本稿の目的:2027年から太陽光発電・蓄電池の系統連系に適用される見込みの要件「JC-STAR★1」について、対象範囲・適用時期・確認方法を一次資料に基づいて整理します。
結論:太陽光発電・蓄電池のPCS(パワーコンディショナ)や監視装置、ゲートウェイなど、IP通信機能を持つ機器は、特別高圧・高圧は2027年4月、低圧(50kW未満)は2027年10月以降に一般送配電事業者が系統アクセスの契約申込みを受け付ける案件から、JC-STAR★1以上の適合ラベルを取得した機器の使用が必要になる見込みです(2026年10月6日に資源エネルギー庁が国のワーキンググループにガイドライン改定案を報告し、意見公募を行っている段階です)。設備すべてが対象になるわけではありません。
最大のリスク:取得状況を確認せずに機器選定を進めると、契約申込みの時期によっては機器変更・納期見直しが発生します。
自社の屋根や敷地に太陽光発電を導入する際は、発電した電気を安全に使うために、設備を電力会社の送電網(系統)につなぐ「系統連系」という手続きを踏みます。電力会社に接続を申し込み、審査を受けてはじめて発電を始められる——この申込みの場面に、2027年から新しい条件が加わる見込みです。
特別高圧・高圧は2027年4月、低圧は2027年10月以降に系統アクセスの契約申込みが受け付けられる太陽光発電・蓄電池設備では、IP通信機能を持つ機器(パワーコンディショナ=太陽光パネルの直流電気を工場で使える交流に変換する装置、等)に、「JC-STAR★1」以上の適合ラベルを取得した機器の使用が必要になる見込みです。太陽光発電設備すべてが対象になるわけではなく、あくまでPCSや監視装置など、IP通信機能を持つ機器が対象です。
JC-STARは、インターネットや社内ネットワークなどでIP通信を行うIoT機器のセキュリティ水準を星の数(★1〜★4)で「見える化」する国のラベリング制度です。家電の省エネラベルのセキュリティ版とイメージすると分かりやすいかもしれません。2025年3月に、経済産業省所管のIPA(情報処理推進機構)が運用を始めました。
この記事では、制度の基礎、太陽光発電・蓄電池への適用条件、業者を見極めるポイント、そして社内で検討を進める際に押さえておくべきことを解説します。
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2027年よりスタート|今さら聞けない!?太陽光発電の新常識「JC-STAR」とは?
本記事のテーマ「JC-STAR」を、技術アドバイザー・福原と恒石陣汰の対談形式で解説したセミナー動画を無料公開しています。対象機器・適用スケジュールに加え、コスト・納期への影響、既設発電所のリプレース(パワーコンディショナ交換)への影響、対応品・非対応品の選び方など、文章では伝えきれない実務の判断ポイントまで踏み込んでいます(フォーム登録後、すぐにご視聴いただけます)。
セミナー動画を無料で視聴する →JC-STARとは — IoT製品のセキュリティを「星の数」で見える化する制度
JC-STAR(セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度)は、IP通信でデータを送受信するIoT製品のセキュリティ機能を共通の物差しで評価し、★1〜★4の4段階のラベルで表示する制度です。経済産業省の主導で設計され、IPAが2025年3月25日から★1の申請受付を開始しました。
- ★1・★2:メーカー自身がIPAの定める適合基準を満たすことを自己評価し、その申請に基づいてIPAが適合ラベルを付与する方式(自己適合宣言)
- ★3・★4:第三者の評価機関による評価をもとに、IPAが認証してラベルを付与する方式(第三者認証)
対象は、インターネットプロトコル(IP)でデータを送受信するIoT製品です。ルーターやネットワークカメラのような通信機器だけでなく、工場で使われる制御機器やセンサー類も含まれます。一方、パソコン・タブレット・スマートフォンのような汎用的なIT製品は対象外とされています。
また、ラベル取得の単位は販売単位となる製品ごとで、複数の機器を組み合わせたシステム全体は現時点では対象外です。直接インターネットに接続しない機器でも、他の機器を経由してインターネットにつながる構成であれば対象になり得ます。
