太陽光パネルの経年劣化率は何%か?設計時にはどのように劣化を見込むべきか?

A. 太陽光パネルの経年劣化率は、恒電社が設計で参照する仕様書・保証値では年0.3〜0.9%程度が目安で、製品やメーカーによって差があります。資源エネルギー庁は、住宅用太陽光に関する資料で、太陽光パネルは一般的に20〜30年間、あるいはそれ以上発電ができるものだとしています。

判断の要点

  • 劣化率の具体的な数値はモジュール・メーカーによって異なり、単一の政府基準値が定められているわけではありません(国の発電コスト検証でも、一意に特定することの困難さが指摘されています)
  • 設計では、採用するパネルの仕様書に記載された劣化率と過去の実績値をもとに、長期の発電量を試算します
  • 発電量が落ちる原因は経年劣化だけではなく、機器の不具合もあります。恒電社が点検で確認してきたケースでは、ガラス面の傷みよりも基板や部品といった電気回路の不具合が目立ちます
  • 発電量が下がっても直ちに交換になるわけではなく、低下の幅を確認し、点検で不具合のある部品を探したうえで判断します

太陽光パネルは何年使えるのか(寿命の目安)

先に年数の目安から整理します。公的資料には、製品寿命の目安や、発電を継続できる期間について次の記述があります。いずれもその年数で一律に発電が止まったり、交換が必要になったりするという意味ではありません。

資料示されている年数どういう文脈での数字か
環境省「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルのあり方に関する検討会」中間取りまとめ(2024年1月)約20〜30年程度使用済みパネルの排出量がいつ増えるかを検討する前提として示された年数
資源エネルギー庁「2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?」約25〜30年製品寿命としての記載
資源エネルギー庁「住宅用太陽光発電設備のFIT買取期間終了に向けた対応」(2018年9月12日)20〜30年間、又はそれ以上住宅に設置されたパネルを対象にした記述

劣化率についても、公的な検証では一意の数値は置かれていません。資源エネルギー庁の発電コスト検証ワーキンググループは、パネルの出力劣化を「設備利用率の実績や一意に特定することの困難さ等をふまえて、考慮しないことを基本」としたうえで、参考ケースとして年0.5%の劣化率を用いています(令和7年2月6日とりまとめ)。

この記事で目安としている年0.3〜0.9%は、恒電社が設計で参照するパネル仕様書や保証値に記載される範囲です。

なお、メーカーが示す出力保証の年数は製品ごとに異なります。保証は「一定の出力を下回った場合にどう対応するか」の取り決めであって寿命の宣言ではないため、検討している製品の仕様書で個別に確認します。

使用済みパネルの排出については、環境省が2026年4月3日の発表で「2030年代後半以降に太陽光パネルの排出量が顕著に増加し、年間最大50万t程度に達すると予想」としています。設備の更新や処分が実務として増えてくるのは、これからの時期にあたります。

20年後の発電量はどこまで落ちるのか

経年劣化は、発電量の減少というかたちで表れます。どの程度の減少を見込むかは設計の前提になるため、恒電社では20年間の発電シミュレーションをご提示する際に、あらかじめ経年劣化を考慮した数値を反映しています。たとえば年0.4%ずつ発電量が減少すると仮定し、20年後にはどの程度の発電量になるかという予測をお示しする形です。

初期値に対して毎年0.4%ずつ低下すると仮定した単純な計算では、累積の低下は約8%程度にとどまり、20年後も初期出力の9割超を維持できる計算になります。劣化率は製品により異なるため、あくまで設計時の試算例です。実際の設計では、メーカーの保証値や過去の分析結果を参考に設計上の劣化率を設定し、個別にシミュレーションを行います。

この劣化率を加味した20年間の発電シミュレーションは、ご契約の前にお客様へお示ししています。電気設備である以上は経年劣化が起こるという前提をご理解いただいたうえで、ご契約をお願いするためです。導入判断に使う試算の考え方は自家消費型太陽光発電の「投資回収年数」の試算方法で解説しています。

「耐用年数17年」は寿命ではなく税務上の期間

寿命を調べていると「耐用年数17年」という数字に行き当たります。これは設備が発電できなくなる年数ではありません。法定耐用年数は減価償却の計算に使う税務上の期間で、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表で定められているものです。帳簿上の償却が終わったあとも、設備が稼働していれば発電は続きます。

17年という年数は、別表第二「電気業用設備」のうち「その他の設備」の「主として金属製のもの」に該当する場合の年数です。売電を目的とする設備がこの区分で扱われますが、自家消費型では電気の使われ方によって扱いが分かれます。

