判断の要点
経済産業省が推奨している太陽光発電設備の点検頻度は「半年に一回」です。ただしこの目安と、次章の保安規程にもとづく頻度の決め方は、主に出力50kW以上の高圧・特別高圧設備(自家用電気工作物)に関する内容です。
出力の区分によって、適用される制度と目安は次のように分かれます。
| 設備の区分 | 制度上の位置づけ | 点検頻度の目安 |
|---|---|---|
| 出力50kW以上5,000kW未満(電気主任技術者の外部委託承認を受けている設備) | 保安規程の届出と電気主任技術者の選任が必要 | 国の運用基準上、年2回以上が一つの目安 |
| 出力10kW以上50kW未満(小規模事業用電気工作物) | 技術基準適合維持義務と基礎情報の届出は必要。保安規程の届出や電気主任技術者の選任までは義務付けられていない | 自主点検が基本 |
出力と委託形態によって義務の範囲が異なり、点検頻度の決まり方も変わることが読み取れます。小規模事業用電気工作物は、2023年3月の電気事業法改正で新設された区分です。適用される制度の詳細は経済産業省「太陽電池発電設備を設置する場合の手引き」や所管の産業保安監督部、電気主任技術者にご確認ください。
制度上の目安とは別に、実務で最も多いのは年に一回の点検(年次点検)です。台風被害を懸念される場合は、年一回の年次点検を、台風シーズンが過ぎた秋頃に設定するケースが多くあります。
出力50kW以上の自家用電気工作物では、お客様、またはお客様が委託する電気主任技術者が、産業保安監督部に「保安規程」を届け出ます。保安規程には太陽光設備の点検頻度などを記載するため、実際の頻度は規程を作成する電気主任技術者が判断して決定します。
たとえば恒電社が「年に一回の点検」を提案しても、電気主任技術者が「半年に一回は必要」と判断すれば、その頻度が採用されます。
メンテナンスは外観検査と電気的な測定の2つに分かれます。
外観検査では、視覚的に太陽光パネルが割れていないか、汚れがひどくないかを確認します。あわせて、パネルを固定している金具やビスの緩み、架台の破損もチェックします。目視で判断できる内容ですが、割れ方や緩みの程度を見極めるには、見る人に一定の知識があることが前提です。
電気的測定では、設備全体の電気回路に不具合がないかを検査します。正常時に実施するのは基本的に次の3項目です。
| 測定項目 | 測定する対象 | 分かること |
|---|---|---|
| 電圧測定 | 発電していない状態でのパワーコンディショナと各ストリング回路(太陽光パネルの連結された回路)の電圧 | 回路の一部が正常に機能していない可能性 |
| 内部抵抗の測定 | 専用の機械で検査用の信号電流を流したときの、直流回路内の内部抵抗 | 壊れたパネルが抵抗となって発熱するホットスポット現象などのパネル破損の兆候 |
| 絶縁抵抗の測定 | 規定の電圧をかけた際の、電気を外に漏らさない力の残り具合 | 漏電のリスク |
3項目は単独で見るのではなく外観検査も含めて総合的に確認し、異常が見つかった場合はさらに詳細な調査を行います。
電圧測定では、たとえば1枚あたり10Vのパネルが14枚直列であれば、通常は140Vになります。本来140Vあるはずのストリングが100Vしか出ていない場合は、4枚分のパネルが機能していない可能性があります。
現地で回路ごとに電圧を測ると、設計上の値との差が数値で表れます。
内部抵抗は、壊れているパネルがあるとその部分が抵抗となって発熱を起こすため、値が上昇します。毎年の測定値を記録し、前年との比較で明らかな変動があれば詳しく調べる仕組みです。
絶縁抵抗の値には、電圧の区分ごとに「何Ω(オーム)以上」という基準が決まっています。規定の電圧をかけた際の値が基準を下回ると漏電のリスクがあるため、より詳細な調査が必要になります。
機能していないパネルがあると分かった場合は、次の順序で原因を特定します。
温度の異常は画像に現れるため、目視では気づけない発熱箇所を絞り込めます。
見た目に問題がなくても、クラスターやジャンクションボックスの故障で電気が通らなくなっていることがあり、壊れ方まで踏み込んだ調査が必要です。パネルの上に当てるスキャナのような計測器や、金属探知機のように電気の通り道を音で知らせる機械も使います。
サーモグラフィカメラをドローンに搭載して撮影する方法もあります。
外観検査と、電圧・内部抵抗・絶縁抵抗の測定結果を総合的に確認することで、原因やリスクが明確になります。経年劣化については、関連記事太陽光パネルの経年劣化率は何%か?も参考になります。
関連記事では、太陽光パネルが破損した場合の対応を解説しています。
メンテナンス費用は発電設備の規模で変わります。太陽光パネルの枚数やパワーコンディショナの台数、測定する項目や台数が増えれば、その分費用も増加するというシンプルな仕組みです。
電気的な測定を怠ると発電不良に気づけず、太陽光発電設備のメリットが活かされない状態が続く可能性があります。
恒電社が導入した発電所には遠隔監視装置を設置しており、お客様がリアルタイムで発電状況を確認できます。ただし、天気が悪かったために発電量が少ないのか、トラブルが原因で少ないのかは、監視の数値だけでは切り分けられません。発電量の減少が微細な場合は異常に気づきにくいため、健康診断のような定期点検で状態を記録しておくことが重要です。
発注先を保守体制の観点から選ぶ視点はEPC事業者の選定における「保守」の重要性と導入企業が業者を選んだ理由をまとめたコラムが、駐車場に設置した設備の点検はソーラーカーポートのメンテナンスが参考になります。
――点検頻度や点検内容は、誰が決めるのですか?
我々のようなEPC企業はあくまで推奨までにとどまります。最終的な点検頻度や点検内容の決定は、お客様と電気主任技術者様との間で決めていただく必要がございます。
――大きな地震や記録的な豪雪があった場合は、どう対応しますか?
外観検査や電気的な点検も含めて、お客様からご要望があれば随時「スポット点検」を行っています。ただし実際には、スポット点検の依頼はそれほど多くはありません。
――点検を怠るとどういったリスクがありますか?
一番恐ろしいのは、外観検査を怠った結果、安全面での危険性に気付けないことです。例えばボルトの緩みに気づけなかった場合、台風が来た際に太陽光パネルが飛んでしまい、人に当たるなどの事故につながる可能性があります。
恒電社では、年次点検・スポット点検として外観検査と電気的測定を行っています。施工後の監視・点検を含めた対応については、恒電社の施工から保守までの対応体制をご覧ください。メンテナンスをご希望の場合はご相談ください。
交換の要否は、割れ方や絶縁抵抗値の状況によります。絶縁抵抗が著しく低下している場合は、電気が漏れて漏電している可能性があります。外観検査と各測定結果を総合的に確認し、原因やリスクを調べます。
必ずしもそうではありません。ケースバイケースで、設置から数年経過していても非常に健康的な状態を維持しているパネルもあります。実際の状態は点検の測定値で確認します。
完全に止まるとは限りません。バイパスダイオード(発電回路を迂回させる素子)が正常に作動すれば、機能していないパネルを迂回して残りのパネルだけで発電を続けます。1枚のパネルは3つのクラスターで構成され、1つが故障しても残りの2つが機能を維持します。
発電量の低下や機器の不具合は、気づくのが遅れるほど損失が積み上がります。恒電社は太陽光発電設備の監視・点検・パネル洗浄などのO&Mを提供しています。導入後の維持管理まで含めて、お気軽にご相談ください。