本稿の目的:2027年から太陽光発電・蓄電池の系統連系に適用される見込みの要件「JC-STAR★1」について、対象範囲・適用時期・確認方法を一次資料に基づいて整理します。
結論:太陽光発電・蓄電池が採用する、通信機能を有する制御システムのうちIP通信を用いる機器(PCS等)は、特別高圧・高圧は2027年4月、低圧(50kW未満)は2027年10月以降に系統アクセスの契約申込みを行う案件から、JC-STAR★1適合ラベルの取得が必要になる見込みです(国の検討会で規程改定案として整理された段階です)。設備すべてが対象になるわけではありません。
最大のリスク:取得状況を確認せずに機器選定を進めると、契約申込みの時期によっては機器変更・納期見直しが発生します。
自社の屋根や敷地に太陽光発電を導入する際は、発電した電気を安全に使うために、設備を電力会社の送電網(系統)につなぐ「系統連系」という手続きを踏みます。電力会社に接続を申し込み、審査を受けてはじめて発電を始められる——この申込みの場面に、2027年から新しい条件が加わる見込みです。
特別高圧・高圧は2027年4月、低圧は2027年10月以降に系統アクセスの契約申込みを行う太陽光発電・蓄電池設備では、通信機能を有する制御システムのうちIP通信を用いる機器(パワーコンディショナ=太陽光パネルの直流電気を工場で使える交流に変換する装置、等)に、「JC-STAR★1」という適合ラベルの取得が必要になる見込みです。太陽光発電設備すべてが対象になるわけではなく、あくまで通信機能を持つ制御機器が対象です。
JC-STARは、インターネットや社内ネットワークなどでIP通信を行うIoT機器のセキュリティ水準を星の数(★1〜★4)で「見える化」する国のラベリング制度です。家電の省エネラベルのセキュリティ版とイメージすると分かりやすいかもしれません。2025年3月に、経済産業省所管のIPA(情報処理推進機構)が運用を始めました。
この記事では、制度の基礎、太陽光発電・蓄電池への適用条件、業者を見極めるポイント、そして社内で検討を進める際に押さえておくべきことを解説します。
JC-STARとは — IoT製品のセキュリティを「星の数」で見える化する制度
JC-STAR(セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度)は、IP通信でデータを送受信するIoT製品のセキュリティ機能を共通の物差しで評価し、★1〜★4の4段階のラベルで表示する制度です。経済産業省の主導で設計され、IPAが2025年3月25日から★1の申請受付を開始しました。
- ★1・★2:メーカー自身がIPAの定める適合基準を満たすことを自己評価し、その申請に基づいてIPAが適合ラベルを付与する方式(自己適合宣言)
- ★3・★4:第三者の評価機関による評価をもとに、IPAが認証してラベルを付与する方式(第三者認証)
対象は、インターネットプロトコル(IP)でデータを送受信するIoT製品です。ルーターやネットワークカメラのような通信機器だけでなく、工場で使われる制御機器やセンサー類も含まれます。一方、パソコン・タブレット・スマートフォンのような汎用的なIT製品は対象外とされています。また、ラベル取得の単位は販売単位となる製品ごとで、複数の機器を組み合わせたシステム全体は現時点では対象外です。直接インターネットに接続しない機器でも、他の機器を経由してインターネットにつながる構成であれば対象になり得ます。
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なぜ太陽光発電に関係するのか — 「つながる発電設備」を狙う攻撃への備え
いまの太陽光発電は、単にパネルで発電するだけの設備ではありません。発電量を離れた場所から確認する遠隔監視装置や、パワーコンディショナ自体が通信ネットワークにつながって動いています。つまり、ネットワークにつながって通信する機器である以上、サイバー攻撃の対象になり得るということです。
大きな発電所と違い、企業の屋根や敷地に置かれる太陽光発電は全国に無数に分散しています(こうした電源を「分散型電源」と呼びます)。1つひとつは小さくても、数が増えるほど電力システム全体から見た攻撃の入り口は増えていきます。