国税庁の質疑応答事例は「その設備から生ずる最終製品(電気)を専ら用いて他の最終製品が生産される場合」という条件を置いており、倉庫業や卸売業のように最終製品を生産しない業種には同じ論理が当てはまりません。自社の場合にどの年数で計算するのかは、税務の専門家にご確認ください。

耐用年数の区分が業種でどう分かれるのかを条件つきで確認したい方は、太陽光発電の耐用年数と減価償却の考え方をご参考ください。

設計に使う劣化率は、どこで確認するか

設計では、パネルや製品の仕様書にある経年劣化率を使って計算し、その数値をもとにシミュレーションを作成します。メーカーが提示する「年間○%の出力低下」を前提として、何年後にどの程度の発電量になるかを試算する形です。この出力の低下率は「減衰率」とも呼ばれ、パネルごとに指標が示されています。

劣化率の具体的な数値はモジュール・メーカーによって異なり、単一の政府基準値が定められているわけではありません。NEDO「太陽光発電設備の評価・回復手法の技術情報および利用ガイド」でも、経年劣化率は個別モジュールの実測値ではなく、過去の分析結果やメーカーの保証値に基づいて設定するのが一般的とされています。

参照するもの設計での使い方
採用するパネルの仕様書記載された経年劣化率を、試算の基本的な前提として使う
メーカーの保証値・過去の分析結果NEDOのガイドが、劣化率の一般的な設定根拠として挙げているもの
過去の実績値長期の発電量を試算する際の参考にする

いずれも導入前に個別のモジュールを実測した値ではなく、設計の段階で手に入る資料から劣化率を決めていることが読み取れます。設計時には、メーカーの保証値や過去の分析結果を参考に劣化率を設定し、長期の発電量を試算します。年間どれだけ発電量が減っていくかを予測しておくことで、長期的に効率よく発電できる設計につなげています。

経年劣化と電気回路の不具合は分けて見る(恒電社の点検所見)

経年劣化と聞くと、パネルがボロボロになる、割れる、剥がれるといった状態を思い浮かべる方が多いかもしれません。恒電社が点検で確認してきたケースでは、ガラス面の劣化よりも、基板や部品など電気的な回路の不具合によって発電量が落ちているほうが目立ちます。

こうした電気回路の不具合と、パネルの経年による出力低下は分けて確認します。外から見て分かる状態だけでは判断できないところが、発電量が落ちた原因の分かりにくさにつながっています。

劣化に気づく手がかりと、点検でできること

経年劣化への備えは、メンテナンスの話と切り離せません。経年劣化を完全に防ぐことは難しく、現実的な備えは監視・点検で状態を把握し、原因に応じて対応することです。

対策の置きどころは「劣化の進行を止めること」ではなく「不具合を早い段階で特定すること」になります。定期的なメンテナンスで不具合の箇所を早期に特定することが重要なのは、このためです。点検の頻度と費用の考え方は太陽光発電設備のメンテナンスの頻度と費用で解説しています。

交換するか、様子を見るかの判断

発電量の低下が確認されても、深刻な状態でない限りは交換せず、そのまま使い続けるという選択もあります。交換するかどうかは、最終的にお客様の判断に委ねられます。判断は次の順序で進めます。

  1. 年間の発電量が減っているか、どの程度低下しているかを確認する
  2. 点検で不具合のある部品を探す
  3. 深刻な状態でなければ、交換するかどうかをお客様が判断する

電気設備である以上、太陽光発電設備には経年劣化が起こります。劣化を織り込んだ長期の発電シミュレーションを契約前に確認しておくことが、導入後の想定とのズレを防ぎます。自家消費型太陽光発電そのものの仕組みは自家消費型太陽光発電とは何かを解説したコラムをご覧ください。

寿命を迎えたあとにかかる費用と、2026年成立の再資源化法

寿命の話は、最後に設備を手放すときの費用とつながっています。廃棄物処理法のもとでは、排出する事業者等が処理責任を負うのが前提です。誰がその費用を負担するかは契約の組み方によって変わるため、導入の検討段階で処分時の費用と負担者の取り決めを確認しておきます。

費用の水準としては、環境省が9事業者を対象に行った調査で、リサイクル費用が8,000〜12,000円/kWに分布していたとされています(一般的な太陽光パネルを250W/枚・20kg/枚と仮定し、解体撤去と収集運搬を除いた費用)。埋立処分費用については、同省の別資料で2,000円/kW程度からと示されています(太陽光発電設備リサイクル制度小委員会 第10回資料、2026年1月23日)。

