A. 地域ごとに定められた基準風速と建物の高さ、屋根の形状・傾斜をもとに固定方法と固定強度を設計しているため、通常の強風で太陽光パネルが飛散するリスクは大きく抑えられます。ただし台風による飛散被害は現に報告されているため、設計・施工に加えて台風シーズン前後の点検も重要です。
判断の要点
- 設計の基本となるのは「建物の高さ」と「地域の基準風速」の2要素で、屋根の形状・傾斜も加味します。基準風速は国土交通省が出している市区町村別のデータを使い、例えば埼玉県蓮田市は32m/sと定められています
- 建物が高くなるほど風の影響を受けやすくなるため、通常の片辺2点固定を片辺3点固定にするなどの対応をとります。屋根にかかる荷重自体は大きく変わらず、増えるのは金具の追加分のコスト程度です
- 設計時は、下から押し上げる風圧・上から押さえつける風圧・降雪時の積雪荷重を計算し、構造計算書に基づいて固定方法を選定します。金具メーカーからは強度計算書が提供され、製品の保証も明確にされています
- 万一飛散した場合は、基本的にお客様が加入されている保険での対応となります。ご心配なお客様には施設賠償責任保険をご案内しています。あわせて、台風シーズン前後の定期点検で固定金具の緩みを確認することも重要です
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飛散を防ぐ設計の基本は「建物の高さ」と「基準風速」
風で太陽光パネルが飛ばないようにするための設計は、主に「①建物の高さ」と「②基準風速」という2つの要素をもとに、固定方法と固定強度を決定します。
建物が高くなるほど風の影響を受けやすくなるため、太陽光パネルを固定する金具の取り付け点数が変わります。通常であれば片辺2点固定のところを、片辺3点で固定するといった対応です。金具の数が増えても屋根にかかる荷重自体は大きく変わらないため構造的な負担は少なく、デメリットとしては金具の追加分のコストが発生する程度です。
強度計算では、建物の高さに加えて屋根の形状・傾斜も加味します。屋根そのものの条件については業種や建物の用途によって、屋根の強度や太陽光パネルの設置スペースに違いはあるのか?、屋根の形状ごとの向き不向きは屋根上太陽光発電設備の設置|“形状が重要?”埼玉県の事例から分かる“向いていない”屋根とは?をご覧ください。
基準風速は市区町村ごとに定められている
使用するのは、国土交通省が出している市区町村別の基準風速です(〔平成12年5月31日建設省告示第1454号〕都道府県別市町村の基準風速一覧表(抜粋))。恒電社では、この基準風速データをもとに、太陽光パネル設置用の架台メーカーや金具メーカーに強度計算を依頼しています。
例えば埼玉県蓮田市の場合、基準風速は32m/sと定められています。そこに建物の高さや屋根の形状・傾斜を加味した上で、メーカーから「この条件では2点固定が必要です」「こちらの条件では3点固定が必要です」といった具体的な強度指示(構造/強度計算書)をもらい、それに従って施工を進めています。
設計で計算するのは、2方向の風圧と積雪荷重
金具の固定数を増減させることに加えて、設計時には次の要素を十分に考慮しています。
- パネルの下から上に押し上げる風圧
- パネルを上から押さえつける風圧
- 降雪時の積雪荷重(パネルにかかる雪の重さ)
風圧は、下から押し上げる方向と上から押さえつける方向の両方を考慮します。さらに、降雪時には雪の重さも考慮する必要があります。これらすべての要素を緻密に計算した上で、構造計算書に基づく適切な固定方法を選定します。金具メーカーからも強度計算書が提供され、製品の保証も明確にされています。恒電社は安価な金具を避け、信頼性の高い金具メーカーと提携しています。
積雪そのものが発電量に与える影響は太陽光パネルに雪が積もった場合、発電量はどうなるの?で解説しています。
施工中の飛散対策と、パネル同士をワイヤーで繋ぐ方法
強風の地域や台風の多い地域でも、金具の固定点数を増やすという基本的な考え方自体はあまり変わりません。近年むしろ注意しているのは、施工完了後よりも「施工中」の安全対策です。施工中は資材の落下や飛散が起きないよう、動く可能性のある資材はすべて固定し、現場を離れる際には安全確認を行っています。