なぜ太陽光発電に関係するのか — 「つながる発電設備」を狙う攻撃への備え
いまの太陽光発電は、単にパネルで発電するだけの設備ではありません。発電量を離れた場所から確認する遠隔監視装置や、パワーコンディショナ自体が通信ネットワークにつながって動いています。つまり、ネットワークにつながって通信する機器である以上、サイバー攻撃の対象になり得るということです。
大きな発電所と違い、企業の屋根や敷地に置かれる太陽光発電は全国に無数に分散しています(こうした電源を「分散型電源」と呼びます)。1つひとつは小さくても、数が増えるほど電力システム全体から見た攻撃の入り口は増えていきます。
実際に国内でも、2024年5月に太陽光発電の遠隔監視装置の脆弱性が悪用され、サイバー攻撃の踏み台にされる事案が起きています。資源エネルギー庁の資料(2026年10月6日 第13回次世代電力系統ワーキンググループ 資料4)は、出力50kW以上の事業用の発電設備(事業用電気工作物)には「電気設備に関する技術基準を定める省令」でサイバーセキュリティの確保が義務付けられている一方、50kW未満の小規模な太陽光発電にはサイバーセキュリティに特化した明確な規定がないことを、要件化の背景として挙げています。
こうした背景から、系統連系のルールを議論する電力広域的運営推進機関のグリッドコード検討会では2025年6月の第19回から要件化の具体的な検討が始まり、同年12月の第20回で適用開始時期の案(特別高圧・高圧は2027年4月、低圧は2027年10月)が示され、2026年3月の第21回で規程改定案などが整理されました。
その結果は、2026年10月6日の資源エネルギー庁の第13回次世代電力系統ワーキンググループに、ガイドライン改定案として報告されています。当社が確認した範囲では、太陽光・蓄電池の施工に関わる事業者向けに「系統連系ストップの危機」と題した緊急セミナーが業界団体主導で開かれるなど(2026年7月時点の当社調査による)、現場レベルでの周知も進んでいます。
いつから・何が対象か
一次資料(電力広域的運営推進機関 第21回グリッドコード検討会 資料4「分散型電源のサイバーセキュリティ対策の要件化について」・資源エネルギー庁作成、2026年3月31日)で規程改定案として示された適用条件は次のとおりです。
本稿は、この第21回資料の規程改定案に、資源エネルギー庁のWebページ「電力分野のサイバーセキュリティについて」(最終更新日:2026年7月24日)と「よくあるご質問」、2026年8月21日の第22回グリッドコード検討会の資料3、2026年10月6日の第13回次世代電力系統ワーキンググループの資料4「系統連系技術要件の改定について(JC-STAR★1要件化)」の内容を反映しています(2026年10月14日時点)。
第22回資料3では、第21回の議論について「提案通りに要件化していくことで整理された」とまとめられています(太陽光の一部で適用時期についての要望が出たものの、その後の関係者の協議を経て提案どおり進めることになったと記載されています)。
資源エネルギー庁は、一般送配電事業者の系統連系技術要件を2026年度内に改正する予定と示しています。2026年10月6日には、資源エネルギー庁が「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」の改定案について意見公募(パブリックコメント、締切は2026年11月6日)を始めました。
改定案では、IP通信機能を持つ対象機器にJC-STAR★1以上の適合ラベルが付与された機器を用いること、太陽光発電設備・蓄電設備は特別高圧・高圧が2027年4月1日、低圧が2027年10月1日以降に契約申込みを受け付ける案件から適用することが示されています。
同日の第13回次世代電力系統ワーキンググループの資料4では、このガイドラインを意見公募のあと年内をめどに改定し、各一般送配電事業者がそれを参照して系統連系技術要件(託送供給等約款の別冊)を改定し、年度内に経済産業大臣へ認可を申請する予定と示されています。