こうした背景から、系統連系のルールを議論する国の検討会(グリッドコード検討会)では2025年6月の第19回から要件化の具体的な検討が始まり、同年12月の第20回で適用開始時期の案(特別高圧・高圧は2027年4月、低圧は2027年10月)が示され、2026年3月の第21回で規程改定案などが整理されました。当社が確認した範囲では、太陽光・蓄電池の施工に関わる事業者向けに「系統連系ストップの危機」と題した緊急セミナーが業界団体主導で開かれるなど(2026年7月時点の当社調査による)、現場レベルでの周知も進んでいます。
いつから・何が対象か
一次資料(資源エネルギー庁・第21回グリッドコード検討会、2026年3月31日)で規程改定案として示された適用条件は次のとおりです。本稿更新時点(2026年8月)ではこの改定案の段階で、最終的には各一般送配電事業者の系統連系技術要件などの改定で確定します。
| 電源種 | 適用開始時期 | 適用範囲 |
|---|---|---|
| 太陽光発電 | 特高・高圧:2027年4月/低圧(50kW未満):2027年10月 | 通信機能を有する制御システムのうち、IP通信を用いる機器(PCS、EMS等) |
| 蓄電池 | 特高・高圧:2027年4月/低圧(50kW未満):2027年10月 | 同上 |
押さえておきたいのは次の3点です。
- 数え方の起点は「系統アクセスにおける契約申込み」:電力会社に接続を申し込む手続きを各時期以降に行う案件から適用されます。発電を始める日(運転開始日)や設備の完成日ではありません。設備が2027年4月より前に完成していても、契約申込みがそれ以降なら新ルールの対象です
- 対象は「通信機能を有する制御システムのうち、IP通信を用いる機器」:パワーコンディショナ(PCS)、蓄電池のBMS、エネルギーの使用状況を管理するEMS、出力制御装置、遠隔監視装置(出力制御機能を持つ場合)などが対象になり得ます。ただし機器の種類名だけで一律に判断できるわけではなく、「発電設備が採用する制御システムに該当し、かつ実際にIP通信を用いる製品か」で対象範囲が変わります。通信機能のない機器まで一律にJC-STAR★1が必要になるわけではありません
- 低圧は半年遅れの適用:低圧に連系する設備は、市場に出回っている既存製品の在庫が入れ替わる期間を考慮して、半年遅い2027年10月開始とされています
適用時期は、発電設備の連系区分(特別高圧・高圧・低圧)によって異なります。電気料金の契約区分だけでは判断できない場合があるため、設計・申請を担当する事業者または一般送配電事業者に確認してください。

メーカー各社の対応状況(2026年7月時点の当社調査による)
機器選定の実務では、メーカーによって対応に差が出ています。以下は2026年7月時点で当社が確認した範囲の傾向であり、確定情報ではありません。
- 当社が確認した範囲では、そもそも通信機能を持たないためJC-STARの対象外となる製品があります
- 当社が確認した範囲では、海外メーカー製の一部の機器でJC-STAR★1取得に向けた動きがある一方、対応が定まっていないものも見られます
- 2026年7月時点で、JC-STAR★1を取得済みの製品も既に存在します
メーカーの対応状況は今後も変わっていくため、この記事の一覧を鵜呑みにせず、機器選定のたびに最新の取得状況をご自身で確認することをおすすめします。IPAの公式サイトでは適合ラベル取得製品の一覧が公表されているので、導入予定の機種名で検索してみてください。見積りを依頼する際、業者に「この機種はJC-STAR★1を取得済みですか」と直接尋ねるのも確実な方法です。
複数社を比較検討する際に確認しておきたいこと
太陽光発電の導入では、複数の業者から提案を受けて比較することが一般的です。その際、JC-STARへの対応状況を提案の中で説明してくれるかどうかは、業者の見極めポイントの一つになります。新しい系統連系要件の適用が始まる前の段階でも、この点を事前に説明されているかどうかで、その後の計画の立てやすさが変わってきます。
対象機器の取得状況について、実務では大きく次の2つの進め方が考えられます。ただし②は制度上保証された方法ではなく、機器交換時の扱いの個別確認を前提とする暫定的なシナリオです。
- 最初からJC-STAR★1取得済みの機器で計画する
- 未取得の機器を選び、適用開始前(特別高圧・高圧は2027年4月、低圧は2027年10月)に系統アクセスの契約申込みを完了させ、将来(例えば10年目など)の機器交換のタイミングでJC-STAR★1取得済み機器へ切り替える前提とする(※機器交換時のJC-STAR要件の取り扱いは、本稿更新時点の公表資料には明記されていません)

