なぜ、太陽光パネルは斜めではなく水平に設置するのか?

A. 工場・倉庫の陸屋根では、傾斜30度より水平設置が有利になるケースが多く、パネル2枚あたりの部材費が約12,800円安い一方、発電量の差は約5%にとどまるためです。

判断の要点

  • 理論上の最適角度は南向き・傾斜角30度前後が目安。ただし緯度で変動し、沖縄など低緯度で20度前後、北海道など高緯度で35〜40度前後とされています
  • 30度の斜め設置には1枚あたり約9,000円の架台が必要。水平設置は1個650円程度の押さえ金具で済み、パネル2枚の部材費は約54,000円と約41,200円で約12,800円差です
  • 年間発電量の差は約5%(450Wパネル2枚で約990kWhと約940kWh、差は約50kWh)。1kWh23円換算で年間約1,150円のため、部材費の差の回収には10年以上かかる可能性があります
  • ただし周囲に影を作る建物がある場合や北勾配の屋根では、斜め設置が選ばれることもあります。最適解は屋根と周辺環境で変わるため、現地調査とシミュレーションで判断します

「30度が最適」は架台を自由に組める前提の理論値

太陽光パネルの一般的な最適角度は、南向き・傾斜角30度前後が目安とされています。ただしこれは設置地域の緯度によって変動する理論値で、沖縄など低緯度エリアでは20度前後、北海道など高緯度エリアでは35〜40度前後、恒電社の主要商圏である関東地方(北緯35度前後)では30度前後が妥当な近似値とされています(詳細はNEDO「日射に関するデータベース」をご参照ください)。

この目安は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)などが発表している研究データに基づくものとされています。最も発電効率が高い角度を30度とし、その発電量を100%とした場合、平置きでは5%から10%ほど低下するという計算が示されています。

ただし、これは架台を自由に組める前提での理論値です。工場や倉庫の陸屋根・平坦屋根に新設する産業用の自家消費型太陽光発電では、傾斜をつけるほど架台・基礎工事のコストが増加するため、発電量とコストのトレードオフで水平設置が有利になるケースが多くあります。

部材費の比較|パネル2枚あたり約12,800円の差

斜めに設置する場合は、構造上の理由から金属製の架台(パネルに角度をつけて支える部材)が必要です。450Wのパネル1枚あたり、パネル本体が18,000円だとしても架台には約9,000円かかります。一方、水平設置なら大きな架台は不要で、1個650円程度の押さえ金具を数個使うだけで設置できます。

図のとおり、パネル本体(18,000円/枚)は同じでも、支持部材が架台(9,000円/台)か押さえ金具(650円/個)かで前提が変わります。パネル2枚では次のようになります。

項目 斜め設置(30度・2枚) 水平設置(2枚)
パネル本体 36,000円(18,000円×2枚) 36,000円(18,000円×2枚)
架台・押さえ金具 架台18,000円(9,000円×2基) 押さえ金具5,200円(650円×8個)
部材費の合計 約54,000円 約41,200円

同じ2枚を設置する場合でも、設置方法によって部材費だけで約12,800円の差が出ることになります。

図でも同じ内訳(54,000円と41,200円、差額12,800円)が示されています。なお、部材やパネル本体の単価は市況により変動します。

発電量の差は約5%|部材費の差を発電量で取り戻すには10年以上

一般的には30度ほどの傾斜をつけた方が発電効率は高くなりますが、両者の年間発電量の差は想像よりも小さいものです。

450Wのパネルを2枚(合計900W)設置する場合、30度の斜め設置では年間約990kWh、水平設置ではこれが約5%下がるとされ年間940kWh程度と推定されます。その差は年間で約50kWh、電気料金を1kWhあたり23円とすれば年間約1,150円にとどまります。

つまり、部材コストの差額12,800円を発電量の差だけで回収するには、単純計算で10年以上かかることになります。電気料金単価は契約種別・時期で変動するため、この試算は一例です。投資回収年数の考え方は自家消費型太陽光発電の投資回収年数の試算方法で解説しています。

浮いた費用でパネルを1枚増やす|水平3枚と斜め2枚の比較

架台を用いた斜め設置は発電効率がやや上がる一方、部材コストの回収に時間がかかります。それであれば、水平設置でコストを抑え、その分でパネルを1枚多く設置したほうが、全体の発電量が増え、投資回収が早まる可能性があります。

図は斜め2枚(54,000円)と水平3枚(パネル3枚54,000円+押さえ金具5,200円=59,200円)の比較で、設備費用の差は約5,200円です。

1枚のパネルによる発電量は年間でおよそ8,000〜10,000円分に相当します。設備費用の差額だけで見れば、1枚追加しても1年程度で追加費用の回収が可能という計算になります。水平で3枚設置すれば発電量も3枚分となります。

斜め設置のデメリット|重量・風の影響・屋根の強度

  • 重量が増える:アルミ架台を使用すると重量が増し、屋根への耐荷重が大きくなります
  • 風の影響を受けやすい:斜めに立てることで風の影響を受けやすく、北風など強い風が吹いた際にパネルが吹き飛ばされるリスクも高まります
  • 屋根の強度に左右される:屋根が十分に頑丈でない場合、トラブルのリスクが増加します。施工費用も増大します

