本稿の目的:オフサイトPPAの仕組みをオンサイトPPAとの違いに沿って整理し、ご自身の会社に合う調達方式かどうかを判断する材料を提供します。
結論:オフサイトPPAは、需要地から離れた場所にある再エネ電源を対象とするPPAです。代表的なフィジカルPPAでは、電力系統を介して電気と環境価値の供給を受けます。恒電社の考える脱炭素の4段階(省エネ→敷地内の自家消費→外部からの再エネ調達→環境価値の購入)では、オフサイトPPAは第3段階にあたります。需要場所の屋根や敷地の広さに直接制約されない一方、フィジカルPPAでは託送料金などの負担が加わるため、検討の順序としては、まず敷地内の自家消費でまかなえる分を確認してからが合理的です。
見落としがちなリスク:オフサイトPPAは代表的には「フィジカル」と「バーチャル」の2方式に分けられ、電気の届き方も費用の構造も大きく異なります。方式を区別しないまま比較すると、判断を誤るおそれがあります。
PPA(Power Purchase Agreement/電力購入契約)は、発電事業者と電気を使う企業などが結ぶ、電力の売買・購入に関する契約です。このうち、自社の屋根や敷地に設備を置く「オンサイトPPA」(一般に発電事業者が設備を設置・保有し、企業は契約に基づいて料金を支払う方式)が広く知られていますが、屋根の広さや建物の条件によっては、設置できる容量に限界があります。
そこで選択肢になるのが、需要地から離れた場所にある再エネ電源を対象とする「オフサイトPPA」です。あらかじめお伝えしたいのは、その位置づけです。恒電社では、脱炭素への取り組みを「外から環境価値を買う前に、まず使う電気と購入する電気を減らす」という4段階の順序で考えることをおすすめしており、オフサイトPPAは、省エネと敷地内の自家消費を確認したあとに検討する「第3段階」の選択肢です(順序の全体は記事の後半で説明します)。本記事では、環境省の解説資料に沿ってオフサイトPPAの仕組みを整理し、オンサイトPPAとの違い、費用の構造、どのような企業に向いているかを解説します。
環境省の解説資料「オフサイトコーポレートPPAについて」(2022年3月更新版)では、電力の実供給を伴うオフサイトコーポレートPPAについて、発電事業者と電力の購入者が事前に合意した価格・期間で売買契約を結び、需要地から離れた場所にある再エネ電源から一般の電力系統を介して供給を受ける方式が示されています。本稿では、これに後述のバーチャルPPAも含め、需要地から離れた再エネ電源を対象とするPPAを「オフサイトPPA」と総称します。
本稿では、企業などの需要家が再エネ発電事業者と結ぶPPAを「コーポレートPPA」と呼びます。発電設備を置く場所によって、大きく2つに分かれます。
オンサイトPPAと、オフサイトPPAの代表的な方式であるフィジカルPPA(後述)を比較すると次のとおりです。
| 比較項目 | オンサイトPPA | オフサイトPPA(フィジカル) |
|---|---|---|
| 発電場所 | 自社の屋根・敷地内 | 敷地の外の発電所 |
| 電気の届き方 | 系統を介さずその場で使用 | 送配電網を介して供給 |
| 導入できる規模 | 屋根・敷地の広さに制約される | 需要場所の敷地面積に直接制約されない |
| 費用の構造 | PPA料金が中心 | PPA料金に託送料金などが加わる |
| 再エネ賦課金 | 自家消費分にはかからない | 小売経由で供給を受ける電気にはかかる |
最大の違いは、オンサイトPPAが屋根や敷地の広さに制約されるのに対し、オフサイトPPAは需要場所の敷地面積に直接制約されない点です。敷地内の設置だけでは不足する分を補える可能性がある一方、送配電網を使うことに伴う費用が上乗せされます(詳しくは後述します)。
なお、オンサイトPPA自体の契約条件(契約期間・中途解約・契約満了後の扱いなど)については、オンサイトPPAで契約前に押さえたい7つの重要ポイントで詳しく解説しています。
環境省の解説資料では、オフサイトPPAは電気の受け取り方によって、代表的に次の2方式に整理されています。
発電所でつくられた電気の実供給を受け、電気と環境価値(再エネ由来の電気であることの価値)をセットで受け取る方式です。契約・供給のスキームによっては小売電気事業者が介在します。環境省の資料では、取引価格に加えて託送料金(送配電網の利用料)の負担が必要と整理されています。