最終的には各一般送配電事業者の系統連系技術要件などの改定で確定するため、最新の確定内容はそちらで確認してください。なお、改定案の原文は「レベル1以上の認証を取得した機器を用いる」であり、★1は最低ラインです(★2以上の適合ラベルでも要件を満たします)。
| 電源種 | 適用開始時期 | 適用範囲 |
|---|---|---|
| 太陽光発電 | 特高・高圧:2027年4月/低圧(50kW未満):2027年10月 | ゲートウェイやその他のIP通信機能を有する機器(PCS、BMS、EMS等の出力制御装置、遠隔監視装置)、ゲートウェイ等を介さずに主要な構成製品と通信上つながっているIoT機器 |
| 蓄電池 | 特高・高圧:2027年4月/低圧(50kW未満):2027年10月 | 同上 |
※表は第13回次世代電力系統ワーキンググループ資料4の整理に基づきます。同資料では、風力発電は2027年4月から、ゲートウェイのファイアウォールまたは同等の機能を持つ機器が対象とされています(対象範囲の拡大とその適用開始時期は検討中)。
逆変換装置を用いる燃料電池は2028年4月からの適用とされ、必要に応じて経過措置の導入を検討するとしています。
押さえておきたいのは次の3点です。
- 判定の起点は「系統アクセスにおける契約申込みの受付」:一般送配電事業者が契約申込みを各時期以降に受け付けた案件から適用されます。発電を始める日(運転開始日)や設備の完成日ではありません。特別高圧・高圧の場合、設備が2027年4月より前に完成していても、契約申込みの受付が同月以降なら新ルールの対象となる見込みです(低圧の基準時期は2027年10月)。
資源エネルギー庁の「よくあるご質問」(Q1・Q2・Q4)では、申込み書類に不備がなく保証金が入金され、一般送配電事業者が契約申込みを受け付けた時点で判定するとされ、接続検討を申し込んだだけでは従来の扱いにならないと説明されています - 対象は「IP通信機能を持つ機器」:パワーコンディショナ(PCS)、蓄電池のBMS、エネルギーの使用状況を管理するEMS、出力制御装置、遠隔監視装置、外部通信との接続点になるゲートウェイなどのうち、IP通信機能を持つ機器が対象になる見込みです。資源エネルギー庁の「よくあるご質問」(Q5・Q9)では、IP通信機能を備えて使える状態にある機器は、通常はIP通信を使う予定がなくても、JC-STAR★1以上の適合ラベルを取得した機器の使用を求めています。
IP通信機能を持たない機器は対象外です。同FAQでは、ルーターや監視カメラのように太陽光・蓄電池システムの構成機器に直接含まれない機器は原則として対象外とされていますが、発電設備を制御する機能を持つ場合や、ゲートウェイ等を介さずに主要な構成製品と通信上つながっている場合は対象になると説明されています。
2026年10月6日の資源エネルギー庁の資料では、インターネットに直接つながっていない機器でも、IP通信機能を持つ以上は外部から侵入されるリスクがあるため、外部通信の出入口となるゲートウェイだけでなく、個々の構成機器も対象にしたと説明されています - 低圧は半年遅れの適用:低圧に連系する設備は、市場に出回っている既存製品の在庫が入れ替わる期間を考慮して、半年遅い2027年10月開始とされています
適用時期は、発電設備の連系区分(特別高圧・高圧・低圧)によって異なります。電気料金の契約区分だけでは判断できない場合があるため、設計・申請を担当する事業者または一般送配電事業者に確認してください。

メーカー各社の対応状況(IPA適合ラベル取得製品リスト 2026年10月8日更新版より)
機器選定の実務では、メーカーによって対応に差が出ています。JC-STARの適合ラベルを取得した製品は、IPAが「適合ラベル取得製品リスト」として公表しており、2026年10月8日更新版では全364製品のうち160製品が「エネルギー関連機器(エネファーム、PCS、ガス給湯器など)」に分類されています。
このうち、自家消費型太陽光・蓄電池の機器選定で関係が深いメーカーを当社が抜粋したものが次の表です(社名はIPAリストの登録名に基づき、製品名は一部省略・要約しています。取得対象の正式名称・型番はIPAリストで確認してください。取得時期はラベル取得日)。
