本稿の目的:2026年6月に公布された「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」により、自社の太陽光発電設備を将来廃棄するときに何が求められるのかを整理します。
結論:売電していない自家消費型の設備も対象に含まれます。ただし計画の届出という重い義務がかかるのは、原則として、廃棄する太陽電池の重量が政令で定める要件に該当する事業者に限られます(非常災害時の応急措置などは除外されます)。
最大のリスク:処分費の単価だけで将来の予算を組むこと。撤去費と収集運搬費は別に必要で、委託先によっては引き取り対象外になるパネルもあります。
工場や倉庫の屋根に太陽光パネルを設置している場合、いつかは撤去して処分する日が来ます。その「出口」の新しいルールが、2026年に定められました。
太陽光パネルは、現在も廃棄物処理法によって適正処理が義務づけられています。新しい法律が変えるのは、その次の段階です。ひとことで言えば、「適正に廃棄する」から「再資源化を検討したうえで廃棄する」へ、求められる水準が上がります。
2026年5月に成立した「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」(以下、再資源化法)について、次の5点を順に解説します。
この法律で最も誤解されやすいのが、対象の範囲です。
この法律が対象とするのは、政令で定める重量・種類を満たす太陽光パネル(法律上の「太陽電池」)です。それを廃棄するすべての者に、廃棄の抑制と再資源化への協力が責務として求められます。そのうち、収益事業に使用している(していた)ものが「事業用太陽電池」に区分され、判断基準に沿った取り組みが求められます。売電しているかどうかは関係ありません。工場の屋根で発電した電気を自社で消費しているだけの設備でも、収益事業に使っていれば、後述する太陽電池の要件を満たすかぎり対象に入ります。法律上は「事業用太陽電池」と呼びます(第2条)。
「事業用」という語から売電事業を思い浮かべる方が多いのですが、法律上の線引きは事業性の有無であって、電気の使い道ではありません。
ただし、あらゆるパネルが対象になるわけではありません。同条が定める「太陽電池」は、板状でありガラスを材料として使用した部品を含む機器のうち、政令で定める重量以上のものです。さらに、廃棄物となった場合に再資源化等を実施することが技術的・経済的に可能であり、かつ有効なものとして政令で定める種類のもの、という限定もかかります。具体的な重量と種類は今後の政令に委ねられています。なおシリコン系については、国の資料でリサイクルが「原則可能」と整理されています。
再資源化法は、パネルを廃棄する者を3つの階層に分けています。内側にいくほど義務が重くなる構造です。
要件を満たす設備を廃棄する場合、自家消費型であっても少なくとも2番目に該当します。3番目にも該当するかは「多量」の線引きしだいですが、その重量要件はまだ政令が定められていません。当初は多量に排出する事業者を届出等の対象とする設計と説明されています。
ただし附則には見直し規定が置かれています。排出量の見込み、最終処分場の状況、再資源化費用の推移などを勘案して、対象を広げることを検討する内容です。現時点で3番目に該当しなくても、将来は変わりうる前提で見ておくのが妥当です。
届出を出しても、すぐに工事へ着手できるわけではありません。
届出が受理された日から30日を経過するまでは、パネルを排出することも、他社に工事を行わせて排出させることもできません。撤去工事の日程は、この待機期間を織り込んで組む必要があります。
もっとも、この30日は短縮も延長もあり得ます。①廃棄する全量について再資源化等の処分方法が選ばれていること ②処分を行う者が国の認定を受けた事業者等であること ③災害その他の事由により再資源化等の実施が困難と認められる特段の事情がないこと——この3つをすべて満たすと認められる場合、主務大臣は期間を短縮することができます。再資源化を選んだほうが工程面でも不利になりにくい設計と読めます。一方、勧告や命令の要否を審査するのに相当の期間を要する場合には、延長されることがあります。
罰則も定められています。命令に違反した場合は100万円以下の罰金(第26条)。届出をせず、または虚偽の届出をして排出した場合と、待機期間中に排出した場合は30万円以下の罰金です(第27条)。届出義務の対象となる軽微な変更について、変更後の届出を怠った場合は10万円以下の過料が科されます(第29条)。なお第26条・第27条の違反には両罰規定があり、行為者のほか法人にも罰金が科されます。
