判断の要点
雷によって太陽光発電設備に影響が出る場合を、この記事では大きく2つのパターンに分けて説明します。どちらのパターンかによって、起こりやすさも被害の出方も変わります。
| パターン | どう影響するか | 太陽光発電設備での発生 |
|---|---|---|
| 直撃雷 | 雷が対象物に直接落ちて破損させます。直撃した場合は、太陽光発電の設備が破損するおそれがあります | 恒電社では、太陽光パネルへの直撃雷は聞いたことがありません |
| 誘導雷 | 木や電柱などの近くへの落雷に伴って配線などに雷サージが生じ、設備に影響を及ぼす場合があります(この記事では、こうした周辺への落雷の影響を便宜上「誘導雷」として説明します) | 恒電社が把握しているトラブルでは、この誘導雷によるものが多く見られます |
表から読み取れるのは、恒電社の経験を踏まえると、パネルへの落雷そのものだけでなく、周囲に落ちた雷の影響が設備に及ぶ誘導雷にも備える必要があります。恒電社の現場経験では、雷は木や電柱、建物の避雷針など、より高い場所に落ちるケースが多いと捉えています。
雷によるリスクを完全にゼロにすることは難しいものの、避雷対策やアース(接地)処理、SPD(雷サージ保護装置)の設置などで、一定の予防策を講じることは可能です。パネルそのものが割れた場合の対応は太陽光パネルが破損した場合の対応の解説、地震が起きた場合の考え方は太陽光パネルを設置した施設で地震が起きた場合の解説で紹介しています。
恒電社の経験では、誘導雷で影響を受けるのは、太陽光パネルよりもパワーコンディショナー(PCS:Power Conditioning System)であるケースが多く見られます。太陽光パネルで発電した直流電力(DC)を交流電力(AC)に変換し、建物内で使用できるようにする装置で、発電した電気を自社の建物で使う仕組みは自家消費型太陽光発電の基礎と工場に導入するメリットの解説で紹介しています。
パワーコンディショナーには、設備構成によって、主に次のようなケーブルが接続されています。
恒電社の経験では、このうち発電状況をモニタリングする通信系統が雷の影響を受けて破損するケースが多く見られます。NEDOのガイドラインも、雷による事故電流の経路は必ずしも明確ではないとしたうえで、バイパスダイオードや逆流防止ダイオードの短絡故障、パワーコンディショナのスイッチング素子の故障・焼損などが確認されているとしています。その結果、パワーコンディショナー本体の交換や、監視装置の修理・交換が必要になるケースが発生します。通信系統が被害を受けると、発電状況を監視できなくなるほか、設備構成や故障箇所によっては発電設備の運転に影響する場合があります。
設備全体の点検の頻度と費用については、太陽光発電設備のメンテナンスの頻度と費用の解説で解説しています。
誘導雷への備えとしては、各通信機器の入り口にSPD(Surge Protective Device:サージプロテクトデバイス)を設置する対応策があります。雷などの突発的な過電圧(サージ電圧)が電気設備に侵入し、機器や配線にダメージを与えるのを防ぐための保護装置で、雷サージ保護装置とも呼ばれます。
ただし、SPDを付けていれば100%防げるわけではありません。アース(接地)処理などの避雷対策と組み合わせても、雷によるリスクを完全にゼロにすることは難しい、という前提で設備を考えることになります。
NEDOのガイドラインでは、太陽光発電設備の雷害対策は、雷電流の流入を防ぐ外部LPS(外部雷保護システム)と、保護する設備と関連設備・外部電源との電位差による影響を抑える内部LPS(絶縁や等電位ボンディング)を合わせて施工することが基本とされ、SPDの選定・設置はJIS C 5381-31:2020およびJIS C 5381-32:2020を参考にすることが望ましいとされています。
避雷針を含む避雷設備も対策の一部ですが、避雷設備だけで完全に防げるわけではありません。避雷設備があっても、雷の影響を完全に防げるわけではありません。
NEDOのガイドラインは、屋上設置で建物に避雷設備がある場合、建物の鉄骨や鉄筋に直接雷電流が流入するため架台にも流入する可能性があるとして、太陽光発電設備へ雷電流を極力流さない設計が必要としています。対策例として、建物用の外部LPSと太陽光発電設備用の架台を接続しない、パワーコンディショナや接続箱を架台に設置しない(または絶縁する)、雷電流が流れやすい建物の端部から架台を離す、受変電設備の入力側に耐雷トランスを設置する、などが挙げられています。
万が一に備えるという意味では、火災保険や動産総合保険などの保険に加入していただくことも有効な手段のひとつです。誘導雷によってパワーコンディショナーなどの設備が破損した場合でも、保険によって修理・交換費用がカバーされる可能性があるため、恒電社では導入時にあわせてご検討いただくようご案内しています。
火災保険や動産総合保険による補償の可否・範囲は、保険会社や契約内容によって異なります。設備を設置したあとの建物側の保険料や耐用年数の扱いは、太陽光発電設備の設置が建物の耐用年数や保険料に与える影響の解説で扱っています。
――太陽光パネルに雷が直接落ちたケースはありますか?
ただ、太陽光パネルに雷が直接落ちたというケースは、これまで私たちも聞いたことがありません。多くの場合、雷は木や電柱、建物の避雷針など、より高い場所に落ちます。
――誘導雷で壊れたケースは、あったのでしょうか?
はい、実は毎年のように起こっています。ただし壊れるのは太陽光パネルではなく「パワーコンディショナー(PCS)」が多いです。
――誘導雷は、防ぎようがないのでしょうか?
一応対策としてSPD(サージプロテクトデバイス)を各通信機器の入り口に設置する対応策はあります。ただ、SPDを付けていれば100%防げるわけではありません。
恒電社では、施工時のアース(接地)処理やSPDの設置といった予防策に加えて、誘導雷で設備が破損した場合に備える保険の検討も、導入時にあわせてご案内しています。
恒電社では太陽光パネルへの直撃雷を聞いたことがない一方、誘導雷による故障は毎年のように経験しています。まれな事象という前提ではなく、避雷対策やアース(接地)処理、SPDの設置といった予防策を講じておく対象として考えます。
SPDや避雷設備を設けても、雷による被害を100%防げるものではありません。予防策で被害の可能性を下げたうえで、それでも防ぎきれなかった場合の修理・交換費用に備える手段として、保険の併用も検討できます。
カバーされるとは限りません。補償の対象となる原因や免責事項は契約によって異なり、雷による損害でも補償されるとは限りません。ご加入の保険会社や代理店に事前の確認をおすすめします。
雷・台風・地震などへの備えは、設計と施工の内容に大きく左右されます。リスクを設計にどう織り込むか、気になる点からご相談いただけます。