| メーカー(登録名) | JC-STAR★1取得製品の例 | 取得時期(件数) |
|---|---|---|
| ニチコン株式会社 | 公共・産業用蓄電システム B1シリーズパワーコンディショナ、発展型太陽光パワーコンディショナESS-E1シリーズ ほか | 2026年3月〜7月(6件) |
| オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社 | 太陽光発電用ゲートウェイ KP-GWPV-A、計測ユニット KP-GWPV-Bシリーズ、蓄電システム KPBPシリーズ ほか | 2026年1月〜6月(7件) |
| 株式会社ダイヘン | 蓄電池パッケージ | 2025年10月〜2026年7月(7件) |
| 住友電気工業株式会社 | sEMSA-FactoryLite、蓄電池システム POWER DEPO(H/R/Ⅳ/Ⅴ)、レドックスフロー電池システム ほか | 2025年10月〜2026年6月(8件) |
| 株式会社TMEIC | BSA-L1200JNN、BSB-L2200JRN、BSU-L0600/BSU-L0675/BSU-L0750、TMBCS ほか | 2025年10月〜2026年4月(6件) |
| 富士電機株式会社 | 大規模蓄電池型パワーコンディショナ、蓄電システムコントローラ(PMS) | 2025年10月(3件) |
| 日新電機株式会社 | 蓄電池用PCS、系統用蓄電池制御装置 ほか | 2025年10月(3件) |
| 株式会社明電舎 | 蓄電システム用パワーコンディショナ | 2026年6月(1件) |
| SMA ソーラー テクノロジー AG | サニーセントラル、サニーセントラルストレージ | 2025年9月(1件) |
| デルタ電子株式会社 | 蓄電所用パワーコンディショナー、データコレクター ほか | 2026年6月〜7月(3件) |
| ハンファジャパン株式会社 | Q.READYパワーコンディショナ、電力計測制御ユニット HWJP-MUKA-5 | 2026年3月〜4月(2件) |
| カナディアン・ソーラー・ジャパン株式会社 | 電力計測制御ユニット CSI-EnerLink ほか | 2026年6月〜8月(2件) |
| パナソニック エレクトリックワークス株式会社 | 電力計測制御ユニット、産業用蓄電システム(ネットリモコン) ほか | 2025年11月〜2026年3月(7件) |
| 株式会社ラプラス・システム | Solar Link ZERO(計測・監視装置) | 2025年11月(1件) |
| 株式会社フィールドロジック | DataCube4(計測端末) | 2026年4月〜5月(2件) |
当社がこのリストを確認した範囲では、次の3点が読み取れます。
- 太陽光発電用のPCS本体として登録されている製品は、当社が2026年10月8日更新版のリスト全体を確認した範囲でもまだ少数です(例:ニチコンの発展型太陽光パワーコンディショナESS-E1シリーズ、ハンファジャパンのQ.READYパワーコンディショナ)。登録の多くは蓄電システム用のPCS・パッケージ、計測制御ユニット、ゲートウェイ、リモコンといった製品で、太陽光向けは「通信を担う機器」側で取得している例が目立ちます。
機器選定では、PCS単体ではなく「PCS+計測・監視装置」の組み合わせで、対象範囲に入るIP通信機能を持つ機器がどれで、それぞれが取得済みかを確認する必要があります - PCS本体がIP通信機能を持たず、監視装置側がIP通信を担う構成では、対象となる監視装置等の取得状況を確認します(PCS本体の取得状況だけでは判断できません)。一方、PCS本体がIP通信機能を持つ場合は、ゲートウェイや監視装置が★1を取得していてもPCS本体にも★1以上の取得製品が求められ、論理的に切り離していても対象から外れないと説明されています(資源エネルギー庁「よくあるご質問」Q6・Q7)
- 海外メーカーでは、HUAWEI、SUNGROWのいずれも2026年10月8日更新版のリストに自社名での登録がありません。登録がない理由(申請中か、別名義での登録か、対象外の構成か)はこのIPAリストだけでは分からないため、採用を検討する場合はメーカー・販売元に直接確認してください
