売電では申請と費用負担で織り込む
余剰売電契約では、逆潮流が「このくらいの量で発生する」という計画を事前に申請し、その分の系統増強費用を負担して接続します。系統接続検討と工事費負担金によって設備強化が行われるため、電力会社側も想定済みです。小規模設備で他の利用者へ直接的な悪影響が生じることはほとんどありません。
自家消費を目的とする設備でも、余剰が技術的にゼロとは言えません。発電量が施設の消費量を上回った瞬間に余剰電力が発生し、上位電圧が許容範囲内なら系統へ流れ、超えそうならパワーコンディショナ(PCS)が出力を抑制するか、蓄電池へ充電します。ただし「逆潮流なし」の完全自家消費型では、次に述べるRPR等により逆潮流を発生させません。
逆潮流を止める仕組み——RPR・出力制御ユニット・蓄電池は役割が違う
完全自家消費型では、保護継電器(RPR=逆電力継電器)の設置が「逆潮流なし」契約における系統連系技術要件上の原則として求められています。逆潮流が発生した瞬間にPCSは強制停止するため、系統へ電気が送られ続けることはありません。
ただしRPRの設置は原則であって、一律の義務ではありません。発電設備容量が契約電力の一定割合以下である場合や、PCSの単独運転検出機能で確実に検出できる場合など、省略できる規定もあります。個別の要否は電力会社との系統連系協議でご確認ください。
一方、現行の太陽光発電用PCS単体には、逆潮流を自動的に抑制する機能はほぼ搭載されていません。防止には、需要側の負荷を計測してPCSの出力を指令する「出力制御ユニット」やHEMSコントローラなどが別途必要です。
| 手段 | 役割 | 効果が及ぶ範囲 |
|---|---|---|
| RPR(逆電力継電器) | 逆潮流を検知してPCSを強制停止させる | 発生した瞬間の遮断 |
| 出力制御ユニット・HEMSコントローラ | 消費電力を監視してPCSの出力を調整する | 系統へ流れる電流をゼロ(許容帯域内)に保つ |
| 蓄電池 | 昼間の余剰電力を貯蔵し、夕方や夜に放電する | 年間を通じた逆潮流の量 |
表のとおり、瞬間の遮断はRPR、逆潮流が生じないようにする出力調整は出力制御ユニットの役割です。発電を抑制すれば本来得られる電気が失われ、蓄電池には設備費・劣化費用がかかるため、どちらに寄せるかは費用の比較になります。蓄電池の価格は【蓄電池の価格は高いのか?】業界20年の専門家に聞く蓄電池の価格で解説しています。
余剰売電で発生する費用——接続検討費用と工事費負担金
余剰売電型で系統に接続する場合に負担する系統増強費用は、次の2つです。
- 接続検討費用:22万円は、高圧・特別高圧の系統連系における検討料の実務水準です。低圧(住宅等)の連系では、この区分自体が発生しないケースもあります。
- 工事費負担金:現在の指針では、受益者負担の考え方に基づき「特定負担」「一般負担」に区分されています(一般負担には上限4.1万円/kWの目安あり)。
個別の負担額・区分は、電力会社への接続検討の回答でご確認ください(例: 四国電力送配電 系統連系の手続き)。申請の流れ全体は太陽光発電設備の導入前に必要な「申請」とは何か?で解説しています。
「売る」か「使う」か——初期費用と、そのあとに効くコストで比べる
余剰電力があるということは「自分では使いきれない分」がすでにある状態です。比べるのは、余剰売電型(系統に流して買い取ってもらう)と完全自家消費型(系統に流さず出力制御や蓄電で対応する)のどちらが総コストを下げられるか、です。
| 比べる観点 | 余剰売電型 | 完全自家消費型 |
|---|---|---|
| 初期投資 | 接続検討費用・系統連系工事費負担金・計量機器の増設費 | これらの初期費用は不要 |
| そのあとに効くコスト | 回収可否はFITなどの買取単価と余剰電力量次第 | 出力抑制によるロス、または蓄電池の設備費・劣化費用 |
