A. 雨漏りのリスクは屋根材と固定方法で決まります。ハゼ式折板屋根は屋根に穴を開けないためリスクは非常に低く、重ね式折板屋根はゴムのシール材で防水し、陸屋根では屋根を傷つけない「置き基礎」が一般的です。
判断の要点
- ハゼ式折板屋根は、屋根の折り目(ハゼ)に金具を挟み込むだけで固定でき、屋根に穴を開けないため雨漏りのリスクは非常に低い
- 重ね式折板屋根は、屋根に穴を開けてルーフボルトを差し込む。ゴムのシール材で防水性を確保するが、ハゼ式に比べればリスクは若干上がる
- 陸屋根は、ひび割れから雨水が侵入する恐れがあるため、特に注意が必要。ネジ(アンカー)を打ち込む施工はほとんど採用されず、コンクリートブロックを重しにする「置き基礎」が一般的
- 雨漏りの主な原因は屋根材の劣化によるサビ。すでに雨漏りしている屋根は、設置前の改修が前提になる
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雨漏りのリスクは屋根材と固定方法で決まる
屋根に太陽光パネルを設置したときの雨漏りリスクは、屋根材の種類と固定方法によって異なります。この記事では、「ハゼ式折板屋根」「重ね式折板屋根」「陸屋根」の3タイプについて解説します。いずれも穴あけの有無と防水の考え方が異なります。
| 屋根材 | 屋根への穴あけ | 防水の考え方 |
|---|---|---|
| ハゼ式折板屋根 | なし | ハゼ(屋根の折り目)に金具を挟み込んで固定する |
| 重ね式折板屋根 | あり | ルーフボルトをゴムのシール材で締め付け、屋根材に密着させる |
| 陸屋根 | 原則なし | 防水層を傷つけない「置き基礎」で施工する |
表のとおり、3タイプの主な違いは、屋根への穴あけの有無と、それぞれの固定・防水方法です。
恒電社では、屋根の構造や状態を設置前に確認したうえで、屋根材に合った設置方法を提案しています。屋根の強度や設置スペースの考え方は業種や建物の用途による屋根の強度・設置スペースの違いで、形状の面で向き不向きが出る屋根については屋根上太陽光発電設備の設置に向いていない屋根の解説で扱っています。
ハゼ式折板屋根——屋根に穴を開けずに挟み込む
折板屋根のうち、よく採用されているのが「ハゼ式の折板屋根」です。このタイプでは、パネル設置の際に屋根へ直接穴を開けることはありません。ハゼと呼ばれる屋根の折り目部分に金具を挟み込んで固定する方法をとるため、基本的に雨漏りのリスクは非常に低くなります。

上の図がハゼ式の折板屋根です。屋根の表面に走っている折り目部分が、金具を挟み込む「ハゼ」にあたります。

金具はこのハゼをつかむ形で取り付けるため、屋根材を貫通しません。
したがって、折板屋根の場合においては、太陽光パネルを設置したことで特別に雨漏りのリスクが高まるということは基本的にありません。
重ね式折板屋根——ルーフボルトとゴムのシール材で防水する
同じ折板屋根でも「重ね式折板」とも呼ばれるタイプは、対応方法が異なります。この屋根には、ハゼ部分のように掴める箇所がありません。そのため「ルーフボルト」という部品を使って固定します。