メーカーの対応状況は今後も変わっていくため、この記事の一覧を鵜呑みにせず、機器選定のたびに最新の取得状況をご自身で確認することをおすすめします。IPAのリストは製品ごとに登録番号・ラベル取得日・有効期間が載っているので、導入予定の機種名で検索してみてください。
見積りを依頼する際、業者に「提案の構成のうち、IP通信機能を持つ機器はどれですか。それぞれJC-STAR★1以上の適合ラベルを取得済みですか」と直接尋ねるのも確実な方法です。
複数社を比較検討する際に確認しておきたいこと
太陽光発電の導入では、複数の業者から提案を受けて比較することが一般的です。その際、JC-STARへの対応状況を提案の中で説明してくれるかどうかは、業者の見極めポイントの一つになります。新しい系統連系要件の適用が始まる前の段階でも、この点を事前に説明されているかどうかで、その後の計画の立てやすさが変わってきます。
対象機器の取得状況について、実務では大きく次の2つの進め方が考えられます。②を選ぶ場合は、適用開始前に契約申込みの受付まで完了させることに加えて、将来の機器交換時には原則としてJC-STAR★1以上の取得製品が必要になる見込みであることを織り込んでおく必要があります。
- 最初からJC-STAR★1以上の適合ラベルを取得した機器で計画する
- 未取得の機器を選び、適用開始前(特別高圧・高圧は2027年4月、低圧は2027年10月)に系統アクセスの契約申込みの受付まで完了させ、将来(例えば10年目など)の機器交換のタイミングでJC-STAR★1以上の取得済み機器へ切り替える前提とする

②は機種や調達条件によっては初期コストを抑えられる場合がある一方、織り込んでおくべき点が3つあります。まず、契約申込みの受付が適用開始後にずれ込めば、JC-STAR★1以上の取得製品が必要になる見込みです。書類の不備のほか、系統の空き容量の変化で接続検討からやり直しになり、受付が遅れることもあります。
次に、受付を済ませた後でも、適用開始後に申込み時のPCS等を別の機器に変更する場合は設備変更の申込みが必要になり、新しい要件が適用されると説明されています(資源エネルギー庁「よくあるご質問」Q3・Q4)。そして、将来の交換時には原則として★1以上の取得製品が求められる見込みで、交換には原則として接続検討の申込みも要ります(逆潮流のない自家消費設備での扱いは後述のFAQをご覧ください)。
既設機器との互換性などから事業者に過度な負担となる場合の例外も示されています。FAQ Q11では、属地の一般送配電事業者への個別相談と所定の計画書の提出が条件です。10月6日の資料4では、同事業者が過度な負担と認め、所定の様式で個別に協議して了承を得ることが条件とされています(資料ごとの条件は後述のFAQ)。
意思決定のスピード感によっては現実的でない場合もあります。どちらが自社に合うかは、契約申込みまでのスケジュール、機器交換の予算計画、社内の意思決定プロセスによって変わります。提案を受ける際は、業者がこの2択を認識した上で説明してくれているかを確認するとよいでしょう。
この2択を整理しておくだけで、「業者任せではなく、リスクを理解した上で判断している」と言える状態になります。逆に、この論点を業者から一切説明されていない場合は、検討が進んだ段階で前提を問い直すことになりかねません。
検討スケジュールをどう組むか
前章の「業者の見極め」に加えて、ご自身の検討スケジュールも早めに固めておくことをおすすめします。
特別高圧・高圧は2027年4月、低圧は2027年10月より前に系統アクセスの契約申込みの受付まで完了している案件は、原則としてJC-STAR★1以上の取得製品を使う要件の適用対象外となる見込みです(そのほかの系統連系の要件や審査は、従来どおり必要です)。
書類を送っただけ、接続検討を申し込んだだけでは足りないこと、受付後に対象機器を変更すると新しい要件が適用される場合があることに注意してください。一方、検討開始から契約申込みまでは、現地調査・設計・電力会社との協議を含めて相応の期間がかかります。