屋根側の条件は業種や建物の用途による屋根の強度と設置スペースの違い、強風時の考え方は太陽光パネルが強風で飛ばされる可能性についての解説で扱っています。

それでも斜め設置を選ぶケース|影・北勾配・反射光

水平設置が推奨されるケースが多いものの、環境や屋根の状態によって最適な設置方法は変わります。周囲に影を作る建物があったり、屋根が北勾配(北向きに傾いた屋根面)になっている場合は、そのまま平置きにすると効率が著しく低下するため、斜め設置が選択されることがあります。

また、北勾配の屋根では反射光が後方の建物やエリアに影響を与える可能性があります。斜め設置にすることで効率を向上させ、反射の影響を軽減することが求められます。反射光の考え方は太陽光パネルの反射光が近隣住民に迷惑をかけることはあるのかで解説しています。

恒電社としても、南向きまたは平らな屋根の場合には平置きを推奨しています。屋根形状ごとの向き不向きは屋根上太陽光発電設備の設置と屋根形状の関係を解説した記事、積雪時の考え方は太陽光パネルに雪が積もった場合の発電量もあわせてご覧ください。

現場担当者の視点(事業部長 折原への取材より)

――現在でも、斜めに設置することはありますか。

斜めに設置することは以前もありましたし、お客様のニーズによっては、現在でも斜めに設置するケースがあります。例えば、1枚あたりの発電量を最大限効率的に得たいと考える方は、斜め設置を希望されることが多いです。

――導入コストだけで、斜めか水平かを決めているのですか。

現実には様々な要因が絡むため、“導入コスト”だけをみて「斜め設置が有利なのか、水平設置が有利なのか」を判断しているわけではありません。

――問い合わせの前に、お客様が確認しておくべきことはありますか。

お客様自身が屋根の状態や周囲の環境を正確に把握することは難しいため、恒電社の専門チームに現場を見せて頂き、シミュレーションを基に最適な設計をお任せいただくことが、最適な方法と考えます。

恒電社では現地調査とシミュレーションを前提に、条件ごとの最適な設計をご提案しています。屋根上への設置を検討される方は、十万石ふくさや様の工場屋根への太陽光発電導入事例もご覧ください。屋根上・ソーラーカーポートなどの設置方法や導入の流れは、法人向け自家消費型太陽光発電のサービス案内にまとめています。

解説者

折原 恭平
株式会社恒電社 エネルギーマネジメント事業部

折原 恭平

金融機関や信用調査会社での営業経験を経て2018年に恒電社へ入社し、法人営業を担当。2022年よりエネルギーマネジメント事業部長として営業・施工管理の管理者として組織改善に携わっています。

インタビュアー

原澤耀
合同会社HARAFUJI

原澤耀

合同会社HARAFUJI・COO。マーケティングを中心に、企業の戦略および戦術支援事業に従事。
2022年から恒電社のマーケティングも担当し、電気や太陽光発電のことを、各関連分野のエキスパートに直接ヒアリングをしながら、できる限り分かりやすい表現と専門的な視点の両立を重視した情報発信に取り組んでいる。

よくある質問(FAQ)

Q1. 屋根が狭い場合や、逆に広すぎる場合も水平設置が有利ですか?

屋根のスペースが狭く多くのパネルを設置できない場合や、屋根が非常に広く電力需要が少ない場合は、部材費の比較だけでは結論が出ません。恒電社ではお客様一社一社に細かいシミュレーションを行い、最適な提案をするよう努めています。

Q2. 住宅用は斜めに設置するのに、産業用(自家消費型)はなぜ水平が多いのですか?

住宅用は既存の勾配屋根に沿わせるため架台自体が小さく済みますが、産業用・自家消費型で工場や倉庫の陸屋根・低勾配屋根に新設する場合は、傾斜をつけるほど架台・基礎工事のコストが増加します。発電量の差が数%にとどまる一方、コスト差は同じ予算でパネル1枚分程度の増設に相当するためです。

Q3. 屋根が東向きや西向きの場合も、この試算はそのまま当てはまりますか?

当てはまりません。ここでの計算は真南向きを想定しているため、東向きや西向きの屋根では結果が異なります。勾配や傾斜がある場合はさらに計算が変わるため、実際の判断は現地調査と個別のシミュレーションを前提にしてください。

「うちの屋根に載せられるのか」への答えは、屋根の構造・築年数・耐荷重で変わります。設置可否の見立てや構造確認の進め方など、設計段階の疑問からご相談いただけます。

この記事を書いた人

Iwami
株式会社恒電社

岩見啓明

恒電社ではマーケティング(動画、記事、広報、企画、セミナー運営、デジタル広告)に加え、人事やインサイドセールスなど、事業部を横断して活動。個人では登録者数1万人超えのYouTubeチャンネルを運用した経験の他、SDGsの啓蒙活動で国連に表彰された経歴を持つ。2023年に二等無人航空機操縦士(ドローンの国家資格)、2024年に第二種電気工事士資格を取得。≫プロフィールはこちら

導入の投資対効果はどのぐらい?

  • 電気代
  • 投資対効果
  • CO2の削減

まずは 発電シミュレーション から

発電シミュレーションと
導入後の発電量の比較 例
業種
食品流通業
条件
導入時期:2023年3月
パネル枚数:345枚
設備容量:143.175kW
パネル設置面積:680㎡
屋根面積:3,710㎡
発電シミュレーションと導入後の発電量の比較グラフの例 発電シミュレーションと導入後の発電量の比較グラフの例
  • 法人向け自家消費型太陽光発電で、いくらコストカットできる?
  • 自家消費型太陽光発電を導入した場合、実際にどれくらい電気代を削減できるのか?