再資源化法は2026年5月29日に成立し、6月5日に公布されました。施行日はまだ決まっていませんが、附則第1条が「公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内」と定めているため、遅くとも2027年12月5日までには施行されます。
届出義務が実際にかかるのは、施行日から30日を経過した日以後に排出する廃棄からです。他社に工事を行わせる場合は、同日以後にその工事へ着手させる廃棄が対象になります(附則第3条)。
2026年8月時点で未確定な事項のうち、設備を保有する企業に特に関わるのは次の3点です。
費用の負担者についても補足します。現行の処分費用は、排出する事業者等が負担するのが前提です。これに加えて製造業者等へ再資源化の費用を負担させる案が検討過程で議論されました。しかし2025年8月29日の環境大臣・経済産業大臣の会見で、法制的な観点から合理的な説明が困難との整理が示され、制度案は見直す方向となりました。「メーカーが負担してくれる」と前提を置くのは早計です。
現状では多くの場合、再資源化のほうが埋立処分より費用がかさみます。
リサイクル費用は8,000円〜12,000円/kW、埋立処分費用は2,000円/kW程度〜。リサイクル費用は環境省が9事業者に調査した水準です。埋立処分費用は下限のみが示された数値ですが、資料では両者の差額は「依然として大きい」と整理されています。
出典:経済産業省・環境省「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律案について」(令和8年4月)2ページより該当部分を抜粋。
上のグラフが示すとおり、排出量は2030年代後半から急増し、年間最大50万トン程度に達する見通しです。全量が埋立に回れば最終処分場の残余容量を圧迫する——この見通しが、法制化の直接の背景にあります。
なお、この金額に解体撤去費と収集運搬費は含まれていません。
費用差が大きいため、再資源化は選ばれにくい状態が続いてきました。大手発電事業者団体による調査では、これまでに再資源化を実施したことがある事業者は2割で、6割以上が実質的に検討していないとされています。
処分方法によって、リサイクル及び熱回収の割合は大きく異なります。
| 処分方法 | 回収されるガラス | リサイクル及び熱回収の割合(重量比) |
|---|---|---|
| 熱処理(専用設備) | 板ガラス | 約90〜95% |
| ガラス切断(専用設備) | 板ガラス | 約75〜95% |
| ガラス破砕(専用設備) | カレットガラス(破砕したガラス) | 約60〜90% |
| 汎用シュレッダー破砕+選別機器 | カレットガラス | 約50%〜 |
同じ1枚のパネルでも、委託先の設備によってリサイクル及び熱回収の割合は約50%から約95%まで開きます。パネルは重量の約6割をガラスが占めるため、割らずに板ガラスとして回収できるかどうかが分岐点になります。委託先の選定では、価格だけでなく処理方式を確認する意味があります。
処理側の実情については、埼玉県で太陽光パネルのリサイクル事業を立ち上げた企業への太陽光パネルリサイクルの現在地を聞いた取材記事もあわせてご覧ください。
2025年11月時点で、使用済太陽光パネル専用のリサイクル施設は全国93件、処理能力は約15万トン/年です。8府県には施設が存在しません。関東の状況は次のとおりです。
| 都県 | 専用リサイクル施設 | 処理能力(トン/年) | 導入ピーク時の導入量(トン/年) |
|---|---|---|---|
| 埼玉県 | 5件 | 7,709 | 17,808(2014年) |
| 群馬県 | 4件 | 6,216 | 23,687(2019年) |
| 栃木県 | 2件 | 7,402 | 34,921(2015年) |
| 茨城県 | 3件 | 14,112 | 46,752(2015年) |
| 千葉県 | 1件 | 5,256 | 40,526(2015年) |
右端の「導入ピーク時の導入量」は、将来その地域から排出される量の目安になります。処理能力がこれを下回る地域では、遠方へ運搬する分だけ費用がかさむ可能性があります。