「まだ先の制度」と考えず、これから検討を始める案件は適用開始後の契約申込みになる可能性を織り込んで、最初からJC-STAR★1以上の適合ラベルを取得した機器で計画することをおすすめします。
系統連系の手続きの流れと、判定のタイミング
系統連系の手続きは、大きく「接続検討」と「契約申込み」の2段階で進みます。
資源エネルギー庁の第13回次世代電力系統ワーキンググループ 資料4(2026年10月6日)では、手続きの流れと、JC-STAR要件を判定するタイミングが次のように示されています。

- ①接続検討:接続検討を申し込み、一般送配電事業者が受け付けてから3か月以内に回答があります
- ②契約申込み:契約を申し込み、不備のない書類の提出と保証金の入金を一般送配電事業者が確認し、契約申込みを受け付けた時点が「受付」です。技術検討の回答は、受付から6か月以内です
- ③承諾〜連系:連系承諾、工事費負担金の契約・入金、工事を経て、連系に至ります
JC-STAR要件の対象になるかどうかは、②の「受付」の日で決まります。特別高圧・高圧は2027年4月1日、低圧は2027年10月1日以降に受付となる案件が対象になる見込みです。
適用開始より前に受付を済ませたい場合は、ここから逆算します。接続検討が必要な案件では、契約申込みの前に、接続検討受付から回答までの期間(資料4の図では3か月以内)を見込みます。現地調査・設計・書類準備に加え、契約申込み後、不備のない書類の提出と保証金の入金を経て、一般送配電事業者が受け付けるまでの段取りも含めて逆算します。
なお、東京電力パワーグリッドの系統アクセスルール(2021年7月1日改定版)では、逆潮流のない自家消費を目的とした発電設備等を新設・変更する場合、①の接続検討を省略できるとされています(島しょや系統連系の制約が発生している箇所などを除く)。ほかの一般送配電事業者のエリアでは、各社のルールを確認してください。
※既設設備で対象機器を交換する場合の扱いは後述のFAQをご覧ください。新しい要件の適用開始後に既存の太陽光発電設備へ蓄電池を増設する場合は、増設する蓄電池に使う対象機器にJC-STAR★1以上の取得製品が求められ、交換せずにそのまま使う既設の機器は交換を求められない見込みです(資源エネルギー庁「よくあるご質問」Q10)。
いずれも資源エネルギー庁が2026年7月24日更新の資料で示し、2026年10月6日のワーキンググループ資料でも同じ扱いが示されたもので、系統連系技術要件の改正(2026年度内の予定)で確定します。個別のケースは事業者または一般送配電事業者に確認してください。
なお、一定規模以上の事業者では、屋根設置太陽光の設置目標や設置余地等が省エネ法上の計画・報告の対象になる場合があります。あわせて検討を進める企業様は、省エネ法の対象事業者に関する記事もご参照ください。実際の導入検討がどのように進むかは、食品製造業のフレッシュキッチン様の導入事例が参考になります。
よくある質問(FAQ)
Q. すでに稼働している太陽光発電設備も対象になりますか?
A. 資源エネルギー庁は、2027年3月末までに契約申込みの受付が完了している設備や、既設の設備ですでに使われている機器について、新しい系統連系技術要件がさかのぼって適用され、直ちに系統接続できなくなることはないと説明しています(この説明は「2027年3月末まで」と書かれており、適用開始が2027年10月の低圧について別の期限は示されていません)。
設備の増設や変更を伴わないFIP制度への移行や、FITの調達期間・FIPの交付期間の終了(いわゆる卒FIT)だけでは、要件は適用されないとされています(「よくあるご質問」Q12)。2026年10月6日の資源エネルギー庁の資料でも同じ整理が示され、FIP制度への移行の認定申請そのものではJC-STAR★1への対応は求めない一方、リパワリングやリプレースを伴う場合は、要件の適用開始後に更新する対象機器について、原則としてJC-STAR★1以上の取得製品の使用が必要になる見込みです。
一方、新しい要件の適用開始後に対象機器を交換する場合や蓄電池を増設する場合は、交換・増設する機器に原則として要件が適用される見込みです(詳しくは次の質問と、前章末尾の注記をご覧ください)。