電気そのものは自社に届かず、環境価値だけを受け取る方式です。電気は従来どおりの契約で購入し続けるため、追加的な託送料金の支払いは発生しません。取引は市場価格との差額を精算する形(差金決済)が基本となり、契約がデリバティブに該当するかなど、会計処理上の検討が必要になる場合があります。
※バーチャルPPAの会計上の取り扱いは契約内容により異なります。導入をご検討の際は会計の専門家にご確認ください。
環境省の資料では、フィジカルPPAの調達コストは次の3つの要素で構成されると整理されています。
一方、オンサイトPPAの自家消費分は送配電網を介さないため、託送料金や同時同量のための調整費用を需要家が同じ形で負担する構造にはなりません(個別の費用内訳は契約条件によります)。同じPPAでも、オフサイトPPAのうちフィジカルPPAには、送配電網を使うことに伴う費用が構造的に加わる、という違いがあります。
加えて、再エネ賦課金の扱いも異なります。賦課金は小売電気事業者から供給を受けた電気の量に対して課されるため(再エネ特措法第36条2項)、オンサイトPPAで自家消費した電気は算定対象に入りません。一方、オフサイトPPA(フィジカル)で小売電気事業者を介して供給を受ける電気には賦課金がかかります。2026年度の賦課金単価は4.18円/kWh(2026年5月検針分〜2027年4月検針分)で、使用量が大きいほどこの差は効いてきます。賦課金の仕組みは再エネ賦課金の解説記事で詳しく説明しています。
次のような状況では、オフサイトPPAが選択肢になる可能性があります。
実際のご相談の場では、長期の契約期間に対して発電事業者の事業継続性をどう見るかという懸念や、同じ社内でも「設備管理の手間を避けたいのでPPAがよい」という意見と「資産として自社で保有したい」という意見が分かれる場面が繰り返し見られます。また、倉庫・物流施設では建物のオーナーと入居企業が異なるケースがあり、その場合は敷地内への設置が選びにくいため、調達方式の選択肢が変わってきます。
なお、敷地の外の発電所を活用する関連の調達方法として「自己託送」という制度もあります。仕組みや要件は自己託送の解説記事をご覧ください。
冒頭でも触れたとおり、恒電社では、脱炭素への取り組みを「外から環境価値を買う前に、まず使う電気と購入する電気を減らす」という4つの順序で考えることをおすすめしています。本記事で解説してきたオフサイトPPAは、このうち3番目にあたります。
恒電社がこの順序をおすすめする理由の一つは、前述の費用構造のとおり、敷地内の自家消費分には託送料金や再エネ賦課金がかからないことです。屋根を活用した自家消費型太陽光の実例は武州製氷株式会社様の導入事例で、売電と自家消費の違いは売電と自家消費型太陽光の違いを解説したFAQで紹介しています。
契約・供給のスキームによっては、オンサイトPPAとオフサイトPPAを組み合わせることも考えられます。屋根で発電した電気を自家消費し、敷地内でまかなえない分をオフサイトPPAで補う形です。具体的な可否は、オフサイトPPAの方式や小売供給契約などの条件を個別に確認する必要があります。
契約条件によるため一概には言えません。ただしフィジカルPPAでは、PPA契約価格に加えて託送料金やバランシングコスト等が調達コストを構成し、小売電気事業者から供給を受ける電気には再エネ賦課金もかかります。バーチャルPPAは費用構造が異なるため、方式別の比較が必要です。PPA単価の数字だけでなく、こうした構成要素を含めた実質的な負担で比較することをおすすめします。
契約内容によっては、契約期間や中途解約の条件、価格・精算の仕組み、電力および環境価値の受け渡しと帰属、契約終了時の取り扱いなどの確認が必要になります。また、長期の契約となる場合は、発電事業者の信用力をどう見るかも実務上の論点になりやすい点です。2026年5〜6月にも、コーポレートPPAの法務・契約上の留意点を扱うセミナーが開催されており、契約面の確認は実務上のテーマになっています。
恒電社は、自家消費型太陽光発電の設計・調達・施工(EPC)を手がける電気設備工事会社です。オフサイトPPAをはじめとする外部調達については、需要家側の要点を整理し、必要に応じて専門のパートナーへおつなぎします。敷地内の自家消費と外部調達をどのような順序で検討するかの全体整理をお手伝いしています。「自社の屋根でどこまでまかなえるのか」「外部調達と組み合わせるべきか」といったご相談も、お気軽にお問い合わせください。