図のルーフボルトは、屋根に開けた穴へ差し込んで使う部品です。

屋根に穴が空きますが、ルーフボルトと屋根の間にはゴムのシール材を使用します。このシール材を締め付けることで屋根材に密着し、防水性を確保します。

上の図が重ね式折板屋根です。構造上どうしても屋根材に穴を開けて金具を取り付ける必要があるため、ハゼ式に比べれば雨漏りリスクは若干上がるといえます。ただし、重ね式折板専用の太陽光設置部材を使用しており、防水性能に配慮した設計になっていますので、しっかりとした対策は講じられています。
陸屋根——防水層を傷つけない「置き基礎」で施工する
「陸屋根(りくやね)」は、バルコニーや学校の屋上などでよく見られる、平らな構造の屋根です。太陽光パネルの設置において最も雨漏りのリスクが高いのは、この陸屋根タイプだと考えられます。陸屋根は基本的にコンクリートで形成されており、わずかなひび割れでも建物内部に雨水が侵入する恐れがあるためです。
このタイプの屋根で最も一般的な防水方法が「ウレタン防水」です。液体状のウレタンを塗布して防水膜を形成する方法で、仕上げとして防水シートを敷き、接着する場合もあります。ただし、この防水シートは数年に一度の張り替えが必要になるなど、定期的なメンテナンスが求められます。
この防水層を守る必要があるため、陸屋根に太陽光パネルを設置する場合、屋根にネジ(アンカー)を打ち込むような施工方法は、構造的・防水的な観点からほとんど採用されません。一般的なのは「置き基礎」と呼ばれる方法です。コンクリートブロックなどを屋根の上に置いて重しとし、その上に架台とパネルを設置する方式で、屋根を傷つけずに施工ができるのが特徴です。
強風対策——バラストの重量は基準風速と建物の高さから計算する
置き基礎は屋根に固定しない方式のため、強風時にパネルが飛ばないかが論点になります。この点は、建物の高さや設置する地域の風の特性に応じて、重し(バラスト)の重さを調整することで対応しています。風が強い地域と比較的穏やかな地域では、必要なバラストの量も異なってきます。
具体的には、市区町村ごとに定められた基準風速と建物の高さをもとに屋根にかかる風圧を計算し、その数値に基づいて必要なバラストの重量を決めています。恒電社が使用しているシミュレーションシステムでは、こうした設置条件を入力すると、自動的に「このエリアには何kg以上のバラストを配置してください」といった具体的な指示が出る仕組みになっています。

図のように、強風が吹いた場合でも風がパネルの上を通過することで、逆に屋根に押し付ける方向の力が働く構造になっており、飛散防止にもつながっています。強風時の挙動は太陽光パネルは強風で飛ばされる可能性があるのかでも解説しています。
設置前に自社の屋根で確認しておくこと
現在の時点で屋根に雨漏りがある場合は、太陽光パネルを設置する前に、事前に設備の改修を行っておくことをおすすめします。
雨漏りの主な原因は「屋根材の劣化によるサビ」であるケースが多く見られます。屋根の劣化が進み、錆びて穴が開いてしまえば、設置方法にかかわらず雨漏りにつながる可能性があります。パネルを載せる前に塗装を検討する場合は、太陽光パネルを載せる前に屋根の塗装は必要なのかもあわせてご確認ください。
現場担当者の視点(蛎崎への取材より)
また、折板屋根は複数の金属板がかみ合うように組まれている構造になっており、ハゼ部分に金具を取り付けることで、逆に屋根の締まりが強くなり、全体の強度が高まるケースもあります。
恒電社では、施工前に屋根の状態を確認し、必要に応じて塗装などで強度を確保する選択肢もご案内しています。ただし、こうした補修や強化に関する投資判断は、お客様ご自身の設備方針に基づいてご検討いただいています。
バラストは見た目にも「これで本当に飛ばないの?」と思われるほど軽く見えてしまうこともありますが、それでも風圧や地震を考慮した設計がされています。
なお、地震時の安全性は太陽光パネル単体で決まるものではなく、建物全体として荷重に耐えられるかどうかの確認が必要です。恒電社は複数の選択肢をご提示し、その中から最も納得いただける形で進めていただけるようサポートしています。
解説者
蛎崎 泰祐
インタビュアー
原澤耀
2022年から恒電社のマーケティングも担当し、電気や太陽光発電のことを、各関連分野のエキスパートに直接ヒアリングをしながら、できる限り分かりやすい表現と専門的な視点の両立を重視した情報発信に取り組んでいる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 太陽光パネルを設置すると、屋根の劣化は早まりますか?
太陽光パネルを設置することで、屋根の一部が直接の雨や紫外線、風にさらされにくくなるため、サビの進行を抑える効果も期待できます。その意味では、太陽光パネルが屋根の保護となる側面もあります。
Q2. パネルやバラストの重さが、屋根の負担にはなりませんか?
リスクが「ゼロ」というわけではありません。ただし、重要なのは太陽光パネルを載せること自体よりも、建物全体の構造の中で「どこにどれくらいの荷重がかかるのか」です。陸屋根では、すでに空調の室外機やキュービクルなど比較的大きな重量物が屋根の上に載っているケースもあり、それらと同様に、太陽光パネルや架台の重量も含めて評価します。太陽光パネルの設置による平米あたりの荷重は約13kg前後とされており、特別重たいものではありません。地震との関係は太陽光パネルを設置した施設で地震が起きた場合のFAQもご覧ください。
Q3. 台風の多い地域でも、置き基礎の設備は問題ないのですか?
置き基礎のシステムには実績があります。たとえばMRO JAPAN様が採用している置き基礎のシステムは、台風が多い沖縄の那覇空港で使用されており、本記事のインタビュー収録時点で2年間、2回の夏を越えても問題が起きていません。あわせて航空業界のMRO Japan株式会社様が自家消費型太陽光発電を導入した事例もご覧ください。
この記事を書いた人
岩見啓明