Q. 既設の太陽光発電でパワーコンディショナを交換(リプレイス)する場合も対象になりますか?
A. 新しい要件の適用開始後に交換する場合は、対象になる見込みです。資源エネルギー庁の説明(「電力分野のサイバーセキュリティについて」2026年7月24日更新、「よくあるご質問」Q11)では、2027年4月以降に既設設備の対象機器をIP通信機能のある機器へ交換する場合、交換する機器には原則としてJC-STAR★1以上の取得製品の使用が求められます。
交換しない既設の機器には、この要件は適用されません。たとえばパワーコンディショナが30台ある発電所で1台だけを交換する場合も、交換する1台には原則としてJC-STAR★1以上の取得製品が求められ、交換しない29台はそのまま使えます。
交換後のパワーコンディショナがIP通信機能を持たない機器であれば、その機器は対象外です。
また、資源エネルギー庁のWebページ「電力分野のサイバーセキュリティについて」(2026年7月24日更新)では、2027年4月以降、新たな系統連系技術要件の下で既設の対象設備の対象機器を交換する場合は、送配電等業務指針に基づき接続検討の申込みが必要で、同一機器への交換でも「軽微な変更」にはならないと説明されています。一方、東京電力パワーグリッドには、逆潮流のない自家消費設備の新設・変更について、一定の除外条件のもとで接続検討を省略できる規定があります。交換案件での接続検討の要否は、この省略規定との適用関係を含めて確認してください。
なお、資源エネルギー庁の説明は交換について「2027年4月以降」と書いていますが、低圧の太陽光発電・蓄電池の適用開始は2027年10月とされているため、低圧設備の交換がいつから対象になるかは、改正後の系統連系技術要件で確認してください。
例外として、★1以上の取得製品への交換が事業者に過度な負担となる場合に、交換を猶予する扱いが示されています。条件の書き方は資料によって少し異なるため、出典ごとに整理します。
資源エネルギー庁「よくあるご質問」Q11(2026年7月24日更新)
既設の機器間の互換性などから、交換する機器以外も広く交換が必要になるなど、事業者に過度な負担となる場合に限り、★1未取得の同類型式製品への交換と当面の使用が認められるとされています。
条件は、属地の一般送配電事業者に個別に相談したうえで、次の3点を記載した計画書を所定の様式で提出することです。
- ①★1取得製品への交換が難しい理由(過度な負担の具体的な内容を記載し、根拠となる資料を添付)
- ②広範なリプレース・リパワリングの実行予定年など、交換対象の機器をすべて★1取得製品にする具体的な年限
- ③それまでのサイバーセキュリティ対策(「電力制御システムに関するサプライチェーン・セキュリティ対策の手引き」「電力システムにおけるサイバーセキュリティリスク点検ガイド」「電力システムにおけるサイバーセキュリティ対策状況可視化ツール」の利用など)
過度な負担の例として、同じQ11では次の3つが挙げられています。いずれも、発電事業の継続に大きな影響がある場合です。
- 故障したPCS1台を新しい要件に合う製品に替えると、既設の旧型PCSや変圧器との互換性・設定電圧の違いから設備を従来どおり使えず、変圧器やPCS全体の交換が必要になる場合
- 2026年3月末までにメーカーと結んだ延長保証契約で、保証の対象として★1取得製品への交換ができない場合
- 2026年3月末までに事業継続のために購入・保有している交換用製品を、同じメーカーの★1取得製品と交換できない場合
第13回次世代電力系統ワーキンググループ 資料4(2026年10月6日)7ページ
★1取得製品への交換を求めることで、発電事業の継続に大きな影響を及ぼすなど、事業者に過度な負担が生じると属地の一般送配電事業者が認める場合に、当面の間、交換を猶予するとされています。