金具の固定以外の対策としては、太陽光パネル同士を全部ワイヤーで繋いだ例があります。太陽光パネルはボルトで固定するためにフレームに穴が空いており、そこにワイヤーを通してパネル同士を繋ぎます。高速道路などで活用されている、ワイヤーで物が下に落下してもいいように全部ワイヤーに繋げる技法に似た手法です。
万一飛散した場合に備える
飛散が起きた場合に最も懸念されるのは、パネルが人にぶつかって怪我を負わせたり、第三者の建物や車などを損傷させたりするリスクです。このような事態が発生した場合、基本的にはお客様が加入されている保険で対応いただくことになります。ご心配なお客様には、施設賠償責任保険での対応をご案内しています。
また、施工不良の可能性が議論される場面では、強度計算書や施工基準をもとに施工の正当性を示すことになります。パネルが破損した場合の対応は太陽光パネルが破損した場合、どのように対応すれば良いのか?をご覧ください。
台風シーズン前後の点検で、固定金具の緩みを確認する
近年は気候変動の影響で「猛烈な台風」が発生しやすい状況が増えており、経済産業省および独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)も2025年8月、太陽電池発電設備の台風被害について注意喚起を行っています(太陽電池発電設備の台風被害、どう防ぐ?(NITE・2025年8月20日))。
NITEの調査では、平地など風通しの良い立地でパネルの飛散被害が集中する一方、実際の事故事例では固定金具の緩みが原因となるケースも報告されています。つまり、設計・施工時の強度計算だけで完結する話ではないということです。
恒電社では、設計・施工時の強度計算に加え、台風シーズン前後の定期点検(固定金具の緩み確認等)も安全確保のうえで重要だと考えています。点検の頻度と費用の目安は太陽光発電設備のメンテナンスは、どの程度の頻度と費用が必要なのか?をご覧ください。
現場担当者の視点(施工管理担当の蛎崎への取材より)
――建物の高さによって、固定の仕方は具体的にどう変わりますか?
通常であれば片辺2点固定のところを、建物が高くなるとより風の影響を受けやすくなるため、片辺3点で固定するといったような対応になります。金具の数が増えても屋根にかかる荷重自体は大きく変わらないため、構造的な負担は少ないです。
――強風の地域や台風の多い地域では、施工方法は変わりますか?
金具の固定点数を増やすという基本的な考え方自体は、あまり変わりません。ただ最近特に注意しているのは、むしろ施工完了後よりも「施工中」の安全対策です。
――施工中の飛散対策を、それほど重く見ているのはなぜですか?
最近では記録的な突風など、これまでの経験値を超えるような強風が増えており、「さすがにこの重さなら飛ばないだろう」と思えるものまで飛ばされてしまうことがあります。
恒電社では、基準風速と建物の条件をもとにメーカーから強度計算書を取得したうえで設計・施工を行い、施工中の資材の飛散防止にも取り組んでいます。
解説者
蛎崎 泰祐
インタビュアー
原澤耀
2022年から恒電社のマーケティングも担当し、電気や太陽光発電のことを、各関連分野のエキスパートに直接ヒアリングをしながら、できる限り分かりやすい表現と専門的な視点の両立を重視した情報発信に取り組んでいる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 構造計算書や強度計算書は、誰が作成する書類ですか?
架台メーカーや金具メーカーです。基準風速に建物の高さや屋根の形状・傾斜を加えた条件を渡して強度計算を依頼し、「この条件では2点固定が必要です」といった具体的な強度指示として受け取ります。恒電社はこの指示に従って施工します。
Q2. 自社の建物に適用される基準風速は、どこで調べられますか?
基準風速は市区町村ごとに定められており、建設省告示第1454号の市町村別一覧で確認できます。ただし固定点数は基準風速の値だけで決まるものではなく、建物の高さや屋根の形状・傾斜を加味した強度計算が必要になります。
Q3. パネル同士をワイヤーで繋ぐ対策は、どの現場でも行うのですか?
いいえ。過去に実施した例で、基本は金具による固定です。基準風速、建物の高さ、屋根の形状・傾斜などを加味した強度計算に基づいて施工していれば、通常の強風による飛散リスクは大きく抑えられます。
この記事を書いた人
岩見啓明





