A. 代表的な破損・故障として、物理的な破損、ホットスポット、クラスター断線、ジャンクションボックスの故障が挙げられます。点検で原因を切り分け、安全性を最優先に、発電損失や費用、設備の用途を踏まえて修理や交換を判断します。
判断の要点
- 多いのは雹(ひょう)や鳥による物理的な破損と、影や鳥の糞によって一部が発熱する「ホットスポット」です。
- 3つあるクラスターのうち1つが機能しなくなる「クラスター断線」では出力が大きく低下するため、メーカーの出力保証を使って交換できるケースが多くなります。
- 製品代は保証でカバーされても、交換に伴う工賃や手数料はお客様のご負担となる場合があります。
- 破損が激しく感電の恐れがあるなど、安全面の問題が大きいケースでは交換を強く推奨します。判断軸は売電専用の設備と自家消費型の設備で異なります。
代表的な破損・故障の種類と、起きること
太陽光パネルの故障にはさまざまな種類がありますが、ここでは代表的なものを原因と現れ方で整理します。種類によって、発電が止まるのか、出力が落ちるだけで発電が続くのかが変わります。
| 故障の種類 | 主な原因 | 何が起きるか |
|---|---|---|
| 物理的な破損 | 雹(ひょう)、鳥が石を落とす | パネルが割れる |
| ホットスポット | 鳥の糞の付着、電柱などによる常時の影 | 一部のセルが発熱し、最終的にセルが壊れる |
| クラスター断線 | ホットスポットによる回路の断線など | 全体の出力がおよそ3分の2に低下する |
| ジャンクションボックスの故障 | 経年劣化、製品不良、物理的破損 | 電気が流れなくなる場合も、微弱に発電する場合もある |
表のとおり、クラスター断線とジャンクションボックスの故障は発電が完全には止まらないことがあり、点検時の測定で故障箇所を絞り込みます。以下、種類ごとに仕組みと対応を説明します。
ホットスポット:影と鳥の糞が発熱を生む
パネルにはセルと呼ばれる太陽電池が詰まっていて、それらが直列でつながっています。その一部に影がかかると、その部分だけが発電できなくなり、抵抗が生じます。この抵抗が発熱の原因となり、最終的にセルが壊れます。これがホットスポットです。
発生しやすいのは、パネルの上に鳥の糞が付着している場合や、近くに電柱があって常に影が一部にかかっている場合です。故障箇所の確認には、ドローンに搭載したサーモカメラを使用することがあります。

サーモカメラで撮影するとホットスポットが赤く表示されるため、故障箇所を特定しやすくなります。
予防は2点です。影がかからないように設置することが大前提で、完全に防ぐことが難しい鳥の糞は定期的な洗浄や清掃で早めに取り除きます。
クラスター断線:出力がおよそ3分の2に落ち、保証の対象になりやすい
パネルの内部は3つの「クラスター」(電池のグループ)に分かれています。クラスターは直列に接続され、それぞれにバイパスダイオードという迂回回路が並列に入っています。「クラスター故障」も同じ意味で、クラスター自体が電気的に壊れた状態、または回路が断線した状態を指します。

1つのクラスターが機能しなくなっても、残りの2つはバイパスダイオードによって稼働し続けるため、全体の出力はおよそ3分の2に低下します。
ホットスポットで回路の一部が切れると、クラスターが故障する場合があります。なお、バイパスダイオード自体がショートすると、1つのクラスターの停止にとどまらず、すべてのクラスターが機能しなくなることもあります。
メーカーの出力保証との関係
一般的にパネルメーカーは10〜20年の出力製品保証を提供しています。たとえば10年目には82%、20年目には71%程度の出力が保証されるのが一般的で、400Wのパネルであれば10年経過後に328W、20年経過後に284Wが保証されるイメージです。
ただし、出力保証の年数・水準はメーカーや製品の販売時期によって異なります。2026年現在では20〜25年の出力保証が主流となっており、30年の製品もあります。実際の保証条件は必ずお手元の保証書でご確認ください。出力低下の目安については太陽光パネルの経年劣化率の解説もご覧ください。
クラスター断線を起こして3つのうち1つが発電しなくなると、出力は66%に落ち込みます。そのためメーカーの保証条件に適合する可能性が高く、保証対象となるケースが多いです。
ジャンクションボックスの故障:壊れ方で影響が変わる
ジャンクションボックスは、パネルの裏側にある黒いボックスです。プラスとマイナスのケーブルを他のパネルと接続する部分で、中には基板やバイパスダイオードなどの回路があります。