条件は、次の3点について所定の様式で個別に協議し、一般送配電事業者の了承を得ることです。
- ①★1取得製品への交換が難しい理由と、「過度な負担」の具体的な内容
- ②広範なリプレース・リパワリングの実行予定時期と、★1取得製品への交換を実行する具体的な計画
- ③それまでのサイバーセキュリティ対策(上記の手引き・点検ガイド・可視化ツールの利用、またはこれらと同等の対策)
10月6日の資料4では、一般送配電事業者が「過度な負担」と認めることと、協議して了承を得ることが条件として明記されています。所定の様式を提出するだけで猶予が認められるわけではなく、個別協議と一般送配電事業者の了承が必要です。最終的な条件は、改定後の系統連系技術要件で確認してください。
パワーコンディショナの交換を予定している場合は、交換時期と接続検討の期間を見込んで、早めに施工業者や一般送配電事業者に相談してください。既設発電所のリプレイスへの影響は、無料セミナー動画でも実務上の判断ポイントとして取り上げています。
Q. 売電しない完全自家消費(逆潮流なし)の太陽光発電も対象になりますか?
A. 対象に含まれます。資源エネルギー庁は、売電を一切行わない完全自家消費の設備でも、系統連系している限りJC-STAR★1以上の取得製品の使用が求められると説明しています(「よくあるご質問」Q13)。対象となる機器や適用時期、既設機器の扱いは、ほかの設備と同じく前述の条件によります。売電しないことを理由に対象外になるわけではない点に注意してください。
Q. JC-STAR★1を取得した機器なら安全ということですか?
A. ★1は、IPAが定めた最低限のセキュリティ適合基準を満たしていることをメーカー自身が評価・申請し、IPAがラベルを付与する自己適合宣言に基づく適合ラベルです。第三者の評価機関が審査する認証ではなく、どんな攻撃にも耐えられるという保証でもありません。
「最低限の対策ができているかどうかを見分けるための目印」と理解するのが正確です。
Q. 導入予定のパワーコンディショナが取得済みか調べるには?
A. IPAのJC-STAR公式サイトで適合ラベル取得製品が公表されています。機器選定の際は、メーカー・EPC事業者に取得状況と取得予定を確認してください。
まとめ
- 特別高圧・高圧は2027年4月、低圧は2027年10月以降に系統アクセスの契約申込みが受け付けられる太陽光発電・蓄電池は、PCSや監視装置など、IP通信機能を持つ機器にJC-STAR★1以上の適合ラベルを取得した機器の使用が必要になる見込み(ガイドライン改定案の意見公募中の段階)
- 起算は運転開始日や設備完成日ではなく、契約申込みの受付。これから検討を始める案件は適用開始後の申込みになる可能性を織り込む
- 機器選定の段階で取得状況を確認することが、後戻りを防ぐ最も確実な方法。当社が確認した範囲では、この観点の有無が提案の差になり始めています
- IPAの適合ラベル取得製品リスト(2026年10月8日更新)を当社が確認した範囲では、太陽光向けPCS本体の登録はまだ少数で、計測制御ユニット・ゲートウェイ側での取得が目立つ。PCS単体ではなく「PCS+計測・監視装置」の組み合わせで確認する
- 最初から取得済み機器で計画するか、適用開始前に契約申込みの受付を済ませて将来の交換時に取得済み機器へ切り替えるか。2つの進め方を、交換時は原則として★1以上の取得製品が必要になる見込みである点まで含めて整理しておけば、リスクを理解した上での判断であることを示せます
恒電社は自家消費型太陽光のEPC(設計・調達・施工)として、制度動向を踏まえた機器選定からご相談をお受けしています。導入をご検討中の企業様は、計画の初期段階でお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
恒石陣汰(ツネイシ ジンタ)