初期費用がかかるのは余剰売電型、完全自家消費型は抑制ロスか蓄電池のコストを負います。2つの型の違いは売電型太陽光発電と自家消費型太陽光発電の違いとは?、余剰の出方を左右する負荷の形は「業界ごとに異なる電力使用パターン」が太陽光発電設備の設計に与える影響をご覧ください。導入企業の例は【導入事例】武州製氷株式会社様が自家消費型太陽光発電を導入で紹介しています。
出力制御の拡大は、逆潮流ゼロの設備に影響するのか
逆潮流と混同されやすい制度に「出力制御(出力抑制)」があります。再生可能エネルギーの発電量が需要を上回りそうな場合に、電力会社が発電設備の出力を一時的に抑える仕組みで、2022年4月からは旧ルールの500kW未満の太陽光発電設備も対象に加わりました。2026年3月1日には、東京電力パワーグリッド管内(関東エリア)でも初めて再生可能エネルギーの出力制御が実施されたと報じられています(資源エネルギー庁・報道各社)。
出力制御の対象になるのは、電力会社へ電気を送る(売電する)契約を結んでいる設備です。完全自家消費型でRPRにより逆潮流ゼロを維持している設備は、系統へ電気を送っていないため出力制御の直接対象にはなりません。出力制御が全国的に拡大する局面では、「売るより使う」の経済的なメリットが今後さらに強まる可能性があります。
最新の実施状況は資源エネルギー庁「なるほど!グリッド」出力制御についてと各電力会社の公式ページでご確認いただけます。
現場担当者の視点(事業部長 折原への取材より)
――自家消費が目的でも、余った電気が外へ流れることはあるのですか?
自家消費が目的でも、発電量と使用量が完全に一致するわけではないので、晴天の昼間などに逆潮流が起きやすくなります。
――蓄電池を置けば逆潮流を減らせるのですか?
蓄電池は逆潮流を抑える用途としては使用できません。一方で蓄電容量が十分なら、昼間の余剰電力を貯蔵し、夕方や夜に放電して自家消費を増やすため、年間を通じて逆潮流を減らすことは可能です。
――余った電気を売るのと自分で使うのでは、どちらが得になることが多いのでしょうか?
近年はFIT単価の低下と接続費用の高止まりが同時に進んでおり、中小規模の設備では「売るより使う(完全自家消費)」が経済的に有利となるケースが増えています。ただし、案件規模や負荷パターン、蓄電池の有無で条件は大きく変わるため、初期費用と長期のキャッシュフローを比較した個別試算が不可欠です。
恒電社は自家消費型太陽光発電のEPC(設計・調達・施工)を担当しており、RPRの要否や工事費負担金の区分は電力会社との系統連系協議・接続検討の回答で確認します。
解説者
折原 恭平
インタビュアー
原澤耀
2022年から恒電社のマーケティングも担当し、電気や太陽光発電のことを、各関連分野のエキスパートに直接ヒアリングをしながら、できる限り分かりやすい表現と専門的な視点の両立を重視した情報発信に取り組んでいる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「逆潮流」の読み方は?
「ぎゃくちょうりゅう」と読みます。余剰電力が送電線へ流れ出す現象を指す用語です。
Q2. 逆潮流の量は、どうやって測っているのですか?
スマートメーター(電力量計)で計測します。現在普及している住宅用(低圧)のスマートメーターは「入ってくる量」と「出ていく量」を1台で別々に計測できる双方向計量型で、電流の向きを常時検知し、30分ごとなどの単位で逆潮流(売電電力量)を記録します。高圧で受電している工場や大型ビルでは、高圧用メーターが単方向計量を前提とするため、買電用と売電用の2台に分けて設置します。
Q3. 「逆潮流あり」「逆潮流なし」の契約とは、何が違うのですか?
「逆潮流あり」は、電力会社への売電(余剰売電など)を前提とした契約区分です。「逆潮流なし」は完全自家消費型で、逆潮流を発生させない区分にあたり、契約上も禁止されます。
出力制御や逆潮流の扱いは、契約区分と設備構成によって変わります。完全自家消費型にするかどうかを含め、御社の受電設備を踏まえた設計の考え方からご説明できます。導入方法や現地調査から運用開始までの流れは、法人向け自家消費型太陽光発電のサービス案内をご覧ください。
この記事を書いた人
岩見啓明