この部分が故障すると、サーモカメラで撮影した際にその部分だけが赤く表示される(過熱している)などの兆候が表れます。
原因となるのは経年劣化・製品不良・物理的破損などです。壊れ方によっては電気が全く流れなくなる場合もありますし、微弱に発電する場合もあります。メンテナンスの際に行うさまざまな測定では、サーモカメラの温度差や電圧・電流の計測結果で「ここが怪しい」という部分を絞り込み、故障の原因を見つけます。
修理・交換は安全性を最優先に、発電損失・費用・設備の用途で判断する
安全性の確保を最優先とし、そのうえで発電損失の大きさ・費用・設備の用途を踏まえて判断します。
- 安全性:破損が激しく感電の恐れがあるなど、安全面の問題が大きいケースでは交換を強く推奨します。
- 発電損失:クラスター断線のように出力が大きく落ちるケースは交換をお勧めする場合が多く、わずかな発電低下で済むケースはお客様の判断によるところが大きくなります。
- 費用:パネル自体の製品代、交換工事の費用、そして取り外したパネルの廃棄処分にかかる費用が発生します。
売電専用の設備と自家消費型の設備では、判断軸が異なります。売電設備では固定価格での買取期間が残りわずかであれば修理のコストとのバランスを考え、自家消費型の設備は発電所の規模や影響範囲に基づいて判断されることが多いです。自家消費型太陽光発電を導入した企業の例は武州製氷株式会社様が自家消費型太陽光発電を導入した事例で紹介しています。
廃棄費用については、改正再エネ特措法に基づき、出力10kW以上のFIT/FIP認定設備を対象に、2022年7月から「廃棄等費用の外部積立」が原則義務化されています(資源エネルギー庁の解説資料)。撤去費用の考え方は耐用年数を過ぎた太陽光発電設備の撤去費用の解説、使用済みパネルの再資源化については太陽光パネルのリサイクルに関する解説記事をご覧ください。
現場担当者の視点(事業部長 折原への取材より)
――クラスターの3分の1が故障した場合、交換すべきですか?
交換をお勧めする場合が多いです。ただし、故障しても発電そのものが完全に停止するわけではないため、最終的にはお客様の判断によります。実際には、断線したパネルを交換される方が多い印象です。
――交換するかどうかは、お客様の判断になるのですか?
お客様の所有物であるため、私たちはプロとして調査や診断を行い、「どこがどう壊れているか」「どれくらいのリスクや発電損失があるか」をご報告する立場です。安全性や発電量に大きな問題があれば強く交換をお勧めする場合もあります。
――判断に迷うケースはありますか?
自家消費型の設備と売電専用の設備では意思決定の判断軸が異なるため、本当にケースバイケースですね。
恒電社ではメンテナンスサービスを通じて故障を特定し、「ここが壊れています。どのような影響があります」という形で報告書にまとめてご提出したうえで、保証を活用したパネル交換の手配まで対応しています。
解説者
折原 恭平
インタビュアー
原澤耀
2022年から恒電社のマーケティングも担当し、電気や太陽光発電のことを、各関連分野のエキスパートに直接ヒアリングをしながら、できる限り分かりやすい表現と専門的な視点の両立を重視した情報発信に取り組んでいる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 発電量が下がったままでも、パネルを使い続けてよいですか?
クラスター断線のように出力が落ちた状態でも、発電を続けること自体は可能です。ただし、そのままにすると長期的には売電収入や自家消費量に影響が出るかもしれません。最終的には「どの程度の費用をかけて修理する価値を感じるか」という判断になります。
Q2. 破損・故障した場合、メーカー保証と火災保険のどちらを使えばよいですか?
一般に、経年劣化や製品不良による出力低下はメーカーの出力保証、雹(ひょう)・強風・落雷など外部要因による突発的な破損は火災保険(自然災害補償)の対象になりやすいとされています。まずは点検で故障原因を切り分けることが第一歩です。保険との関係は太陽光発電設備と保険に関するFAQ、落雷の影響は太陽光発電設備に雷が落ちた場合に考えられる影響・被害と対策で解説しています。
Q3. 経年劣化や初期不良でもパネルは故障するのですか?
経年劣化や初期不良が原因で故障する場合があります。たとえばバイパスダイオードのショートは、物理的な衝撃や電気的な経年劣化、製品自体が抱えていた初期不良が時間の経過とともに顕在化するケースなどが考えられます。太陽光パネルも電化製品の一種である以上、一定の確率でこうした故障が含まれている可能性もあります。
発電量の低下や機器の不具合は、気づくのが遅れるほど損失が積み上がります。恒電社は太陽光発電設備の監視・点検・パネル洗浄などのO&Mを提供しています。導入後の維持管理まで含めて、お気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
岩見啓明

