本稿の目的:法人が自家消費型の太陽光発電設備を導入するときの流れを、相談から稼働・運用までの8ステップに分け、それぞれで用意するもの・かかる期間・つまずきやすい点を整理します。
結論:流れは「検討(準備・相談・現地調査・提案)」「契約と準備(契約・電力会社への申請)」「工事と稼働(施工・連系と稼働)」の3段階です。恒電社では、発注から設置完了までを3〜6か月、前提条件がなければ6か月とご案内しています。期間の大半は資材の調達で、工事そのものは1〜1.5か月ほどです。
見落としがちなリスク:補助金を使う場合は、交付決定の前に発注・契約すると補助の対象外になる制度があります。また、工事に伴う停電の日は、お客様の業務だけでなく電気主任技術者の予定とも合わせる必要があり、直前の調整では日程が取れないことがあります。
自家消費型太陽光発電は、工場や倉庫の屋根・敷地に太陽光パネルを設置し、発電した電気を自社の建物で使う仕組みです。設置するには、建物の調査や設計に加えて、電力会社への申請が必要です。高圧で受電している施設では、受変電設備(キュービクル)への接続に伴う停電工事が必要になることもあります。
本稿では、導入の流れを8つのステップに分けて、各ステップで何を決め、何を用意し、どこで時間がかかるのかを解説します。各ステップの詳細を扱ったFAQへのリンクも添えていますので、ご自身の会社の検討がいまどの段階にあるかを確かめながらお読みください。
導入の流れは、大きく「検討」「契約と準備」「工事と稼働」の3段階に分かれます。恒電社のお客様の案件で実際に踏んでいる順序をもとに、8つのステップに整理したのが次の表です。
| 段階 | ステップ | 主にすること | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 検討 | STEP1 準備 | 導入の目的を決め、電気の使い方と建物の資料を集める | 提案まで約1か月(見積前の想定) |
| STEP2 相談 | 屋根・敷地の見立て、導入方式(自社所有/オンサイトPPA)と補助金の使い方を決める | ||
| STEP3 現地調査 | 屋根、キュービクル、配線ルート、クレーンの置き場所などを確認する | ||
| STEP4 提案・見積 | 発電量と自家消費のシミュレーション、システム構成と費用の提示 | ||
| 契約と準備 | STEP5 契約 | 工事請負契約を結ぶ(補助金を使う場合は、交付決定前に契約してよいかを確認) | 発注から設置完了まで3〜6か月(前提条件がなければ6か月) |
| STEP6 申請・調整 | 電力会社への申請(案件によっては契約前から先行)、停電日と工程の調整 | ||
| 工事と稼働 | STEP7 調達・施工 | 資材を調達し、屋根上の工事と電気工事を行う | |
| STEP8 連系・稼働 | 系統連系と、法令上必要な設備では使用前自己確認と結果の届出を経て稼働し、運用・保守に移る | 工事完了後、必要な確認と届出を終えてから稼働 |
※期間は恒電社がご案内している目安です。提案までの期間は、恒電社が初回訪問時にお示ししている見積前の想定タイムラインによります。建物の状態、補助金、電力会社の手続き、資材の納期などで前後します(2026年10月時点)。
発注から設置完了までの期間で最も長いのは資材の調達で、時間がかかる材料の手配に約4か月かかります。着工から工事完了までは1〜1.5か月ほどです。電力会社への申請や工程の打ち合わせは、この調達期間と並行して進めます。期間の内訳と前後する要因は、発注から設置完了までの期間を解説したFAQで詳しく説明しています。
最初に、導入の目的を整理します。「電気料金を下げたい」「CO2排出量を減らしたい」といった大まかな目的で十分です。あわせて、次の4つの資料を用意すると、その後の試算と設計が早く進みます。
屋根の面積は、図面や航空写真で測ると想定より小さいことがあります。恒電社が受けたご相談でも、お客様から「400㎡ほど」と伺っていた屋根が、航空写真で測ると約223㎡だった例がありました。面積は載せられる容量に直結するため、早めに確かめておくと、後の手戻りを防げます。発注前にそろえておく情報と、図面がない場合の進め方は、発注前に準備すべきことを解説したFAQにまとめています。