②は機種や調達条件によっては初期コストを抑えられる場合がある一方、機器交換時のJC-STAR要件の取り扱いが公表資料では確認できない(詳細は後述)という不確実性を抱える選択肢です。意思決定のスピード感によっては現実的でない場合もあります。どちらが自社に合うかは、契約申込みまでのスケジュール、機器交換の予算計画、社内の意思決定プロセスによって変わります。提案を受ける際は、業者がこの2択を認識した上で説明してくれているかを確認するとよいでしょう。
この2択を整理しておくだけで、「業者任せではなく、リスクを理解した上で判断している」と言える状態になります。逆に、この論点を業者から一切説明されていない場合は、検討が進んだ段階で前提を問い直すことになりかねません。
検討スケジュールをどう組むか
前章の「業者の見極め」に加えて、ご自身の検討スケジュールも早めに固めておくことをおすすめします。
特別高圧・高圧は2027年4月、低圧は2027年10月より前に系統アクセスの契約申込みまで進む案件には、JC-STAR★1要件の適用対象外と整理されています(そのほかの系統連系の要件や審査は、従来どおり必要です)。一方、検討開始から契約申込みまでは、現地調査・設計・電力会社との協議を含めて相応の期間がかかります。「まだ先の制度」と考えず、これから検討を始める案件は適用開始後の契約申込みになる可能性を織り込んで、最初からJC-STAR★1対応機器で計画することをおすすめします。
※既設設備の機器交換・リプレイス時や、既存の太陽光発電設備に蓄電池を併設する際の扱いは、本稿更新時点(2026年8月)の公表資料には明記がなく、今後の規程改定などで扱いが示される可能性があります。該当するケースは事業者または一般送配電事業者に確認してください。
なお、一定規模以上の事業者では、屋根設置太陽光の設置目標や設置余地等が省エネ法上の計画・報告の対象になる場合があります。あわせて検討を進める企業様は、省エネ法の対象事業者に関する記事もご参照ください。実際の導入検討がどのように進むかは、食品製造業のフレッシュキッチン様の導入事例が参考になります。
よくある質問(FAQ)
Q. すでに稼働している太陽光発電設備も対象になりますか?
A. 公表資料では、特別高圧・高圧は2027年4月、低圧は2027年10月以降に系統アクセスの契約申込みを行う案件からの適用として示されています。稼働済み設備にさかのぼって適用する内容は現時点の資料には記載されていません。既設設備の機器交換時の扱いは、本稿更新時点の公表資料には明記されていません。
Q. JC-STAR★1を取得した機器なら安全ということですか?
A. ★1は、IPAが定めた最低限のセキュリティ適合基準を満たしていることをメーカー自身が評価・申請し、IPAがラベルを付与する自己適合宣言に基づく適合ラベルです。第三者の評価機関が審査する認証ではなく、どんな攻撃にも耐えられるという保証でもありません。「最低限の対策ができているかどうかを見分けるための目印」と理解するのが正確です。
Q. 導入予定のパワーコンディショナが取得済みか調べるには?
A. IPAのJC-STAR公式サイトで適合ラベル取得製品が公表されています。機器選定の際は、メーカー・EPC事業者に取得状況と取得予定を確認してください。
まとめ
- 特別高圧・高圧は2027年4月、低圧は2027年10月以降に系統アクセスの契約申込みを行う太陽光発電・蓄電池は、通信機能を有する制御システムのうちIP通信を用いる機器(PCS等)にJC-STAR★1適合ラベルの取得が必要になる見込み(規程改定案の段階)
- 起算は運転開始日や設備完成日ではなく契約申込み。これから検討を始める案件は適用開始後の申込みになる可能性を織り込む
- 機器選定の段階で取得状況を確認することが、後戻りを防ぐ最も確実な方法。当社が確認した範囲では、この観点の有無が提案の差になり始めています
- 上記の2つの進め方(最初から取得済み/将来交換前提の暫定シナリオ)を整理しておけば、リスクを理解した上での判断であることを示せます
恒電社は自家消費型太陽光のEPC(設計・調達・施工)として、制度動向を踏まえた機器選定からご相談をお受けしています。導入をご検討中の企業様は、計画の初期段階でお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
恒石陣汰(ツネイシ ジンタ)