いずれも資料上の参考水準で、実際の見積額ではありません。撤去工事や収集運搬の費用は別に見込む必要があります。

制度面では、2026年5月29日に「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」(再資源化法)が成立し、6月5日に公布されました。主要な規定は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内で、政令で定める日から施行されます。その施行日は2026年9月時点で決まっていません。

この法律の対象となる太陽電池のうち、収益事業で使用している、または使用していたものは、売電しているかどうかにかかわらず「事業用太陽電池」として扱われます。対象となる太陽電池の種類や機器の重量にも政令で条件が置かれるため、あらゆるパネルが自動的に該当するわけではありません。

また、届出義務がかかる「多量」の重量要件は2026年9月時点で政令が定められておらず、自社が該当するかを現時点で断定することはできません。

対象になる設備の範囲と費用負担の議論を詳しく知りたい方は、太陽光パネルのリサイクル義務化で対象になる設備と費用で解説しています。撤去工事そのものに含まれる作業と部材の処理の選択肢は、耐用年数を過ぎた太陽光発電設備の撤去費用で確認できます。

現場担当者の視点(事業部長 折原への取材より)

――お客様が経年劣化に気づくとしたら、何を見ればよいですか?

お客様にとって最も分かりやすい指標は、年間の発電量が減っているかどうかです。

――発電量が下がったら、すぐに交換が必要になりますか?

ただし、経年劣化が進んだからといって、必ずしもパネル交換に直結するわけではありません。

――経年劣化の進行を遅らせる方法はありますか?

正直に申し上げて、経年劣化自体を根本的に防ぐのは難しいです。

恒電社では、経年劣化を考慮した発電シミュレーションをご提示し、ご理解いただいたうえでご契約をお願いしています。

解説者

折原 恭平
株式会社恒電社 エネルギーマネジメント事業部

折原 恭平

金融機関や信用調査会社での営業経験を経て2018年に恒電社へ入社し、法人営業を担当。2022年よりエネルギーマネジメント事業部長として営業・施工管理の管理者として組織改善に携わっています。

インタビュアー

原澤耀
合同会社HARAFUJI

原澤耀

合同会社HARAFUJI・COO。マーケティングを中心に、企業の戦略および戦術支援事業に従事。
2022年から恒電社のマーケティングも担当し、電気や太陽光発電のことを、各関連分野のエキスパートに直接ヒアリングをしながら、できる限り分かりやすい表現と専門的な視点の両立を重視した情報発信に取り組んでいる。

よくある質問(FAQ)

Q1. 劣化率の数値は、いつ時点のものとして見ればよいですか?

恒電社が設計で参照するパネル仕様書・保証値に記載される範囲としての目安です。最新の製品では情報が変わっている可能性があるため、導入時には採用するモジュールの仕様書に記載された数値が判断の基準になります。製品やメーカーによって差があるため、別の製品の数値がそのまま当てはまるとは限りません。

Q2. 提案されるパネルは、複数の製品から選べますか?

恒電社では、最も適していると考えるパネルを選定し、その1種類をご提案しています。劣化率も、そのパネルの仕様書に記載された数値をもとに試算します。複数の製品の劣化率を比べたうえで選んでいただく形ではありません。

Q3. 発電量が下がる原因は、経年劣化だけですか?

経年劣化のほかに、パネルの破損による発電量の低下もあります。発電量が落ちている場合は、点検で不具合のある部品をいち早く見つけることが対応の起点になります。破損した場合の対応は太陽光パネルが破損した場合の対応で解説しています。

この記事を書いた人

Iwami
株式会社恒電社

岩見啓明

恒電社ではマーケティング(動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告)に加え、人事やインサイドセールスなど、事業部を横断して活動。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴を持つ。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2024年に第二種電気工事士資格を取得。≫プロフィールはこちら

発電量の低下や機器の不具合は、気づくのが遅れるほど損失が積み上がります。恒電社は太陽光発電設備の監視・点検・パネル洗浄などのO&Mを提供しています。導入後の維持管理まで含めて、お気軽にご相談ください。

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  • CO2の削減

まずは 発電シミュレーション から

発電シミュレーションと
導入後の発電量の比較 例
業種
食品流通業
条件
導入時期:2023年3月
パネル枚数:345枚
設備容量:143.175kW
パネル設置面積:680㎡
屋根面積:3,710㎡
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