相談の段階では、屋根や敷地にどの程度載せられそうかを見立てたうえで、導入方式を決めます。方式は大きく2つです。
オンサイトPPAでも、現地調査・設計・施工・連系といった設備工事の基本的な工程があります。一方、お客様が結ぶのはPPA事業者との電力購入契約で、契約や審査の手続きはPPA事業者や契約条件によって異なります。
恒電社はPPA事業者から設計・施工を受託する立場で関わります。2つの方式の費用・契約期間・保守の違いを比べたい方は、セミナー「『PPA』と『自社購入』|自家消費型太陽光発電の導入方法比較」の見逃し配信をご覧ください。PPAで注意したい点は、オンサイトPPAのデメリットを整理した記事でも解説しています。
補助金を使うかどうかも、この段階で決めます。補助金には公募期間があり、交付決定の前に発注や契約をすると対象外になる制度があるため、スケジュール全体に影響します(詳しくはSTEP5で説明します)。
現地調査では、図面だけでは分からない点を確認します。恒電社が見ているのは、主に次の項目です。
あわせて、屋根がパネルの重さに耐えられるかを確認します。恒電社では、まず建物を設計した建築会社に設置の可否を確認していただくようお願いしています。確認が難しい場合は、構造計算書・構造図・建物の一般図をもとに、建築士事務所による耐荷重の検討をご案内しています。
既存の屋根では、調査では見えなかった劣化が工事中に見つかることもあるため、補修・補強が必要になった場合の扱いは契約前に確認しておくと安心です。業種や建物の用途によって屋根の強度や設置スペースがどう違うかは、屋根の強度と設置スペースの違いを解説したFAQが参考になります。
集めた資料と現地調査の結果から、発電量と自家消費量のシミュレーションを作り、システムの構成と費用をご提示します。30分値と発電量の予測を重ねると、昼間の使用量のうち太陽光でまかなえる量と、余る電気の量の見込みを試算できます。電気代の削減効果の考え方は、自家消費型太陽光発電で電気代をどれくらい削減できるかを解説したFAQで説明しています。
2013年に売電用の太陽光を導入し、その後に自家消費型を追加で導入されたグローバル・コーティング株式会社様は、施工会社を選ぶ際のポイントを次のように語っています。
「太陽光発電システム施工業者の提案に「具体性」があるかが非常に重要かと思います。今回、弊社から直近1年間のデータを提供させて頂き、これをもとにシミュレーションして頂いたことが大きかったです。」
—— グローバル・コーティング株式会社 管理部次長 平山様(導入事例記事より)
恒電社が初回訪問時にお示ししている想定タイムラインでは、シミュレーションの作成から提案までを約1か月としています。提案を円滑に進めるには、STEP1の4つの資料、特に30分値を早めにそろえておくことが大切です。
提案内容に合意したら、工事請負契約を結びます。恒電社では、工事請負契約約款に注文書・注文請書を組み合わせた形で契約しています。
補助金を使う場合は、契約の時期に注意が必要です。環境省の補助事業(ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業)が、その一例です。執行団体の一般社団法人 環境イノベーション情報機構が公表している令和8年度の公募要領では、補助事業の開始は交付決定日以降とされています。発注・契約・納品・着工・支払いは、すべてこの日以降に行うことになっています(事前発注には、補助対象外経費として計上する例外があります)。
また、「採択」と「交付決定」は別のもので、採択の通知を受けたあとに交付申請を行い、審査を経て交付決定となります。補助金を使う計画では、交付決定までの審査期間を見込んで、契約と着工の時期を決める必要があります。要件は補助金ごとに異なるため、使う制度の公募要領で確認してください。国の補助金の要件は環境省のストレージパリティ補助金を解説した記事、埼玉県の制度は埼玉県の太陽光発電補助金をまとめた記事で確認できます。
※出典:一般社団法人 環境イノベーション情報機構「令和8年度 ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業 公募要領」