もっとも、費用は低減する方向にも動いています。NEDOの技術開発では、2029年度に分解処理コストを2,000円/kW以下とすることを目標とした技術開発支援が計画されています(2026年1月時点の資料による)。出口も広がりました。セントラル硝子プロダクツ株式会社は、パネルから回収したカバーガラスを原料の一部に用いた板ガラスの試験生産に成功し、2026年6月から継続的な水平リサイクル(ガラスをガラスに戻す再生)を開始しました(2026年7月7日公表)。
施行日はまだ決まっていません。とはいえ長く使い続ける設備である以上、出口の条件は入口で決まります。弊社が設備の処分について実際に見積を取得するなかで、先に押さえておくと効いてくると感じている点を挙げます。
費用の準備についても補足します。再エネ特措法にもとづく廃棄等費用積立制度には、適用対象の定めがあります。資源エネルギー庁のガイドラインでは「事業計画の認定を申請する事業用太陽光発電(10kW以上)事業者および認定事業者」とされています。つまりFIT・FIPの認定を受けていない自家消費型の設備は、この積立制度の枠外です。制度に頼らず自社で備える必要があります。詳細は太陽光発電設備の撤去費用と積立制度の解説で扱っています。
資源循環を本業とする企業が自家消費型太陽光発電を導入した事例として、産業廃棄物処理とリサイクルを手がける株式会社クマクラ様の導入事例もご紹介しています。
A. 届出義務がかかるのは、廃棄する太陽電池の重量が政令で定める要件に該当する「多量事業用太陽電池廃棄者」です。その要件は2026年8月時点で未確定のため、現段階で該当・非該当を断定することはできません。対象パネルが政令で定める「太陽電池」に該当し、かつ収益事業で使用している場合は「事業用太陽電池」に当たるため、判断基準に沿った取り組みと指導・助言の対象になります。届出の要否は、政令が示された段階で、廃棄を予定するパネルの重量と要件を照合して確認してください。
A. 現行の処分費用は、排出する事業者等が負担するのが前提です。これに加えて製造業者等へ再資源化の費用を負担させる案も議論されましたが、法制上の課題から見直す方向が示されています。今後の政省令や制度見直しの動向をご確認ください。
A. 稼働中の設備については2点です。第一に、設置年・パネルの種類・枚数・総重量を把握しておくこと。第二に、処分の見積を一度取得し、処分費・撤去費・運搬費の内訳を分けて確認しておくことです。これから導入・更新する設備については、将来再資源化しやすい構造かどうかを選定条件に加えておくと、廃棄する段階での選択肢が広がります。
恒電社は、高圧受変電設備の設計・施工・改修更新と、自家消費型太陽光発電のEPC(設計・調達・施工)を手がけています。まず使う電気と購入する電気を減らし、そのうえで設備を長く使い切る。この順序で考えることが、結果として廃棄の抑制にもつながると考えています。制度の詳細が政省令で明らかになった段階で、対象となるお客様への情報提供を進めてまいります。設備の更新時期や将来の処分について気がかりな点があれば、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年8月1日時点の公表情報にもとづいています。主な出典:太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律(令和8年法律第33号)の条文、経済産業省・環境省「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律案について」(令和8年4月)、環境省・経済産業省 太陽光発電設備リサイクル制度小委員会・産業構造審議会合同会議「太陽光パネルのリサイクル制度について」(2026年1月23日)、資源エネルギー庁「廃棄等費用積立ガイドライン」、セントラル硝子プロダクツ株式会社ニュースリリース(2026年7月7日)。本文中の図のうち1点は同資料2ページから該当部分を抜粋して掲載しています(その他の図は当社が作成)。政令・省令の内容は今後定められるため、最新の情報は各省庁の公表資料をご確認ください。
※本文で言及した規定の条文:定義=第2条/責務=第6条/判断の基準=第7条/指導及び助言=第8条/廃棄計画の届出・30日の待機期間・短縮・延長・勧告・命令=第9条/再資源化事業者の計画認定・変更・廃棄物処理法の特例=第12条〜第14条/罰則=第26条〜第29条/施行期日・経過措置・見直しの検討=附則第1条・第3条・第4条。