電力会社への申請は、通常は契約後に進めます。電力会社の手続きに時間がかかると見込まれる場合などは、契約の前に申請を先行させることもあります。申請書の記載の大部分は太陽光設備の仕様に関する内容のため、恒電社が作成し、お客様には必要な情報のご提供と、内容の確認・押印をお願いしています。
手続きは一般に、接続検討(電力会社が、発電設備をつないだときの系統への影響を調べる手続き)を申し込み、その回答を受けてから接続契約を申し込む順で進みます。ただし、発電した電気を電力会社の系統へ流さない(逆潮流なしの)自家消費の設備では、この流れが短くなる場合があります。
東京電力パワーグリッドの系統アクセスルール[高圧・低圧版](2021年7月1日改定)は、自家消費を目的とした逆潮流なしの発電設備等を新設・変更する場合、接続検討の申込みから回答までのステップを省略できると定めています(島しょや系統連系に制約がある箇所などは除かれます)。恒電社の逆潮流なしの案件でも、申込みから1週間で電力会社の検討結果が届いた例があります。ルールは一般送配電事業者ごとに定められているため、東京電力パワーグリッド以外のエリアでは各社のルールをご確認ください。申請の種類と、手続きごとに定められた期間は、太陽光発電の導入前に必要な申請を解説したFAQに一覧でまとめています。
高圧で受電している工場や倉庫に太陽光発電設備をつなぐ場合、その設備は電気事業法上の「自家用電気工作物」として扱われ、保安規程や電気主任技術者による保安の体制の中で管理されます。保安規程の変更の届出などの手続きは、実務上、選任されている電気主任技術者が担当します(届出の義務を負うのは設置者です)。手続きの要否は設備によって変わるため、電気主任技術者や所管の産業保安監督部にご確認ください。
この段階では、停電日の調整も進めます。太陽光の配線を既存の電気系統に接続する作業は、安全のために電気を止めて行います。止める範囲は、接続箇所や受変電設備の構成によって、工場全体になる場合も、対象の区画だけになる場合もあります。
停電日は、お客様の業務の都合だけでなく、停電工事に関わる電気主任技術者の予定とも、早めに合わせておくことが大切です。恒電社の案件でも、外部委託の電気主任技術者の繁忙期に重なり、1か月前の連絡では日程が合わずに代わりの技術者を手配した例がありました。
工事の日程は、資材がいつそろうかを基準に組み立てます。太陽光パネルやパワーコンディショナは案件ごとに発注し、キュービクルの中に設置する制御機器など、納期が1年以上かかる部材もあります。恒電社では、納期の長い部材を先に確保しておく体制をとっています。
施工は、4つのパートに分けて1週間ずつ、計4週間で進めるのが基本です。業務への影響が出やすいのは、次の2つの日です。
365日稼働する食品工場の株式会社フレッシュキッチン様の導入事例では、製造スケジュールに合わせて工事を進め、生産活動に支障をきたさずに導入されたことが紹介されています。停電とクレーン作業で何時間・どの範囲が使えなくなるかは、施工期間中の業務への影響を解説したFAQで詳しく説明しています。
工事の終盤に、太陽光発電設備を電力会社の送配電網(系統)につなぐ「系統連系」を行います。東京電力パワーグリッド管内で恒電社が担当した案件では、連系開始日を連絡日から10営業日以降の日とすること、パワーコンディショナなどの製造番号を伝えることを求められた例があります。工事の終盤まで、電力会社とのやり取りが続きます。
稼働を始めるには、工事の完了後にもう一つ手続きが要ります。経済産業省の「太陽電池発電設備を設置する場合の手引き」によると、出力10kW以上2,000kW未満の太陽電池発電設備は、使用を始める前に技術基準に適合していることを自ら確認し、その結果を届け出る必要があります(使用前自己確認。電気事業法第51条の2)。
使用前自己確認が必要な設備では、「工事完了日」ではなく、確認と届出を終えて「稼働を始める日」を計画の終点に置く必要があります。恒電社の工程表の例では、使用前自己確認の試験に夜間の作業が含まれ、雨天の場合は順延としています。
稼働後は、発電の監視と保守に移ります。恒電社は、発電監視のアカウントと完成図書をお渡しし、点検やパネル洗浄などの保守(O&M)にも対応しています。なお、高圧の受変電設備の保安管理は、選任された電気主任技術者が担います。稼働後の点検の頻度と費用は、太陽光発電設備のメンテナンスの頻度と費用を解説したFAQで説明しています。
ここまでの流れが実際にどう進むのか、2026年に恒電社が施工した関東地方の工場の案件(自家消費型。補助金を活用)を例に、契約の日を起点とした経過で示します。
| 契約からの経過 | 進んだこと |
|---|---|
| 契約の約2週間前 | 補助金の交付決定 |
| 契約日 | 工事請負契約の締結 |
| 翌日 | 電力会社への申請書類を作成 |
| 約3週間後 | 協力会社と現地を確認 |
| 約1か月半後 | 工程の打ち合わせと実施工程表の提出。電力会社から、保護継電器(系統の異常時に太陽光を切り離す装置)の設定値の回答 |
| 約3か月後 | 着工(初日に足場の設置と、資材の屋根への揚げ込み) |
| 着工の約2週間後 | 休日の早朝から停電工事を行い、連系 |
| 連系の数日後 | 夜間と日中に試験を実施 |
この案件では、補助金の交付決定のあとに契約し、契約から連系までは約3か月(101日)でした。着工から連系までは約2週間で、着工前の申請、資材の調達、工程の調整といった準備の期間が全体の多くを占めました。契約の時点でお伝えしていた着工・竣工の見通しに沿って進んでいます(2026年10月時点)。
同じ8ステップでも、次の条件によって全体の期間は大きく変わります。計画の早い段階で、ご自身の会社がどれに当てはまるかを確認しておくと、スケジュールを組みやすくなります。
| 分かれ目 | 期間にどう効くか | 早めに確認すること |
|---|---|---|
| 補助金を使うか | 補助制度によっては交付決定まで発注・契約を待つ必要があり、公募期間と審査期間が工程に加わる | 公募の時期、交付決定の見込み、事業の完了期限 |
| 余剰電力を売電するか | 逆潮流ありの場合は原則として接続検討が必要になり、手続きが長くなることがある | 完全自家消費にするか、余剰売電を組み合わせるか |
| 屋根の補強が必要か | 耐荷重の検討や補強の設計・工事が加わる | 建物の設計図書、構造計算書の有無 |
| 停電日をいつ確保できるか | 業務や電気主任技術者の都合で、着工や連系の時期が先送りになる | 停電できる曜日・時間帯、電気主任技術者の予定 |
余剰売電を組み合わせる場合、恒電社では、自家消費の部分を先に稼働させ、余剰売電の手続きを並行して進めることがあります。ある案件では、自家消費分の電力会社への手続きは申込みから完了まで2か月程度、FITを使わない余剰売電(非FIT)の手続きは完了まで9か月程度と見込んでいました。期間を短くできる条件と、契約と申請の順序の工夫は、設置を最短で完了するための条件を解説したFAQで紹介しています。
A. 資料がそろっていなくてもご相談いただけます。電気料金の明細があれば大まかな見立てはできますが、30分値と建物の図面がそろうと、シミュレーションの精度が上がり、提案に必要な確認を進めやすくなります。図面がない建物では、調査会社や建築士をご紹介することもできます。
A. 屋根上の工事は建物の中の業務と並行して進める場合が多く、施工期間中に工場の通常業務が長時間止まることはあまりありません。電気を止めるのは、太陽光の配線を既存の電気系統に接続する停電工事の日で、業務を行っていない時間帯に約6時間が基本です。日程はお客様の業務と電気主任技術者の予定に合わせて決めます。
A. FIT・FIPで売電する場合に必要な事業計画認定は、完全自家消費のみで売電を行わない場合は原則として不要です。ただし、自家消費型でも電力会社への申請は必要です。また、出力10kW以上2,000kW未満の設備を新設する場合などは、電気事業法にもとづく使用前自己確認と結果の届出が必要です。売電型との違いは、売電型と自家消費型の違いを解説したFAQをご覧ください。
恒電社は、自家消費型太陽光発電の設計・調達・施工に加え、導入に伴う電力会社への申請や補助金の対応、稼働後の保守まで、一貫して担っています。サービスの内容と導入の流れは、自家消費型太陽光発電サービスの概要資料で、社内でのご検討用にまとめてご覧いただけます。
導入の流れのどこで時間がかかるかは、建物の状態や補助金の使い方、停電できる日によって変わります。電気料金の明細と30分値、建物の図面をご用意いただければ、ご自身の会社の条件で、どのステップにどれくらいの期間を見込むべきかを一緒に整理します。